表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/153

第三十話 カラオケ1

 今日はカラオケに行く日だ。正直言うと俺は緊張している。よく考えたら、莉奈の私服つまり、勝負服を見るのは初めてである。私服というのなら昨日見たが、それはあくまでもショッピングだ、つまり今日は莉奈の正真正銘の私服というわけだ。


 それにもう一つ緊張していることがある。莉奈の前で歌うのだ。実際俺は人前で歌ったことなどほとんど無いし、自分でも上手いとは思っていない。


 そんなことを考えながら今俺は家の着替える部屋にいる。そう、もう一つ考えなければならないことがある。それは服装だ。莉奈なら俺がどんな服を着ても「良いですね、やっぱり優斗くんはかっこいいです!」とか言いそうだが、そういう問題では無い。


 私服に何を着たら良いのか全くわからない。これが日々制服に慣れてしまっている弊害なのだろう。早くしないと莉奈との約束の時間になってしまうのだが、一向に服を決めることができない。


 本当に何を着たら良いのかわからない。ファッションのことで唯一頼れる母さんは運の悪いことにまだ起きてはいないのだ。まあ、そりゃそうだり今日は休日なのだからな。逆に普段料理を作ってもらっていることを感謝しなければならない。


 俺は迷った末にお気に入りのシャツとお気に入りのズボンにした。お気に入りだったらさすがにおかしくなるわけがないという魂胆だ。






「カラオケだーーー! 優斗くんとのカラオケだーーー!」


「そうはしゃぐなよ莉奈」


 その莉奈を見ながら、綺麗だなと思った。少しだけ胸元が見えそうな、ドレスのようでありながら動きやすそうな服に、白色のスカートだった。制服の莉奈も良いけど、今の私服の莉奈も可愛いなと思ったら。昨日のショッピングの服もいいけど、今日のこの勝負服も素晴らしいと思う。こうなってくると、俺の服装が普通なんじゃないかと、少し不安になる。


