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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第132話 莉奈の歌唱

 そして早速交代の時間になった。

 俺たちは別のところに向かうことになった。

 勿論寛人も一緒だ。


「結局最後の最期私達だけ歌えなかったのがもやもやします」


 そう、莉奈が愚痴る。

 実際、俺たち三人だけ歌えなかったのだ。

 こういうところがこのやり方の欠点だなと思う。


「おおー、お前らも来たか」


 そこには、彰人もいた。

 そして、理央も。


「寛人良かったな」

「ああ」


 そして早速俺たちは座る。早速理央が歌うみたいだ。


「大村さんの歌聞くの初めてですね」

「そうだな」


 そして、理央が歌いだす。

 理央も中々の歌のうまさだ。余裕で90点は超えそうな上手さはある。

 だが、それでも雪花さんにはかなわない。つまり、その上位に入る

 莉奈にはかなわないという事だ。

 添えにしても、みんなレベルが高いな。


 段々と俺が歌う時のハードルが上がって行くな。

 まあ、その場合も別に俺が上手くなくても怒られるわけはないからな。実際、俺よりも歌が下手な人も沢山いたわけだし。


「歌どうだった?」


 理央が俺の隣に座り、感想を聞いてくる。


「ああ、良かったよ」

「優斗君?」

「いいだろこれくらい」

「さっきも言いましたけど、私が歌うときには全力でほめてくださいね」

「あまりハードルを上げないでくれよ」


 むしろ、逆に上手く褒められなさそうだ。

 そもそも前提として莉奈の歌を褒めないという選択肢を取る未来が無いのだから。


「寛人は?」


 俺は寛人に訊く。寛人の前に立ち、小声で訊いた。


「本当に良かった」


 寛人は理央に聞こえる程度の音量で言った。


「それはありがとう」


 理央が返事をする。



 寛人は理央の事が気になってるくらいだと思っていたが、いつの間にここまで恋心が芽生えてたのか。

 もしかしたら俺がいない間に、理央と何かあったのかもしれない。


「莉奈」

「なんですか?」


「寛人と理央って何かあったか知ってるか?」

「知らないです」


 やはりか。

 となると当人に聞くしかない。

 しかし、寛人が何かあったのなら。後夜祭の時に何か言ってきそうな感じがするのだが。


 そして寛人の番になった。


「緊張するな」


 寛人はそう呟く。

 緊張しているのだろうか。寛人のくせに。

 寛人はあまりこういう時に緊張しないタイプだと思っていたが。


 やはり理央がいるからか。


「大貫さん頑張って来て下さい」


 そう、莉奈が言う。すると、寛人はぎゅっと、マイクを握った。


 そして、寛人は歌い始めた。



 さて、俺が思った感想を言おう。

 寛人。正直言うとかなり歌が下手だった。

 ひょっとして、寛人って俺より下手なのか。


 思えば寛人とはカラオケに行ったことが無かった。


 ……さて、理央はどう見ているか。


 あれ、思ったより真面目聞いてるな。

 まあ、彼女に関しては全員に対してそう言う態度なのだから、別に特別な感情は無いのかもしれないけど。


「ふう」


 寛人が席に座る。


「お疲れ様です」


 莉奈がそう言って寛人を労った。

 そこに対しての理央のコメントは無かった。それを受けて寛人は少し寂しそうだった。


 そしてついに、莉奈の歌う番が来た。

 莉奈は「よーし」と言って唸る。


 莉奈は気合満点だ。何しろ、莉奈はこの日のために歌が上手かったと言っても過言ではないからな。

 俺は莉奈の歌を聞いたことがある。だが、彰人と、寛人と、理央さんは莉奈の歌のうまさは知らない。

 その歌でどれだけ場を沸かせられるのだろうか。


 莉奈はマイクを掴み歌いだす。

 流石に時間がたってきたからか、スマホをいじる人たちも増えてきていた。だが、莉奈が一声歌いだすと、みんなが一斉に莉奈の方を向いた。

 これを見て俺は思った。莉奈が場を支配していると。


 莉奈の歌声は見事だ。

 やはり、雪花さんもうまかったが、莉奈に敵うほどではない。


 そして、莉奈が歌い終わると、一気に拍手が起きる。

 理央の時とかも、拍手はまばらにあったが、ここまでの物では無かった。


「うおおお、すげえ」

「松崎さんすごかったんだね」

「プロかよ」


 様々な声が一気に聞こえてくる。

 莉奈の事は俺の事のように嬉しい。なんだか俺までも照れくさくなった。


「ありがとうございます」


 莉奈はそう言って頭を下げ、席に座った。


 そして莉奈はただ、黙って俺に抱き着いてきた。


「へ?」


 もう慣れっこではあるのだが、こんな個室のみんながいる空間で抱き着かれるとは思っていなかった。

 教室とは勝手が違うのだ。


 莉奈は元々陰寄りの人間だ。コミュ力はあるが、それでも、クラスの片隅でひっそりと過ごしていたような女なのだ。

 そんな莉奈が、急に褒められたらどうなるかなんて、訊かれなくともわかる事だ。


 莉奈は、照れているのだろう。

 実際に莉奈の顔までも赤くなっている。


 そして莉奈が俺の肩を叩いた。


「ドリンクバー、一緒に入れに行きませんか?」


 莉奈のその言葉に俺はただ頷いた。

 体のいい避難だろう。


「緊張しました」


 そう、莉奈はコーラをくびっと飲み干しながら言った。


「優斗君と二人っきりの方が楽しい気がします。だってあんなに、注目されるのは初めてですし、なんとなく気分は良く無かったですし」

「そうか」


 莉奈はきっと、褒められたら嬉しくなると思っていたが、それに判じて、恥ずかしい党気持ちの方が大きくなってしまったのだろう。


「やっぱり私は、優斗君だけの莉奈でありたいですから、不順でした」

「不純?」

「ええ。だって、優斗君以外に歌を聞かせようという行為が、優斗君の彼女失敗したかなと」

「それを言ったら俺も歌えねえじゃねえか」

「確かに。なら、歌わないでくれますか?」

「は、え?」

「冗談ですよ。勿論歌うなとは言いませんよ。でも、このカラオケ自体。楽しい一方でしんどい一面もありますし」

「そりゃ、あるだろ。知らない人。……クラスメイトではあるが、そう言った人たちと話すのは緊張すr者だからな」


 実際、俺も少し疲れている。雪花さんとも喋ったし、他の知らなかった人たちとも喋っている。

 気分が悪いと言ってしまったら違う。楽しいのは楽しいのだ。

 だが、実際、莉奈の言う通り、あまり知らない人が騒いでるのを見ると、少しだけ疲れてしまうのだ。


「優斗君、あの言葉言ってください」

「あの言葉?」

「ええ、ほら、パーティで気になった子に言う言葉です」


 実質答えだな。


「こんなつまらないカラオケ抜け出して、俺と二人で歌わないか?」

「ええ。ぜひ。とは言いたいですけど、焼き肉もあるから抜け出ないのですけど」

「おい!」


 そう俺が言うと莉奈はふふと笑った。


「そろそろ戻らないと、不埒な事を二人でしていると言われますね。でも、最後に一つだけ」


 そう言って莉奈は俺に抱き着いてきた。


 抱き着いてきた。

 かなり強い力で。


 そして、十秒程度抱き着いた後、莉奈は「優斗君成分回収完了です」と言って、俺から離れた。

 カラオケルームのあれだけでは足りなかったのかよ。


「優斗君、大好きです」


 そう言って俺の手を掴んできて、カラオケルームに戻った。

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