第三十一話 カラオケ2
ふう、さすがに莉奈に全敗は心が折れるわ。別に俺自身も歌が上手い方だとは決して思ってはないが、莉奈がそれ以上にうますぎる。まさか九十点台出るとは。
俺ができている人間なら莉奈を褒めて終了だろうが、俺はそこまで大人じゃない。俺も頑張ったつもりだったが、まさか八十八点が限界とは。
そんなことを考えながら、ココアと水と紅茶を入れる。カラオケは飲み物無料だから本当に助かる。これがカラオケのいいところだろう。
「はーい持ってきたぞ」
「ありがとうございます! はあ、喉が潤います」
莉奈はごくごくと飲む。
「それは良かった」
「あ、そういえばお馬さんしてください」
「それやったら別れようって言ったよな」
まさか忘れたわけじゃねえだろうな。カラオケでSMプレイするな。
「えへへ」
「えへへじゃねえ」
えへへで許されると思ってるのか。
「さてと切り替えて歌いますか」
「おお、楽しみだ」
「では行きます、渚のフィナーレ」
俺は拍手をする。
「今始まるのは、君と僕の物語。君と会ったのはいつだったかな? 今となってはわからないや。けれど今あなたは、海の中に消えてしまった。あなたは消えたのか? あなたは死んだのか? 今となってはわからないけど、今歌うんだ。
あなたと出会った日々、それは今も忘れられない。けれど今なら思える。あの日々は私の宝物、私の全て。今、君の、全てを、愛している」
「いいぞ莉奈! いいぞ莉奈!」
俺は間奏の間に手拍子を叩く。実際今までで一番いい出来だ。音程もほとんど外れてないし、聴いていて心地がいい。最高だ。
「はあ、歌いきりました」
曲は三番まで終わった。そしてこれから得点が出る。
「さあ、何点でしょう、何点でしょう」
莉奈は興奮している。
「そこまで興奮しなくてもいいんじゃないか?」
「でも、絶対高得点だと思うんですよ、絶対」
「そ、そうか」
莉奈も高得点ぽいと思っていたようだ。
「えーと96.897ですか、なんか惜しいですね」
「ああ、あと少しで九十七点やったのにな」
いくらこのカラオケ採点は高得点になりやすくなっているとはいえ、高得点すぎると思う。ただ、莉奈はこれで満足していないのか。全くレベルが違うな。
「じゃあ次は優斗くん、お願いしますね」
「おう、サタリアンクス学園歌」
「なんですか、そのいかにもアニメ見たいな感じのやつは」
「いいじゃねえか、好きな曲歌って」
「まあいいですけど」
「ここは、平和な学園、みんな楽しいサタリアンクス。いじめも落第もない、最高の学園サタリアンクス。みんな楽しいサタリアンクス。さあみんなで歌おう。楽しい楽しいサタリアンクス、歌おう歌おうサタリアンクス、踊ろう踊ろうサタリアンクス。行きますよ! みんな学ぼうサタリアンクス。みんなで楽しもうサタリアンクス、この上ない平和だサタリアンクス、さあ楽しもう」
「なんですか、この歌詞。適当すぎませんか?」
「適当!? あの剣崎宏美剣崎宏美先生を愚弄しているのか」
あの、天才作詞家だぞ!
