第二十五話 ゲームセンター3
「おーい、何をしてんだ優斗」
向こうから声がして、俺は振り向いた。するとそこには彰人がいた。
「おい、お前こそ何をしてるんだ」
「何ってゲームセンターで遊んでるんじゃないか」
「学校休んでたのにか?」
まさか学校休んでたのって、ゲームセンター行くためだったのか?
「別にそれはどうでもいいじゃないか、俺の問題だし。というか、お前ら結構目立ってるぞ」
「そうなのか?」
そう言って周りを見たら結構な人が俺たちの方を向いていた。
「ああ、周りから見たらバカップルに見えると思う」
「それは恥ずかしいな」
「それにそんなにメダルあるしな」
「むしろ見られてるのそれが原因な気もするが……」
「というか、上原さん邪魔しないでくださいよ」
莉奈が会話に入ってくる。
「ああ、それは悪かったな」
「彰人、素直だなあ」
「うるさいな」
「莉奈がいるからか?」
俺はからかう。
「うるさいって言ってるだろ」
「すまん」
「ていうか、お前らこのメダルどうするんだ」
「あげましょうか?」
莉奈は提案する。実際こんなにメダルがあっても使えるわけがない。俺は莉奈のその提案に頷きで同意する。
「じゃあ少しもらおうかな、というかこれってルール的に大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ、別に持って帰るわけじゃねえし」
あちこちに持ち帰り禁止という貼り紙は結構あったが、譲渡禁止という文字はどこにもなかった。
「じゃあありがたくもらうわ」
そう言って彰人はおよそ千枚のメダルを受け取る。
「しかし、これでもまだバケツに入りきらないほどのメダルがあるなあ」
「じゃあ今から使い切りましょう」
「使い切れるか?」
「頑張ったらいけるでしょう」
そして俺たち二人はメダルをガンガン入れていく。
「莉奈」
「ん? なんでしょう」
「増えてねえか?」
メダルはバケツから溢れて、獲得したメダルが出てくるところがメダルでいっぱいになっている。
「気のせいじゃないですか」
「いや、完全に増えてるって」
「でももし増えてたら一生終わらないじゃないですか」
「仕方ねえだろ、お前の運がヤバいんだからよ」
「また私のせいですか?」
「じゃあそれを証明するために俺は別のところ行ってみるわ」
俺は別のところに行こうとする。すると莉奈が腕を掴んできた。
「二人でやりましょうよ」
「それじゃあ無くならねえんだよ」
「私は無くならなくならないよりも優斗くんとやる方が大事です」
「じゃあ仕方ねえか……とはならねえから。俺は今の状況に少し飽きてきているんだよ」
俺は文句を言う。メダルが減らなければなんかやってる感が無い。
「そんなこと言われましても」
「優斗ーおかわりちょうだい」
「ちょっと待て、彰人お前無くなるの早ないか?」
「早い? 俺は普通に連続で入れまくっただけだけどな、こういうふうに」
そう言って彰人は三枚一気に入れる。両方からだから六枚だ。
「お前すごいな」
「俺みたいなゲーセン中毒者ぐらいになったら普通だよ」
「ちょっと待て、お前学校休んでいる日って毎日ゲーセン行ってんのか?」
「失礼だな、毎日ではねえよ」
「でも結構行ってはいるんだろ」
「悪いかよ、優斗」
「別に悪いとは言ってねえだろ」
まあ、学校行けよとは思うが。
「ちょっと二人とも」
「何だ?」
「私はここにデートみたいなつもりでここに来たんですけど、さっきから上原さんとばかり喋ってませんか」
「ちょっと待て、お前これもデートだったん?」
「二人で出かけたらそれはもうデートでしょ」
「そうだけどよ、なんかゲーセンをデートというのかわからない」
デートって言ったらオシャレなところだろ。知らんけど。
「だったら帰りにショッピングに付き合ってくださいよ」
「ああ、いいぞ」
なんかデートぽい場所提案されたな。
「じゃあそろそろ邪魔者はお暇するわ」
「じゃあ、これもってけ」
俺はまた千メダルくらい渡す。
「センキュー」
彰人が軽くお礼を言う。
「じゃあ仕切り直しですね」
「仕切り直しとか言われてもよ、もうメダルゲームは完全に飽きたぞ」
「じゃあおいていきます?」
