第二〇話 ランチトーク1
授業が終わったらすぐに俺は自分の席に戻った。
「優斗」
寛人が話しかけて来た。
「言いたいことはわかっている」
どうせ、さっきの莉奈とのことだろう。
「お前、いちゃいちゃで怒られるってどんな理由だよ」
「それは莉奈に言ってくれ」
「そうか、でもお前ら学校ではやめろよ」
「俺はやめたい方なんだよ」
「やめたいんですか?」
急に背後から声をかけられた。
「うお、びっくりした、大村さんと話してたんじゃなかったんかよ」
「いますよ」
そして二人目の声がする。理央だ。
「いるんかい」
思わずツッコんだ。
「ちょっと話がしたくてね」
「何の話だ?」
「そういや、チャットアプリの友達登録とかしてなかったなって思ってさ」
「確かにな、莉奈はもうしたのか?」
確かにグループワークで連絡先交換無しは不便だしな。
「もちろん、美穂も」
「そうかあと俺だけっていうことか」
「そうそう、あとついでに私とも友達登録しよ」
「莉奈はもうしたのか?」
「もちろん、というか、優斗くん私依存なんですか?」
「違うわ、確認しただけだよ」
なんでお前依存なんだよ。俺は自我あるぞ。
「そう、だったらいいですけど」
「で、優斗は私と交換してくれる?」
「もちろんかまわないよ」
そう言って俺は自分のチャットアプリの画面を見せる。
「よかったですね優斗くん、女子の連絡先が一つ増えましたよ」
「おい、お前はそれでいいのかよ」
莉奈やったらこういうの嫌がると思ってたんだよな。
「じゃあ消してもらいましょうか」
「ちょっと私の連絡先を勝手に消さないでくれる?」
「俺は消そうとは思ってねえ、莉奈のほうに言ってくれ」
そして二人は去る。
「優斗モテモテじゃねえか、きっと彰人もうらやむぞ」
「まあそれはそうだな」
「本当にハーレム物の漫画かよ」
「何だよその大村さんまで俺のことが好きみたいな言い方をして、それに寛人もついでに二人と連絡先交換したしいいじゃねえか」
「まあ、それはな。彰人学校休んだことうらやむだろうな」
「それはな」
「あ、大貫さん優斗くんもらって言っていいですか?」
再び後ろから声をかけられた。
「お前今度こそ大村さんのところ言ったんじゃなかったのか?」
そうさっき二人で向こうに行ったはずだった。
「優斗くんもこっちに来てガールズトークに入れたらどうかなって思ったんですよ」
「今日はお前ら二人で食べるのかと思ってたわ」
「私が優斗くんを除いて食べるわけないじゃないですか」
「そういやそうだった、お前そういう人間だったな」
「名前で呼んでくださいよ」
お前と言ったのが気に入らなかったらしい。もう結構お前呼びしてる気がしてるんだけどな。
「おーいお前ら、イチャイチャなら別のところでやってくれ、彼女いない人間にはつらいんだ」
寛人が愚痴を言う。たしかに俺も同じ立場だったら同じことを言うだろう。
「あ、そうだね。てか大貫さんも一緒に来ませんか?」
「なんで俺もなんだよ」
「理央さん今彼氏いないらしいですよ」
「それで?」
「ワンチャンあるかもしれませんよ」
「はあ仕方ねえな、行ってやるか」
「やったー」
莉奈策士すぎるだろ。
「おい、寛人彼女作りたいのか?」
俺は聞く。
「そりゃあこの数日間イチャイチャを見せられたらそうなるわ」
「たった二日目だぞ」
「それにしてはいちゃいちゃしすぎだろ」
「私に対する褒め言葉ですか?」
「まあそう思ってくれたらいいよ、というか早く行くぞ」
寛人はそう言っていち早く走り出した。
「莉央さん、連れてきました。それと寛人さんも一緒に居てもいいですか?」
「ダメ」
「え?」
「冗談よ、人が多い方が楽しいしね。さあ食べましょう」
「はい」
「さあ、寛人さん視点から見た優斗くんの話を聞かせてください」
「まさか俺を呼んだのって」
「そういうことです」
「俺は所詮優斗の付属品ということか」
「そういうことです」
そういうことですって二回言うな。
「俺は何でこの四人で俺の話になるのかわからない」
「私が頼んだんですよ、みんなから見た優斗くんの話を聞きたいから」
「そ、そうか」
俺としては他の話で盛り上がって欲しいんだけどな。そのことを言ってもどうせ莉奈の前やと無駄だろう。
「それで大貫さんから見た優斗くんの印象は?」
「えーと、まあ大人しいっていう感じだな。あんまり騒がないっていうか、そもそも積極的に人に関わろうとしてないっていう感じだな」
「俺そんなふうに見えてるんかよ」
人と関わろうとしていないとは言われるとは思わなかった。確かに友達はほとんどいないけど。
「当たり前だろ、俺がもうアプローチかけてやっと友達に慣れたぐらいだし、彰人ともまあ仲がいいっちゃいいけど、そこまでだろ」
「まあ否定できないけどよ」
まあでも、実際、中学の時の事件のせいで人と関わるのが怖くなってたことは否定できない。
そのせいでクラスメイトとはそこまで仲がいいとはいえなかった。友達が二人いたら十分かもしれないが、逆に言えばその二人以外とは関わってこなかったということになる。
「ん? それじゃあこいつとこの三日でこんないちゃいちゃするようになった松崎さんって」
「まあもうアプローチかけましたからね」
「アプローチどころじゃ無い気がするんだが」
「アプローチですよー」
「それでじゃあ理央さんから見た優斗さんとは?」
莉奈が今度は大村さんに振ってきた。




