第二一話 ランチトーク2
「じゃあ理央さんから見た優斗さんとは?」
莉奈が今度は理央に振ってきた。
「私はあまり優斗と話したことなかったからあんまり深いことは言えないけど、とりあえず優しそうだとは思ったね。付き合ったら買い物に付き合ってくれそう」
「それは荷物持ちっていうことか?」
俺は聞く。
「うん、私は今まで何人もの人と付き合ったことがあるけど、半分ぐらいの元彼は持ってくれなかったしね」
「別に私の場合、その時は私が持ちますよ。その場合買い物したの私ですし、優斗くんの体力を奪いたくはないです」
「昨日のお前の行動を踏まえてよくそういう事を言えたな」
「えーいいじゃないですか」
「俺が拒否してるのに無理矢理口に卵焼きをぶち込んだくせにか?」
「結局昨日は優斗くん楽しそうだったじゃないですか」
「まあそれはそうだけどよ」
その光景を見ながら理央が微笑んでいる。
「そう言えば理央さんから見て私たちって仲良さそうに見えますか?」
莉奈がまた理央に話を振ってきた。
「それは難しいわね。でも仲良さそうには見えるわよ。まあでも莉奈の一方方向に見えるけど」
「一方方向に見えるって? どういうことですか?」
「そのままの意味よ、莉奈が一方的にいちゃいちゃしてるように見える」
「そう見えますかね」
「そうだろ」
「優斗くん!?」
「俺からアプローチかけたことなんてほぼないぞ」
「じゃあ優斗くんは私のこと好きじゃないんですか?」
「いや、そうではないが」
「なら、いいじゃないですか」
強引な論理だな。
「あのー私が言いたかったのはそうじゃないんだけど」
「え?」
「私はそういう形の愛もあるかもってこと」
「ふーん」
「でも、優斗くんの可愛さとはかっこよさとか見てたらついいちゃいちゃしたくなるんですよね」
「まあ、その気持ちもわからなくもないけど」
「ちょっと待ってくれ」
寛人が話にわけ入ってきた。
「俺だけ恋愛経験無いから話についていけないんだけど」
「寛人諦めろ」
「優斗だってその立場だったよな? いい気に乗ってるんじゃねえぞ」
「優斗くんに喧嘩売るんですか」
「待て莉奈、話がややこしくなる」
「俺だって彼女欲しいんだよ」
「でもお前それらしい人いねえじゃん」
「仕方ねえじゃねえかよ、お前と違ってそんな漫画みたいなこと起きてないし」
「ちょっと待ってくれませんか」
傍観していた莉央が話をかけてきた。
「漫画みたいな出来事ということなら寛人もだいぶ漫画みたいな状況にいると思うわよ」
「どうしてそう思うんだ?」
「女子と私たちとご飯食べているじゃ無いですか」
「そうですよ! 大貫さんはもう少しこの状況に感謝してください」
莉奈も乗っかって感謝を求めようとする。
「それを言ったらそうだけど、それは漫画の状況とは言っても友人役だと思うんだ」
「たしかに言えてる」
「おい、肯定されたらそれはそれで違うと思うんだけど」
「肯定して欲しいんじゃないのかよ」
わからん。
「で、寛人も彼女探したらどうなんだよ」
「俺にはそんな権利ねえよ、陽キャがやってたらいいんだ」
「と言っていますが、陽キャさん」
莉奈が莉央に図々しく聴く。
「まあ、私彼氏七回いたことがあるから説得力あるわね」 「七回はえぐいな」
「まあ、長続きはしなかったけどね」
「なんか原因があったの?」
「単に、カップルとして合わなかっただけ、ほとんど円満で別れてるから。私の場合男友達と付き合うことが多かったからね」
「じゃあカップルの時って何をしていたの? 私は初心者だから教えてください」
「いいよ、とは言ってもあくまでも私理論だから、私が言ってることが全部正解っていうわけじゃないけど」
「はい、それでもお願いします」
「私が思うのは、気を使わないということ」
「気をつかわないということですか?」
「そう、気を使っても良いことなんてないのよ。確かに部分的に仲は良くなるかもしれない。けどそれだけ。長続きはしなかった。それで私何人か彼氏から失ってるから」
「そうなんだ、私も気を使わないように頑張ります」
「お前はもう少し気を使っても良いと思うけどな」
「なんでですか」
「お前は気を使わなすぎなんだよ。俺たちが付き合い始めたのいつだと思う? 二日三日前だよ。いきなり距離が狭すぎるんだよ」
風呂入ってくるし、めっちゃいちゃいちゃしようとしてくるし。
「そんなこと言われましても」
「ちょっと良い? 私は優斗もあんまり気を使ってない気がするけど」
「それは、莉奈が気を遣ってないからだと思うけど」
「でもそれで良いと思うわ。急にカップルになると、距離が変に遠くなって失敗するあるから」
「そうですか」
「莉央ー、恋バナしてるの?」
「美里、加わる?」
「あ、さっきのじゃんけんの子じゃん、さっきは勝っちゃってごめんね」
「いえいえ、実力の世界ですから」
「というよりも、前川さんに謝った方がいいのか、ごめんね」
「まあ俺としては、悔しいけれど、それで恨んでしまったらそれは別の話になってしまうし。構わないよ」
「ありがとー。気持ちよくラミルトンの発表がんばるね」
「あ、ああ」
そんな気持ちよく言われたら恨みたくなるんだが。
「美里ー、そんなこと言わないでよ。優斗困ってるよ」
「あ、ごめん」
大村さんが言ってくれた。
「まあそんなことは言っても、俺としては全体の発表が良くなるほうがいいしな」
「あ、大人ー」
「悪いけど、恨みがないわけではないんだけどな」
「じゃあ子ども?」
なんで子どもになるんだよ。
「恨みがないわけあるか? まあじゃんけんで負けた俺が悪いけど」
「そっか」
「でさ、この新カップルのために美里からも恋の秘訣教えてあげてくれない?」
「わかった、とは言っても私から言えることなんてあんまりないけど」
「私も大したことは言ってないから大丈夫」
「オッケー」
「私が思うのは積極的にっていうことかな」
「積極的にですか?」
おい、やめろ。それは一番言ってはいけない言葉だ。こいつがこれ以上積極的になったらモンスターが生まれるぞ。
「うん、だってせっかく付き合っても友達付き合いぐらいじゃあつまらないでしょ」
こっちは友達付き合いプラスアルファでいいんだよ。
「もっと積極的にですね」
「これ以上積極的になれない気がするんだけど」
俺ははっきりと声に出して言った。
「なんでですか、もっといちゃいちゃしましょうよ」
「……」
流石にな。昨日以上となったらもう高校生の範囲じゃあ収まらなくなりそうだ。
「ちょっといいか? 四人とも」
「なんですか?」
「もう一時三分だけどそろそろ食べるのに集中した方がいいんじゃねえか」
寛人がそう提案する。うちの昼休みは二〇分までだが、まだご飯はほぼ減っていない。
「まあ、たしかにね、食べましょう」
「うん」
「おう」




