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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第十五話 莉奈の寝相

「ん?」


 謎の衝撃で目が覚めた。気がついたら身体に重いものが乗っかっていた。


 どうやら何かにまとわりつかれているようだ。いや、まとわりつかれているというよりは抱き着かれているというのが正解な気がする。頭がまだぼうっとしてまだ状況か理解できない。しかし、ただ一つ確かなことは、抱き着かれているということだ。


 そこでふと首を体のほうにむける。暗くてよく見えないが、俺の首元には莉奈の姿があった。つまり、莉奈がこの重さの犯人だと言うことだ。だが、そのことが分かっても莉奈はまだ離してはくれるわけではない。莉奈には意識がないのだ。そこで、少しだけ力を入れて引き離そうとした。できるだけそっと、莉奈を起こさないようにと。


 そんな簡単に離れてくれたらどんなに楽だっただろうか。莉奈はさらに強く抱き着いて離れようとしなかった。俺がどんなに力を入れたとしてもそれは無駄だ。俺が力を入れれば入れるほど、さらに強い力で抱きついてくる。


 もう無理やり引きはがしてもいいかな? とふと考えるがそんな勇気は俺にはなかった。莉奈を起こしてしまうリスクを考えると、やはり行動には移せない。しかしこのままだと俺の眠りが遮られてしまう。重いというのはもちろんのこと、暑くて、さらに緊張するからだ。本当に困った問題である。






「優斗さーん、抱っこしてください、愛してください。好きです優斗さん」


 ふと莉奈が声を発する。夢の中の俺に愛してくださいと言っているようだ。これは俺に関係した夢を夢を見ていると言うことなのか? しかし、夢の中でも俺は出てきてるのか……どれだけ梨奈は俺の方が好きなんだ。


「早く離れてくれ、莉奈。暑すぎる」


 少し小さめの声で言った。そろそろ我慢の限界だ。


「嫌ですよ優斗くん、私は優斗さんのものなんですから」


 莉奈が普通に返事をした。これは会話が出来ているのか? だとしたら少しだけ状況は明るくなる。まずは何とかして離れてもらう方法を考えよう。


 俺の話す言葉自体では莉奈が自ら離れてもらうというのも可能かもしれない。


「うーん私は優斗くんのことが優斗さんのことが好きなんですぅ」


 完全に気のせいだった。さっきのは夢の中の俺に対して発した言葉だった。こうなると俺の夢の中の俺にかけるしかない。どうにかして莉奈を離れさせるような言葉を発してくれ。俺の睡眠はお前にかかっているんだ。


「優斗くん大好きです」


 莉奈の締め付けがさらに強くなる。さすがにそろそろ痛くなってきた。本当の我慢の限界が近づいてきている。誰が助けてくれ、本当に助けてくれ。


「もっと優斗くんぎゅってしてください、もっと強く抱きしめてください」


 そこで、俺がぎゅっとしないから莉奈がギュッとしているんじゃないかという可能性に気づいた。その瞬間俺が莉奈を抱きしめれば満足して莉奈が俺から離れてくれると言う希望を感じた。この地獄から脱する希望が。


 俺はその可能性を信じて莉奈のおなかの周りに手をまわし、思い切り抱きしめた。


 抱きしめた瞬間莉奈の顔に笑みがこぼれた。寝ているのに笑っているとはどういうことだと思ったが、それはいい。離れてくれ!


「優斗くんありがとうございます、えへへ私今最高に幸せです、もう思い残すことはありません」


 幸せならよかった、だが俺は良くない。さあそろそろ抱っこをやめてもらおうか。


「優斗くん胸を揉んでいいですよ」


 少しだけ莉奈の俺に対する締め付けが弱くなったが、問題はそこではない。胸をもんでいいですよと言われたことだ。莉奈、幸せになったんならもう夢は終わりでいいだろ、もう現実の俺を巻き込むのはやめてくれ。


「優斗くん本当に胸をもむんですか? やめてください」


 言っといて嫌なのかよ。というか夢の中の俺はいったい何をやっているんだ。


「優斗くん、やっぱり駄目です。でも頭はなでてほしいです」


 わがままなやつだな。いやまあ、胸を揉むのはいけないとは思うが。


「よしよし」


 俺は莉奈の頭をそっとなでる。今この状況を打破する一番の方法は莉奈を満足させることだ。莉奈が満足すれば夢は終わり、俺は救われる。さあ、満足してくれ!


「ありがとう優斗さん、ありがとうございます」


 気持ちよかったようだ。夢の中の俺と現実の俺のどっちに感謝してんのかはわからないが、とにかく莉奈は感謝をした。とにかくこれで満足してくれるんならいいんだが。






「止まったか?」


 莉奈の寝言が止み、莉奈の締め付けがほぼなくなる。それを感じ、莉奈の腕をゆっくりと離す。


「優斗君捨てないでください、私が嫌いになったんなら謝りますから。あの体操着を一日だけ盗んだことは謝りますし、こんな根暗なのも謝りますからあ」


 莉奈がわめき始めた、これは本当に寝言なのかと疑いたくなる。もしかして実は起きていて、寝相に見せかけて襲おうとしているんじゃないかという可能性がある。普通に莉奈ならあり得そうなことだ。


まあそれは置いといても気になることがある、あの時、体操着無くなったのが莉奈のせいであるということだ。まだストーカは置いといてもこれって犯罪じゃないのか? 普通に窃盗罪に当たる気がする。


「胸をもんでいいですから」


 莉奈、それしかないのか、お前には。男である俺が言えることじゃないかもしれないが女の魅力はそこだけじゃないんだ。お前にはいいところが他にもあるだろ。それに確実に謝罪の方法としては間違っている。