「これがはしゃがずにいられますか」


 莉奈は俺の考えてることなど何も気づかずに、普通に返事した。意外なことに、服装についてはノーコメントらしい。


「こんな所で体力を使いすぎると歌えなくなるぞ」


 俺は軽く呆れながら言った。カラオケは体力を使うのだ。


「えーいいじゃ無いですか、それに私は優斗くんと違ってもうすでに四十五分間の電車を経て来ているんですからね」

「まあそれはそうだけどよ」

「だからこんなにはしゃいでも許されるってわけですよ」

「それはよかったなー」


 なんだその謎理論。


「棒読みやめてくださいよ、ところで今日何歌います?」

「その時の楽しみって言ってるだろ」

「そうでした」



「さーて歌うか」

「はい!」


 莉奈は元気よく返事をする。


「じゃあ莉奈からお願いします」

「なんでですか!?」

「そりゃあ自信ないからだな」


 二人しかいないとはいえ、トップバッターは嫌だ。


「なんですかその理由は」

「仕方ないだろ、カラオケ行った経験なんてほとんど無いんだよ」


 おそらく今まで十回もないだろう。


「私もほとんど無いんですよ、優斗くんの歌で盛り上げてくださいよ」

「そんなこと言われてもなあ」


 俺の歌なんてたいしたことないしな。


「優斗くんお願いします。優斗くんが自信ないのと同じで私も自信ないんですよ」

「はあ、分かったよ歌うよ」


 このまま譲り合いになって莉奈に勝てる気がしないのだり


「ありがとうございます」

「さーてと」


 そう言いながら俺は曲を選ぶ。


「優斗くん何を選ぶんですか?」

「秘密だ」

「よし! 決めた!」


 そして画面に曲名が表示される。


「秘密の世界の始まり」


「おおー!」


 莉奈が合いの手を入れる。


「さあ今、君は叫んだここから始めようと。今僕は叫んだ君と始めようと。

 この世界には知らないことわからないことが沢山ある。

 だけどんな世界でも君となら大丈夫さ。

 今僕は叫んだ突き進もうと、今君は叫んだぼくと戦おうと。この世界にはたくさんの敵がいるけど君となら大丈夫さ

 怖いものはある、恐ろしいものもたくさんある。でも、怖がってたら進めない。

 君と見たシークレットワールド怖いものなんてない。君と見たこの世界、何も恐ろしくないよ、さあ今戦おう、世界の敵と。君とさあ駆け抜けよう」


 俺は一番を歌い切った。そしてここからは間奏だ。


「優斗くん上手いじゃないですか」

「どこが上手いんだよ」


 そこそこ音程が外れている。


「優斗くん、褒め言葉は素直に受け取るべきだと思いますよ」

「そんなこと言われてもなあ」


 下手だと言うのも違うと思うが、上手いと言うのも違うと思う。


「というか優斗くんなんか次始まりそうですよ」

「たしかに」


 莉奈の言う通り目の前にはまた歌詞が浮かび上がった。


「さあ君と呼ぶこの世界の風は、さあ僕と呼ぶこの世界の嵐は。この世界の風は美しいけれど、君と一緒じゃないと少しだけ怖いな。

 さあ君と叫びたいこの景色、だけど僕は今は一人で叫ぶ。

 この世界は素晴らしいけれど、今は君をおいて大事な物は無いよ。

 今ならわかるさ、君の大切さ、僕は今まで何のために戦って来たの。さあ今駆け抜けよう。

 君がいないシークレットワールド、何も楽しくないよ。一人で見る世界は何か物足りない。今戦おう君はもういないけど、さあ一人で駆け抜けよう」


「優斗くん」

「なんだ?」

「なんか不穏な流れになってません」

「たしかにそれはな」


 今アニメ本編でも相棒が敵にやられたところだしな。


「なんか続き気になります」

「俺の歌に対して感想言えよ」

「素晴らしい以外私には言うことはできませんよ、それよりそろそろ始まります」


 素晴らしい以外に言えないか、最高の褒め言葉じゃねえか。


「今君と並ぶ、僕は君と共に戦える。なんて幸せなんだ。

 君と二人のシークレットワールド。この幸せすぎる世界。君と戦えるなら僕はもう無限大だ。今戦おう、もう敵はいないと思うけど。さあ二人で駆け抜けよう」


 俺は歌い切り、莉奈から拍手が送られた。


「良かったです。優斗くん!」

「そつか、それは良かった」

「あとは得点ですね」

「ああ、高得点であると嬉しいけど」


 そして点数が出た。


「83.297かあ、もうちょっと行ったと思ったのになあ」

「仕方ないですよ、優斗くん。優斗くんは頑張りました」

「おう、ありがとう」


 やはりこう言う時の莉奈は優しい。


「じゃあ次私が行きますね」

「楽しみだ」


「クリスマスのプレゼント」


 そう画面に出た。


「クリスマスには君はもういないのね、私はプレゼントを渡そうと思ってたのに、もう渡せないわ。君がいたならどんなに良かったでしょう、けれど現実は残酷ね。最後に君にあったのはいつだったの? 最後の場所はどこだったの? 今も思い出せないのはなぜでしょう?


 最後のプレゼントは何だったかしら。君が喜ぶものならそれは嬉しいけれど。だけど今もそばにいたいこと。それがたった一つの贈り物」


「なんか暗い曲だな」

「邪魔しないでください、集中しているので」

「さっき邪魔していたのはどっちだよ」


 俺は邪魔だとは思ってはいなかったが、自分は言って欲しくないのかよ。


「私は今でもあなたを待っているわ、この誰もいない静かな部屋で、一人寂しく。

 今でも君のことを思っているわ、だけどあなたは帰ってこない、残念なことね。

 私の何が行けなかったの? あなたが愛想をつかしたわけは? ごめん今も分からない。けどあなたに会いたい。


 あなたと話した言葉は覚えているわ。あなたの顔や仕草も全て。けれど今も思い出せないのは私の行動全てね」




「私は嫌われたのかしら、私は恨まれたのかしら、私の何が嫌いなのかここにきて教えて」




「私は今も愛してるわあなたのことを、今も君のことを、あなたの全てを、だから受け取ってクリスマスのプレゼントを」


「優斗くん、歌い切りました」

「莉奈」


 俺は名前を呼ぶ。


「はい」

「上手くないか? 音程ほぼ外してなかったし」


 これで上手くないですなんて言ってたのかよ。


「あれぐらい誰でもできますよ」

「できるか! もし俺よりも遥かに点数が高かったら許さないからな」


 犯罪行為だろ、もはや。


「そんなこと言わないでくださいよ」

「あ、点数出たぞ、えっと94.572か。よし死刑な」


 許せねえ。この歌でトップバッターを譲ったことが。


「殺さないでくださいよお」

「まあそれは置いといても点数高くないか?」


 本当にカラオケあんまり行ったことが無いのか?


「私才女なんで」

「模試の点数あんな低いのにか?」


 俺は莉奈のおそらく痛いと思われるところを言う。


「そんなこと言わないでください」

「事実じゃん」

「優斗くんがいじめてきます」

「俺以外誰もいないのにそんなこと言うなよ」


 俺に遠回しにいじめないでと言っているのか?


「うわん」

「てか、次の曲歌うぞ」

「おー!」


 そして次の曲を歌う。


 一時間後


「流石に疲れてきたな」

「はい」

「飲み物いるか?」

「あ、欲しいです」

「よし、入れてこよう」

「ありがとうございます」


 そして俺は外に出る。

作詞なんてやったことないので、大目に見てください。なぜ自作の歌詞を書くという無茶なことをしてしまったのか…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