第二十二話 模試
その後色々と授業が経過し、あっという間に六時間目が終わり、そして終わりのホームルームとなった。
「えー帰りのホームルームを始めるぞ」
「はーい」
理央を始めとする人たちが元気よく返事をした。
「まあ特に話すことは無いが、月曜日に模試があるから、みんな勉強は忘れるなよ」
模試か…忘れていたな。俺は勉強はできる方だからそんな対策とかはしなくても良いと思うが、でもするに越したことは無い。模試、つまり模擬試験の点数は俺の将来のことを決めるきっかけにもなる。それに模試のために勉強すれば、それだけで力が付く。
しかし、やはり勉強するのは必要なこととわかっていても少しだけだるい。模試で点数がよかったからって得るのはうれしいという感情だけだ。よく結果よりも経過だとかいう大人がいるが、高校生にとっては経過よりも一〇倍結果のほうが嬉しいのだ。でも、目指している大学に入るには模試の対策をしなければならない。
それに、今回の模試ではいいこともある、莉奈がいるということだ。寛人はそもそも勉強を一緒にはやってはくれないし、彰人はもう論外だ。莉奈の成績がどれぐらいだとは知らないが、莉奈だったら俺が一緒に勉強したいと言ったら喜んで一緒に勉強してくれるだろう。それで俺の勉強のモチベーションも上がればなお良しだ。
「莉奈」
「何でしょうか?」
「日曜日軽く模試の勉強しないか」
「嫌です、勉強は」
何だと、莉奈ならば軽く引き受けると思っていたが、見積もりが甘かったか。
「なんで嫌なんだ?」
「優斗くんは私の成績知らないからそう言えるんでしょうね」
そう言って莉奈はスマホで自分の成績を俺に見せる。今の時代は便利なもので、学校に入れさせられたアプリで自分の定期テストの成績や模試の成績などの様々な情報を見ることができる。
数学偏差値四一
国語偏差値四九
理科偏差値四四
英語偏差値四三
社会偏差値四五
なるほど、これは勉強が嫌なわけだな。壊滅的だ。ちなみにだが、この高校の偏差値は五十一。一体どうやってこの高校に入ったのだろうか。
「今この成績でどうやってこの高校に入れたんだっていう顔をしましたよね」
「そんな顔してないぞ」
嘘です。思い切りしてます。
「仕方ないじゃないですか、高校の勉強分からないですし」
「でもお前、国語はいけてるんだから」
「それは現代文で上げてるだけで、古文と漢文はぼこぼこなんですよ」
「よし決まった、日曜日は家で勉強会な」
俺は勢いよくそう言った。俺は勉強会というものがしたかったのだ。前述した通り、寛人と彰人は勉強会にいくら呼んでも来てくれないし。一人で勉強するのはやっぱり寂しい。
「そんなめっそうな」
「仕方ねえだろ。このままじゃあ莉奈の将来が心配だ」
俺はそう言って莉奈を説得する。思えば今まで莉奈に説得されてばっかな気がするから、俺から提案してって言うのはほぼ初めてで新鮮だ。
「それを言ったら優斗くんの模試の成績はいくつなんですか?」
「お前、そんなん聞いてどうせ知ってんだろ」
「知らないです」
「え?」
「知らないです」
「嘘つけよ、お前が知らないわけないだろ」
だってこのストーカだぞ、知らないわけねえだろ。
「優斗くんが悪いんですよ、大声で話されないから」
「俺のせいかよ」
「だって私ストーカじゃないですし」
「お前知らんのか、じゃあ教えてやる」
そう言って俺は自分のスマホを取り出して偏差値を見せる。それに対して莉奈はスマホを見る。
国語偏差値五七
数学偏差値六四
理科偏差値五二
英語偏差値五五
社会偏差値五九
「ゆ、優斗くん」
「なんだ?」
「化け物じゃないですか」
「あ、うん」
「普通にすごすぎませんか?」
「まあな、俺結構勉強してるし」
自慢じゃないが、学年で三番以内に入ったこともある。
「なんでこの高校を選んだんですか?」
「そりゃあ、近かったし」
「何ですか、そのかっこいい理由は」
たしかにありきたりなかっこいい理由か。これ。
「そういえば大貫さんの成績は何ですか?」
莉奈が近くでスマホを触っていた寛人に話しかける。
「お、俺? 急だな」
「そうです、教えてください」
「えっと俺はな」
数学四七
理科四八
国語五五
英語五四
社会五六
「大貫さん、思い切り文系課目によってません?」
「まあな、だからこそ文系にしたっていうのもあるし」
「あ、そういえばなんで優斗くんは理系にしなかったのですか?」
「あ、ああそれは特に意味はない」
「意味はないってどういうことですか?」
「理系の仕事にはあまり興味がわかなかっただけだよ」
実際エンジニアなんて言われてもなんかピンとしないし、それよりは経営とかに携わったりする方が性に合ってる気がする。
「何ですかそのさらにかっこいい理由は」
「別にかっこいい理由とは思わないけど」
「でも理数系もできるってことでしょ、二刀流かっこいいじゃないですか」
「そうは言ってもなあ」
「あ、そうだ、ちょっと理央さんたちに話してきます」
「ちょ、おい」
莉奈は向こうにかけていった。
「優斗、止めてあげろよ」
「すまん、あいつがあんなにあほとは思っていなかった」
「あの大村さんだぞ、模試の成績が悪いなんてことないだろ」
「だよな」
「仕方がない、莉奈は諦めるか」
「だな」
「理央さん見てください」
「ん?」
「優斗くんの成績です」
「おお、結構いいじゃん」
「結構どまりなんですか?」
「だって私それよりも成績いいし」
「そうよ、だって理央天才だし」
「どんな成績なんですか?」
数学偏差値六一
英語偏差値六二
理科偏差値六四
社会偏差値六六
国語偏差値六〇
「え、優斗くんよりも化け物じゃないですか、なんでこの高校にしたんですか?」
「近かったから」
「やっぱりですか」
莉奈はため息をつく。
「理央ちゃんいつもその話どや顔っで言ってるよね」
「そりゃあそうでしょ、何で勉強しているのって話じゃん」
「将来のためじゃないんですか?」
「違うよ、自慢するためだよ」
「あ、そのためですか」
「そう、人間はね自慢したい生き物なの」
理央はそうドヤ顔で言う。
「ちょっと理央性格変わっちゃってるって、というかそろそろ出ないと役員会議に送れちゃうって」
そう言って美里が莉央の手を掴む。
「たしかに、じゃあまた明日ね」
「はい!」
「な、あの人化け物だろ」
「なんで教えてくれなかったんですか」
「お前が言う前に言っちゃったんじゃないか、それにあの人が化け物なんて常識だと思ってたし」
そう、うちの学校はランキングとか貼ったりとかはしないが、大村さんは大村さんの友達が結構な大声で成績言ったりしているし普通に知っていると思っていた。
「だって私、優斗くん以外には興味ないし」
「それはそれでどうなんだよ」
興味ないというレベルではないと思うし。だから友達いなかったんじゃないか?
「だって、恋ってそういうものじゃないですか」
「そうかなあ」
「というかさっさと帰りましょう、それと優斗くん、私帰りに行きたいところがあるんです」
「どこだ?」
「ゲームセンター」
「急にどうした?」
明日カラオケ行くのに。
「だって、明日まで優斗くんと一緒に遊べないの我慢できないですから」
「日曜日に一緒に勉強するのならいいけど」
条件を出す。これでおとなしく勉強会してくれたら嬉しいし。
「わかりました」
私は国語と社会が成績良かったですね。




