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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第143話 莉奈の作戦

 彰人と水樹ちゃんを追う事暫く。

 段々と二人は仲良くなっていくが、やはり異性同士のムーブが起こらない。


 まだまだ兄妹の感じが醸し出されている。


「そろそろ私の出番ですね」


 莉奈はそうにやにやとしながら言う。

 莉奈のやつ、彰人と水樹ちゃんくっつけ作戦を実行しようとしているな。


「俺たちがストーカーしてることばれるなよ」

「え? 部分的にばらしますよ」

「はあ?」


 小声で言う。

 だが、俺の中のニュアンスとしては叫びたいくらいだった。


「別にばれてもいいんですよ。だって、そもそも前提からしておかしかったですから」

「えっと、どういう事だ?」

「だって、映画のチケットならわかりますけど、水族館のチケットを事前に用意する人なんてほとんどいません。ここは予約客殺到みたいな場所じゃないですし」

「でも、事前予約とかあるじゃないか」

「ありますよ。でも、優斗くんは上原さんからお金を要求してませんよね」

「そうだな」

「おかしくないですか? こうなることを水樹さんは予測してたんじゃないですか? だから今出てきても怪しくないわけですよ」


 確かに道理は通っている。通ってはいるが、しかし。


「それはおかしくないか?」

「どうしてですか?」

「俺たちが加わったらデートじゃなくなる」

「ふっふっふ」


 莉奈が楽しそうに笑う。


「私には考えがあるのですよ」


 そして莉奈は飛び出していく。


 何を考えているんだか、

 変なことはしないで欲しい。

 俺たちのせいで水族館デートが台無しになるとか絶対に嫌だから。


「すみません、そこのカップルさん。トイレの場所を教えてくれませんか?」


 ちょ、方法ってそれ?

 莉奈は声色を変えてるが、これでばれない物なのか?


 正体をばらすというのはこういう事か。しかし、ばれたらすべて大なしなんだが、

 


「トイレはあっちですよ。それと俺たちはカップルじゃなくて兄妹です」


 一瞬でカップル否定されてるじゃん。


「でもいい雰囲気だから、カップルさんなんじゃないかと思いましたよ。もしかして漫画とかによくありがちな義兄妹みたいな感じですか?」

「まあ、そんな感じだ」

「なら、くっつきますね。それに妹さんの方も、お兄さんのこと好きそうですし。じゃあ私はトイレに行ってきますよ」

「え?」


 彰人は水樹ちゃんの方を見る。すると、水樹ちゃんは急に照れた感じを見せてくれた。

 なんかツッコみところしかなかったが、作戦成功なのか?


 普通ばれると思うが。

 明らかに、上手く行っていそうだ。


「水樹、お前は俺の事を」

「……」


 なんかいい雰囲気になっているし。

 なんで莉奈のあの雑な誘導で上手く行くんだよ。

 しかもさっきの莉奈、なんかアドバイスくれるおばちゃんみたいな感じで言ってたけど、見た目は地雷系そのままだ。

 そんな人に言われて響くとも思えないし、なぜこの空気になるのか分からない。


「ただいまです、優斗くん」


 莉奈が戻ってきた。

 しかし、もうわからない事ばかりだ。

 これは俺がおかしいのだろうか。それとも……この世界がおかしいのだろうか。


「もうわかんねえ」


 俺は地面に手を置き、深いため息をついた。


 だが、結局二人の仲は良い感じになって行っている。

 莉奈の行動が功を奏したのだろう。

 俺には全く理屈は分からないが。


「兄さん、私はずっと言えなかったけど、私は兄さんの事が好きです。兄としてじゃなく、一人の男として」


 そしてついに、告白をしていた。

 俺は問いうとまだよく話について行けてすらいないのに。


 まあでも、上手く行っている分にはいい。

 別に莉奈のやり方が間違っているなんて言いたくないし、結果上手く行っているのだから。

 批判するのは、莉奈のやり方が上手く行かないで二人がぎくしゃくする時だけでいい。

 さて、二人はどうなっているのだろうか。


 じっと見ていると、どうやら彰人は悩んでいるらしい。

 そりゃ当然の話か。

 彰人からしたら妹としか思っていなかった人に告白されたのだから。

 正直この答えが気になる。


「俺たちは兄妹だ」


 その入りはまずそうだな。まずはありがとうくらいに確定演出だ。


 というか、人の告白現場を除いていること自体が、まずいのではないか、そんなふうに思ってしまう。


「だからごめん」


 その瞬間、水樹さんの顔が曇る。涙が出そうになる。


「でも、今は恋愛対象には見れないけど俺はお前の事を一人の女として見られるように努力するから、その時は俺から告白する」

「分かった。じゃあ、デートとか重ねて私の事を女として兄さんが、いや彰人君が見られるように努力するから」

「ああ、約束だ」


 とりあえず話は上手くまとまったようだ。

 とりあえず良かった。


「私のおかげですよ」


 莉奈がじっと俺の方を見る。


「そうだな莉奈のおかげだよ。ありがとう」


 俺は莉奈に感謝した。

 その時、こちらに向かってくる人影があった。

 そう、まさに水樹ちゃんだ。

 もしかしてばれ――


「前川さんありがとうございます」


 開口一番に感謝された。


「特に松崎さんには感謝です。私の背中を押してもらって」

「いつから気づいてたんだ?」

「結構最初の方です。サメあたりかな」


 本当に最初じゃねえか。


「ちょっと待ってくれ」


 彰人が乗り込んでくる。


「これはいったいどういう事だ?」

「え?」


 水樹ちゃんが彰人の方をじっと見る。


「まさか最初から気づいてなかったの?」

「え? は?」


 その時莉奈がマスクと眼鏡をはずす。

 それと同時に俺も変装を解く。


「そういう事かよ」


 彰人がその場でうなだれる。


「まさか私の方が先に気づくとは」

「本当だよ」

「本当ですね」

「ああ、くそっ」


 彰人はそう吐き捨てるように言った。


「それにしても前川さんには少し話したいですけどね」

「なにの話だ」

「松崎さんにばらしたことですよ」

「それに関しては、莉奈が同タイミングで水族館に誘ってきたから……」


 そして俺は色々な訳を話す。すると納得したように「あー」と水樹ちゃんが言う。


「それなら仕方ないです」


 良かった。

 納得してくれた。


「結果的にいい流れになりましたし。兄さんに告白する事も出来ましたから」


 逆に言えば、成功してなかったら怒られてたんだろうなと、少し肌寒さを感じた。


「お、彰人もいるじゃないか」


 そこに向かってきたのは寛人と理央コンビだ。

 なんてことだ。示し合わせてもないのに、ここに六人そろった。


「実はあいつらにも事情は軽く話してあるんだ。すまん」

「情報漏洩の達人ですね」


 水樹ちゃんにジト目で言われる。

 ああ、申し訳ない。


「すまん」とだけ謝ると、彼女は微笑んだ。

 それを見て俺たちもまた笑うのであった。

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