「ほら」


 優斗の腕が莉奈によって莉奈の胸のところに運ばれていく。


 やめてほしい、だが俺は不思議と腕をほどくことができない。そりゃあそうだ、男だったら一度は味わってみたい。そしてようやく力を入れ、抵抗した時にはもう手遅れだった。


「ちょっおい」


俺は無駄だと分かりながら叫ぶ。もう俺の手は梨奈の手に触れてしまっているのだ。


「これで、許してくれますか?」


 俺は一瞬頭で何も考えられなかくなった。俺は莉奈の胸を触ってしまったのだ。正直言って柔らかかったし、触り心地もよかった。しかし、俺は変態などではない。それにこれは自分の意思ではなく、莉奈が勝手にやったことである。俺はかかわってなどはいない。


 しかし長すぎないか? あと何秒俺は莉奈の胸をもまなければならないんだ。俺は別に莉奈の胸を揉みたい訳でも全然ない。むしろそろそろうんざりしてきた。


 この触ってしまっている罪悪感と、胸を触るという特殊なことをしていることで起こるドキドキ感、さらに俺の羞恥心が重なってもう訳がわからなくなってしまう。


「いい加減やめろ」


 俺はついに怒鳴った。また、莉奈にこんなにすきにさせられるわけにはいかない。俺にもちゃんと断る権利があるはずだ。気持ちいい眠りを妨げるのは忍びないが、さすがにもうたたき起こしても許されるであろう。



「ふえ、お、おはようございます」


 莉奈がようやく起き、俺の手を離した。そしてすかさず俺も手を引き戻して俺のパジャマで軽く俺の手をふく。梨奈の胸の感覚を残してはならないという一心で。


「お前寝相ひどいぞ」


 そして俺はすかさず言う。いつもこんな寝相なのかと聞きたいところだ。こんな寝相ならどんな手段を使っても別の部屋で寝てもらうべきだった。


「そ、そうですか?」


 莉奈は否定する。気づいてないのかそれとも気づいていないふりをしているのか。


「ああ、俺の布団に忍び込んできやがって」

「え? あ、たしかに」


 当然ここは俺の布団の真上だ、つまり俺と莉奈は俺の布団の上にいる。それを見て莉奈もこの状況にようやく気づいたようだ。


「重かったんだからな、俺に抱きついてきやがって」

「ごめんなさい、私そんなつもりなくて、とにかくごめんなさい」


 莉奈はその場で土下座をしてくる。まいったな、そんなことをされては責めにくい。謝るのはタダの精神を感じる。だが、莉奈の顔を見てみると、本当にすまないと思っていそうだ。これはなあなあで謝っているわけではなさそうだ。


「まあそれはいい」


 良くはないけどな。


「俺が言いたいことは体操服のことだ、一年の時に体操服が無くなったのってお前のせいってことだよな」


 俺は体操服のことについて言及する。俺が聞きたいのはまさにそのことなのだ。


「えーとどういうことですか?」


 まあそりゃ莉奈にとっては夢の中の出来事だろうしな。なんで俺にバレているのか分からないのだろう。


「お前さっき言ってたじゃねえか」

「もしかして私寝言を言ってました?」

「ああ、たくさんな」


 莉奈は自分が寝言を言っていたということに気づいたらしい。ということは夢の中のことを覚えているのだろうか、あの聴くからにやばそうな夢のことを。だが、そんなことはどうでもいい。


「ごめんなさい、一日後に返したから許してください。それに魔が差したのはあの時だけなんで」

「どうしよっかな」


 たしかに一日後に洗濯されて俺の机の上に置いてあった。だが、それは俺が先生に言って犯人探しになったからだ。実際あの日は帰宅時間が十五分遅くなった。俺が思うに莉奈が思ったよりも大事になったから返したんだと思う。だが俺は別にそのことは今は気にはしていない、莉奈が変態だということは知っている。


 しかし、梨奈の口から真実を話してほしい。なぜあんなことをしたのか。まあどうせ想像通りだろうが。


「ごめんなさい」

「まあそれはいいけど、なんであんなことをしたんだ?」


 莉奈は素直に謝った。だが俺が求めているのは謝罪ではない、説明なのだ。


「それは…優斗くんが大好きでそれで何か優斗くんの何かが欲しくてというか優斗くんのにおいがかぎたくて」

「変態だな」

「うう、ごめんなさい」

「まあいいよ、もう莉奈が変態ってこと知ってるし」


 別に今更莉奈の評価が変わるわけがない。そっち方面では今評価ゼロだからな。まあ普通にきもいけど。


「ありがとうございます。というか、今何時ですか?」


 莉奈が時間を聞いてきた。確かに今は何時何だろう。周りの暗さから考えたらまだ起きてもいい時間ではないだろう。


「わからん」

「えっと」


 莉奈は近くに置いてあった莉奈のスマホを手で引き寄せて時間を見る。


「四時です!」

「まだ四時なのか」

「すみません」


 莉奈はすぐに謝る。俺を起こしたからだろう。しかしまだ起きるには早すぎるな。


「もう一度寝るか」

「ええ、寝ましょう」

「そうだな、だが離れて寝よう」

「なんでですか? もしかして夢で優斗くんを愛でまくったからですか?」


 やっぱり夢の内容は覚えていたのか。


「もしかしなくてもそうだわ」

「悲しいです」

「体操服をとったくせに」

「そのことは言わないでください」


 莉奈の痛いところをついたようだ。もう一度言ってやろうかな?


「まあおやすみ」

「おやすみなさい」


 そして俺たちは離れた布団にもぐって眠った。

梨奈の寝相半端ないですね笑

優斗が可哀想です。

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