「いや、誰なんですか?」
「あの、大作ゲーム、青鳥の女神の作詞を担当してる人だぞ」
「その青鳥の女神も聞いたことがないです」
「ふざけるな、今度一緒にやるぞ」
あのゲームを馬鹿にするやつは誰であろうと許すわけにはいかない。あのゲームは義務教育で教えるべきだ。知らないと人生の半分を損してると断言できる。
「ええー、というかもう点数出てますよ」
「ああ、たしかに。何点だ、えーと90.139か、おお九十点超えてるじゃねえか」
「おめでとうございます! ……簡単な曲でしたけど」
「今なんて言った?」
「何も言ってませんよ」
莉奈は勢いでごまかす。
「いやいやさっきなんか言ってたよな」
「いや、聞き間違いですよ」
莉奈は否定しまくる。まさか聞こえてたとは思っていなかったのだろう。そしてその内容はおそらく俺が木津着く内容なのだろう。
「はあ、聞き間違いってことは何が言っていたということじゃないか」
何も言ってないのに聞き間違いが起こるわけがねえ。
「ばれました?」
「さあ、勘弁しろ」
「嫌ですよ。あ、お馬さんしてくれたら話していいですよ」
「お前それまだ言ってんのかよ、てかなんでお前が上の立場になってんだよ」
「いいじゃないですか、これは私の作戦なんですよ。あえて、知りたい情報を言ってその情報と馬乗りをかけてるんですよ」
「なるほどなあ、うまい作戦だというわけがないだろ」
「ええ!?」
「だってそんなのお前が考えられるわけじゃないし」
「ひどくないですか? 私のことをそんな感じで思っているんですか?」
「おう、だってお前馬鹿だろ」
「シンプルな罵倒やめてくださいよ」
「ああ、それはごめんごめん」
俺は平謝りをする。
「傷つくんですからね、罰として水とかのお替り取ってきてください」
「はいはいわかったよ」
そう言って俺はいったん退室する。
「優斗さんてば本当に困った人ですねえ」
そう莉奈はそう呟く。彼女自身こういったやり取りが楽しいのだ。
「帰ってくるの遅くないですか?」
莉奈はそう呟く。五分経っても帰ってこないのだ。
「仕方ありませんね、歌っちゃいますか」
そして莉奈はマイクを握る。
「誰もいないけど、行きます絆のレターヌ」
そして莉奈は歌いだす。一方優斗というと。
「おなか痛え」
トイレの中にこもっていた。
くそ、まさかこんなに下すとは。莉奈に連絡したいのに携帯おいてきてしまった。なんて馬鹿なんだよ俺は。しかし、莉奈も心配してるだろうな、コップもおいてきてしまったし。本当にカラオケで下すのはないだろ。
俺は再びお知りに力を入れる。だが出るのはおならだけだ。くそ、何とかして莉奈に今の現状を伝えたいが。俺にはどうすることもできねえ。困った、本当に困った。
くそ、やっぱり出れねえ、止まる気配がねえぞこれ。こうなったら携帯持ってきたらよかった。いや、人の楽しみは携帯だけじゃないはずだ。何か妄想しろ何か妄想しろ。
そして優斗は莉奈の裸を思い浮かべた。
違うだろ、なんで莉奈の裸を想像しているんだよ。俺は変態じゃねえ、俺は変態じゃねえんだ。
くそ今度はなんで莉奈のパジャマ姿を思い浮かべているんだ。俺はここまで変態だったか? くそ、変な妄想が思い浮かぶ。別のことを考えろ俺。二,三,五,七,九,十一,十三,十七,十九,二十三,二十九、三十一、三十七五
ふう、素数を数えるのは初めてやったけどうまくいったな。煩悩が軽く吹き飛んだな。だが下しは止まる気配がない。早く戻らないとダメだ。いや、こういう時こそ考え事したら良いのでは。
よし、アニメ「君と僕と未来」の考察をしよう!
たしか、今たしか、敵のラダルドル博士と戦っているとこだ。相棒のランドルがやられた今、だいぶきつい状況だな。
ここから勝てる手段はあるのか、全くわからん。まじであいつバケモンだからな。ランドルが必死こいて攻撃してやっと吐血しただけだからなあ。覚醒イベント起こらないときついんだよな。でも覚醒イベント起きるとして、どうやって起こるんだろうか。てか、今敵倒せるのだろうか、もしかしたら何かあって、敵が引き下がるのかもしれないな。戦うか引くか、どっちかだ。だけどオープニング曲のことがあるからなあ。もしかしたら復活イベントとかあるのかもしれないな。つまり退散するってことか。
そんなことを考えていたら下しが止まった。よし、戻るか。
カラオケ行きたいなー(めんどくさくて行ってないだけです)




