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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第十六話 地獄

 寝れん。莉奈はまたすぐに熟睡したみたいだが、今はちょっと寝られる気分ではない。さっき莉奈に思い切り抱っこされて胸をもまされたのだ。そんな状態でどうして興奮しないで寝られるのか、いや、寝られるわけがない。


 そんなことを考えながら数分間ごろごろする。だが相変わらず寝ることができない。明日も朝早いからもう寝たいところだが、どうやって眠りに落ちるか。


 そろそろ俺を起こしておきながら熟睡している莉奈のことが恨めしくなってきた。熟睡できるのは正直言ってうらやましい。俺だって正直寝たい。しかし、考えれば考えるほど寝るのが難しくなってくる。寝たら明日になる、寝ればもう楽になるのだ。



 あれからまた時間がたった。寝れる気配が全くと言っていいほど無い。普段から学校のおかげで睡眠不足なはずなのにだ。それなのに眠りに、夢の世界に入ることが出来ない。


 いい加減早く寝ないと学校のための睡眠を確保できない。そんなのは嫌だ、早く寝ないと、早く寝ないと。だがそんなことを考えているとまた寝れなくなる。つらい、さっさと寝たい。


 さっきから心なしかネガティブなことを考えてしまう、俺とは何なのかとか、明日も学校なのかとか、存在意義とはなんなのかなどという考えが頭の中で何回もよぎる。


 つらい。さっきから何回つらいと言っているのかわからないがとにかくつらいのだ。



 また少しだけ時間がたった。まだ眠れない。もう寝なくてもいいかな? 起きてもいいかな? などという考えがよぎってしまう。


 そんなことを考えながら莉奈のほうを再びちらっと見ると、相変わらず熟睡している。見なければよかった。莉奈に向かって大声で眠れない原因はお前なんだぞと言いたいところだ。


 布団の中にもぐり視界を真っ暗にする。これが俺が取れる現段階での最善の手だ。真っ暗になれば眠れる可能性が上がっていくと信じている。




 潜ってから体感五分程度の時間が経過したが、やはり眠れる気配がしない。むしろだんだんと暑くなってきて、眠りから遠ざかっていく気がする。


 そのうちに一生寝られないんじゃないかという一介の不安が俺を襲う。そんなのは嫌だ、俺は寝たいと俺は何回も心の中でつぶやく。そしてこれ以上貴重な睡眠時間を奪わないでくれと心の底から願う。








「優斗くん、優斗くん」

「ん、あと五分」


 まだ眠い。寝かしてくれ莉奈。


「優斗くんもう七時半ですよ、起きてください」


 制服に既に着替え終わった莉奈が俺の前に現れる。


 俺はいつの間に寝たんだ? というか莉奈はいつの間に起きてたんだ。わからないことがいっぱいだが、とりあえず布団を蹴飛ばして俺は体を起こす。


「もうそんな時間か」

「ええ、そろそろ時間がやばいです」


 そろそろ時間がやばいらしい。アラームも効果がなかったな。まさか、あの状態から起きれないぐらいの熟睡をするとは。

 まだ普通に眠い。


「ああ、急いで着替えるわ」


 俺は眠い体を本格的に起こして、急いで着替えの部屋に行って、パジャマを脱いで制服を着る。制服は楽だ、服を選ぶ必要がないからな。そのおかげでぎりぎりの時間になったとしても急いで着ることができる。


 だが、急がないと学校に遅刻するという事実で少しだけ不安になって、制服を上手く着ることができない。


 ズボンを履く時にパンツを履くのを忘れたりだとか、ネクタイを着けるのが何回やっても上手くいかないとか、さまざまな難問に突き当たってしまう。なんで平時は上手くいくのに、今回は上手くいかないんだよと自分に文句を言いたくなる。


 そしてようやく上手く制服に着替えられた。だがまだ終わりでは無い。すぐに洗面台の前に立つ。髪の毛をセットしなくてはならないのだ。


 髪の毛のセットは別に義務ではない。しかし、高校生にもなると髪の毛のセットぐらいしないと恥ずかしいなと個人的には思う。


 高校生の中にも髪の毛のセットをほぼしていない人もたくさんいる。しかし、オシャレな人はみんなセットをしているのだ。


「優斗くん急いでください」


 莉奈が心配そうにこちらを見ている。


「そんなにせかすなよ、莉奈」


 俺だって急いでるんだ、わざと服を着るのに時間がかかっている訳では無い。だが、莉奈は「もう五十分ですよ」などと焦らせてくる。こういうのは焦れば焦るほど、失敗するんもんなんだよ。


「今日の朝ご飯は食べてほしいんです、私が作ったんですから」


 いつの間に作っていたんだ。そして朝、俺が起きた時に、既に起きていたのはそういうことだったのか。


「莉奈ってご飯作れるのか」

「作れますよ。私の得意分野です。今ならこんな女の子が付いてきます」

「宣伝かよ」


 俺は思わずツッコむ。まあ莉奈としては昨日の色々で評価を落としている訳だから、評価を上げないといけないよな。


「もちろん宣伝ですよ。それとまたこの家に泊まらせてくれたら女子高生の手料理を食べられますよ」


 今度は女子高生ということをアピールしてきた。俺としては別に女子高生だろうが、四五歳だろうが、美味しければそれでいいんだがな。


「宣伝に宣伝を重ねるなよ」

「というか急いでください」

「たしかにな」




 そしていろいろ朝の支度を澄まして、俺は食卓に着く。


「優斗くん食べてください、私お手製のおいしい目玉焼きパンです」

「おお、おいしそう」


 それは食パンの上に目玉焼きが置いてあり、その周りにはまるでピザのようにベーコンが敷かれていた。見るからにおいしそうである。


 俺はこういう食事は好きだ。大体うちの朝ごはんはご飯とおかずとかいう夜ご飯の残り物が多い。手抜きと言ったら語弊があるかもしれない。でも実際に、朝ごはんは残り物が多い。


 別に母さんにけちをつけている訳では無い。そりゃあ朝俺たちのために起きてくれているだけでも感謝しなければならないことなのだ。


 しかし、俺が今言いたいことは、いつもと違うご飯だと嬉しいということだ。それに梨奈の言葉を借りるようだが、女子高生の作った料理でもあるしな。


「それはよかったです!」


 莉奈が笑顔で喜ぶ。


「うん、味も行けるな」

「よかったね莉奈ちゃん」


 由衣が莉奈に楽しそうに話しかける。


「ええ、かんばった甲斐がありました」

「うん、おいしいよ」

「優斗、私も作ったんだけど母さんには?」

「ああ、母さんもありがとう」

「まあ作ったのほとんど莉奈ちゃんなんだけどね、それより少しだけ急いで食べなさい」

「わかってるよ母さん」


 俺は味わいながら急いで食べる。


「さて食べ終わりましたか優斗くん」

「ああ」

「行きましょうか」

「おう」


 そして俺たちは学校に向かう。

眠れないのってつらいですよね。

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