第二四話 ゲームセンター2
「次は何をしましょうか」
「もう次何やるかの話か、早いな」
太鼓叩き終わってすぐなのに、もうかよ。
「だって優斗くんともっと遊びたいんですもん」
「そうか」
よく考えたら莉奈は友達がいなかった。つまり、莉奈は友達となんて来たことがなかったと言うことだ。そりゃあテンション上がるのも分からんことはない。
「私あれを優斗くんとやりたいです」
莉奈が指をさした所にあったのは、いわゆるメダルゲームだった。
「あれか、あれってただメダルを落とすだけのゲームだろ、何が面白いんだ」
俺はかつて一回だけこのゲームをやったことがある。しかし、まったくはまらなかった。ただメダルを発射しまくって、その間にルーレットを見てあたりか外れかを見るだけゲーム。それにパチンコみたいに報酬もあるかけじゃない。俺にはこれの魅力は全くもって分からない。
「いいじゃないですか、やりましょうよ」
「でもなあ」
「いいじゃないですか、きっと楽しいですよ」
「仕方ないなあ、でも俺お金あんまりねえんだよな」
「私おかねなら結構持ってます」
「おお、それは助かる」
結果、ありがたいことにメダル購入のお金は全額莉奈が持つことになった。ありがたすぎる。
「行きますよ」
そう言って莉奈はメダルを右側のレーンに入れる。そしたら、メダルが流れて、ゲーム機の中に転がり落ち、前後移動する台の上に落ち、古いメダルが新しいメダルに押されて、奥にあった古いメダルが一個、下の台に落ちていった。それとほぼ同時にルーレットが回ら始めた。
「優斗くんも入れてくださいよ」
「わかった」
俺はメダルを一気に二枚入れた。
「なんて早い入れ方」
「待っているのが嫌なんだよ」
そんなことを言っている間にルーレットが止まり始めた。
「優斗くん見てください、リーチですよ」
三のリーチだ。
「そんなん分かってるよ、でもこういうのって大体当たらないものなんだよ」
こんなものリーチを見させて、当たるかもと思わせて全然当たらないのが普通なんだよ。
「あ、三で止まりました」
「まじか、幸先いいな」
そして下の台の上に十五枚メダルが流れ落ちる。
「見てください優斗くん、五枚きましたよ」
そうメダルは、そのまま来るのではなく、下の台の上に落ちるのだ。もしかしたらこのメダルは両脇のガーターに入ってそのまま戻ってこないかもしれない。それがこのメダルゲームの恐ろしいところだ。
「優斗くん、また来ましたよ」
その言葉に反応して画面を見る、すると四が三つ並んでいた。そしてレーンに二十枚のメダルが降り注ぐ。
「莉奈おかしくねえか?」
「何がですか?」
「運がやばくないか」
「こんなの普通ですよ」
だって普通な、こんな当たるものじゃない。ジャックポットチャンスが来て、今までの負けを取り戻す。それが普通だ。もちろん本物のパチンコよりは何倍も当たりやすい、ただそれだけだ。普通はあんまり当たらないものなのだ。俺の知ってるメダルゲームはな。
「ん? なんかイベント来たんですけど」
それを見ると謎の魔法使いが魔法をかけてなにかしているところだった。
「なんか成功してねえか」
見ると三〇メダルゲットと出ていた。もうめちゃくちゃだよこのゲーム。
「どんどんメダルが落ちてきますよ」
その後も莉奈の強運の効果は続きまくった。気づけばもうメダルは元が二五〇枚だったのに対して、今はもう一五〇〇枚ぐらいはある。
「なあ莉奈そろそろやめようぜ、メダルがもうそろそろ入りきらねえ」
そろそろメダルケースの役割をしているバケツの中もだいぶメダルがいっぱいになってきて、そろそろ溢れそうになっている。
「もうちょっとでジャックポットチャンスきますから、それまでは」
「わかったよ」
とメダルを入れる。すると……
「あ、ジャックポットチャンスきました」
すぐに始まった。するとジャックポットチャンスおなじみの球が移動して、どの穴に入るのかみたいな演出が始まった、球が入った穴の上に書いてあるメダルが出てくるのだ。例えば三〇枚とか一五〇枚とか二千枚とかだ。さすがに豪華らしく、音が鳴り響く。
「頼みます、入ってください、ジャックポットに入ってください」
莉奈は祈りまくる。しかし、俺はもう三日もいるからわかっているのだ、莉奈の運の良さを。俺にはもうジャックポットに入るイメージしか出てこない。
しかし、演出長いな。そろそろ飽きてきたんだが。さすがにそろそろイライラしてくるんだけど。
「やったーーーーーー」
二分後にようやく一つの穴の中に入った。それを見て、莉奈が大はしゃぎしている。
「やったーーーー」
莉奈がもう一回いう。どれだけうれしいんだ。
「メダル一万枚ゲット」
機械音声でそう流れた。一万枚はえぐいだろ。
そしてメダルが流れてくる。とにかく止まらない、三分間ぐらいメダルが流れ続けている。確かにこの音は最高だった。
「気持ちいいですね、優斗くん」
「ああそうだな、てか思ったんやけどお前将来遊んで暮らせるんじゃね」
俺はそう言った。パチンコでも莉奈のこの運が成立するのであれば、それはもう大儲けのチャンスだ。あおれに、パチンコじゃなくても、何か運を使う仕事をしたら、それもまた大儲家出来るだろう。
「別に私ギャンブラーになるつもりはありませんよ」
「でもお前の運の良さ異常だろ」
意外な答えが返ってきたが、俺はさらにたたみかける。
「そうですか?」
「ジャックポットなんて普通はいらねえだろ、せいぜい端の三百枚ぐらいが御の字だよ」
「でもそれって優斗くんの運でもありますよね。私のおかげだと決めつけないでくださいよ」
痛いところをつかれた。そもそも俺が入れたメダルが入ったことでジャックポットチャンスが始まったから、俺のおかげの可能性もあるのだ。しかし、こういうののジャックポットチャンスなんて普通は百分の一程度だ、ならば梨奈のせいと考えるのが普通である。
「でも、お前の運の吊り上げが大きいんだろ、たぶん」
「たぶんってなんですか、根拠ないですよね」
「でも今までのこと考えたら莉奈のおかげだろ」
「優斗くんの運の力もありますって」
「いや、お前の運のおかげだろ」
「埒があきませんね」
「そうだな」
「おーい、何をしてんだ優斗」
向こうから声がして、振り向いた。するとそこには学校を休んでいたはずの彰人がいた。