莉奈が衝撃的な提案をした。
「それもちょっとなあ」
流石においていくのはダメな気がする。
「はっきりしてくださいよ」
「じゃあ彰人に全部渡すか」
「結局ですか? ならさっき全部渡したらよかったじゃないですか?」
「仕方ねえだろ、さっきはあいつさっそうと去っていったからな」
「じゃあ今から渡すんですか?」
「ああ、そうだな」
「おーい彰人、これやる」
彰人のところを見るともう半分以下になっていた。流石になくなるスピードがヤバすぎだろ。
「おお、ありがとう優斗、てかもういいのか?」
「ああ、存分に使え」
「ありがとうな」
「さてと、じゃあやるか」
「はい!」
そして俺たちはクレーンゲームの前に立つ。
「とは言っても優斗くんお金あんまりないんじゃないんでしたっけ」
「そうは言っても三千円はあるぞ」
「じゃあやりましょうか」
「おう」
「で、優斗くんは何が欲しいんですか?」
「俺はこれだな」
そう言って俺は奥の某異世界アニメ、「レッドレインプロジェクト」のヒロインの青桐血滝のフィギュアを指さした。
「優斗くん、そういうのが好きなんですか」
「別に何が好きでも構わねえだろ」
俺は反論する。
「優斗くんってもしかしてオタクですか?」
「分からん」
「わからんって何ですか」
「今の時代オタクの定義の方が難しいだろ」
「そうですかね」
「だって今の時代結構みんなアニメ好きって公言してるじゃん、そんな中ただのアニメ好きがオタクを名乗れるのかなって」
実際今の時代SNSとかでオタク趣味のこと発信している人が多い。オタクが嫌われてるのなんてもう昔の話だ。
「名乗れるんじゃないですか?」
「でもな、俺聞いたことがあるんだよ、オタクの定義ってい一つのことを熱中する人みたいなことを、でそれがアニオタに変わったらしいんだ」
たしかどっかの記事で読んだことがある。
「じゃあ名乗れないってことですか?」
「ああ、そうなるな」
「まあ別にそういうのって個人の選択ですもんね」
「そうだな、まあとりあえずこれ取るか」
「はい!」
これはクレーンゲームに似た感じだが、少しだけ違う。これは目押しスタイルである。ボタンを動かして、ちょうど商品のところのボタンに押せれば賞品がもらえるのである。
「なかなか惜しいところまでは来てんだけどなあ」
そう、なかなか惜しいところまでは来ているのだ。しかし、惜しいところでボタンを押せないのだ。正直言ってこのゲームは難しすぎる。イライラさせる目的で作られている気がする。まあ店側もそう簡単に商品を取られては困るから当たり前ではあるが。
「今度は私がやりましょうか?」
莉奈が提案して来た。
「分かった、任せるわ」
実際こういうのは誰が上手かとかはわからないし、他の人にやらせた方が意外な才能があるという可能性もある。
「ほいしょっと」
莉奈は丁寧に標準を定めていく。
「ポチ」
ボタンが押された。俺が苦戦したボタンが一回で押された。
「は?」
俺はその光景を理解するのに時間がかかった。俺があんなにも苦戦したのはなんだったんだろうか。
「ほら、どうぞ」
「おお、ありがとう。というか、これの才能あるんじゃないか?」
「あるかもしれませんね」
「じゃあその勢いでこれも頼めるか?」
俺はその近くにあるゲームのキャラクターを指差した。
「任されました!」
そして莉奈は再びボタンを動かす。
「えい」
見事に外れた、奇跡は二度は起きないらしい。
「悔しいです。もう一回やってもいいですか?」
「ああ、むしろやってくれ」
そう言って俺は100円を投入する。
「えい」
莉奈はまた丁寧に動かす。
「取れました!」
「うおお、莉奈最高!」
「他にとってほしいものありますか?」
「めっちゃあるわ、頼むわ」
結果俺の三千円と莉奈の千五百円で七つのフィギュアが取れた。これ、普通に店泣かせだな。少しだけ罪悪感が出てしまう。
「しかし、莉奈やばすぎないか?」
「優斗くんに告白したことを感謝して欲しいです」
「ああ、感謝するよ」
なにしろ、こんなにもフィギュアを取ってくれたんだからな。コストパフォーマンス最高だよ。
「じゃあそろそろ行くか」
「ですね!」




