第一四話 恋バナ2
「私は入学式の日に優斗くんを見て一目ぼれをしてしまったんです」
「入学式の日からだったのか」
最初からだったのか。しかし、入学式の時の俺に一目ぼれする要素はないと思う。実際俺は校長先生の話の時に軽く寝てしまったし、真面目に先生方の話を聞いていたかと言われると嘘になってしまう。顔もそこまでは整ってはないと思うしな。
「はい、そうです。座っている顔がかっこよかったから」
「そんな理由だったのか」
一目惚れ中の一目惚れだった。そんな漫画みたいなことがあるのか。まあそれを言えば告白された時点で漫画みたいなではあ出来事ではあるけれども。
「大した理由ですよ。それで好きになってとりあえず家がどこなのかを知ろうと家まで優斗くんを尾行しましたね」
「おい、ちょっと待ていくつか聞きたいことがあるんだが」
「はい何でしょう」
「お前ストーカーじゃないって言ってたよな」
「はい、そうですけど」
「ストーカーしてんじゃねえか」
それを言った瞬間莉奈は軽くしまったと言いたげな顔をする。莉奈は変態なだけでなく犯罪者だったのか。
「大丈夫ですよ、尾行したのはその時だけなんで、それに優斗くんの家に忍び込んだりとかしてませんし」
それは普通によかった。
「というか、同じクラスだっただろ俺ら」
「はい」
「なんで、尾行する勇気はあるのに、声をかけなかったんだ」
犯罪行為するぐらいだったら、俺に話しかけてくれてたらいいのに。というか今の莉奈の積極的な感じだったら話しかけれてた気がするんだけど。
また数秒の間ができた。忘れてたこの話は莉奈にとって少しセンシティブな話題だったことを。
「それは、恥ずかしかったからですよ。もし話しかけてキモとか思われたらいやですもん」
「俺にとっては尾行するほうが勇気いると思うけどな」
しかし、莉奈がキモとか思われたらいやなんて思うかな? まあそんなものは人それぞれだとは思うけど、俺的にはそんな人間だとはどうしても思えない。
「でも、何回か話しかけましたもん、何回かだけ」
「あ、もしかしてあれ? あの家庭科の時のやつ?」
一年の時に家庭科の授業で、莉奈にハサミを貸してくれませんか的なことを言われたことがたしかあった。
「うん」
「たしか莉奈ハサミを持ってきてなかったよな」
「そうです、あの日は珍しく忘れちゃって」
「なんで俺から借りるんだろうとか思っていたけど、そういうことか」
あの時は別に俺から借りなくても、先生から借りることもできたし、女子なんだから女子から借りたらいいのにと思ってた。
「はい、勇気出しました」
「俺としたらあの時は少しだけ興奮したよ。まさか女子が俺のところにはさみを借りに来るとか思ってなかったもん」
てかあの時莉奈の顔が少しだけ赤くなっていたのに気づかなかったのか。俺よ。
「優斗くんって異性への耐性がないですよね」
「まあな、妹がいるとはいえ、同年代の女子にどう接したらいいのかいまだにわからん」
俺はあの子が引っ越してから、女子と話す機会がなくなったからな。
「私に対しては?」
「まだ少しだけわからん」
「これだけ一緒にいてですか?」
「まだ二日しか一緒にいないからな」
色々なイベントがあったが、日としては二日だけだ。そこまで長くはない。
「でも私もう二回この家に来ましたし」
「でもなあ、まだ異性として話せてるのかわからないんだよな」
「だったらさっきの一緒にお風呂作戦は成功かもしれないですね」
「あれ作戦だったのか?」
作戦だったらすごい大胆な、自分の身を犠牲にして俺の興奮を得るという戦術だな。ただ、俺はまだ莉奈の裸が脳内に残っているし、成功していると思う。しかし、やられた方は大変だ。さっきはあんなことを言ったが、俺はまだ莉奈のことを真っ直ぐ見ることが出来ない。本当に困る。
「まあ違いますけど」
「違うんかい」
ということは莉奈が風呂入りたくて入っただけということか。
「まあでもとりあえず胸を見せることで私への好感度アップを狙っていたのは認めますけど」
「そうか」
「莉奈?」
俺は莉奈の名前を呼ぶ、しばらく莉奈が声を発していなかったからだ。少しだけ待ってみる。
「莉奈?」
また数秒待ったが、やはり莉奈の返事がない、妙だと思い、莉奈のほうに顔を向ける。莉奈は目をつぶり穏やかな顔をして布団によこだわっている。それを見ると、どうやら莉奈は寝ているようだ。それも爆睡だ。電気はまだ消してはいなかったのに、よく寝れるな。
まあ無理もないであろう、彼氏の家の家族と会話をして、そのままお泊りすることになって緊張もしただろうしな。今日はいろいろなことがあった。まあ半分ぐらい莉奈のせいな気がするが。まあゆっくり寝かしてやろう。俺も疲れた。
そして俺は電気を消す。暗闇の中隣を見ると相変わらず莉奈は爆睡している。寝ている莉奈の姿は見えないので、電気をつけてた時にせっかくだからもう少しだけ寝顔を拝見してた方が良かったかもしれないと、ふと思った。だが、それ以上に眠い。今日は色々あった。俺はそのまま沈む意識に身を任せた。




