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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第百二十八話 後夜祭

 楽しい文化祭もいつかは終わりを告げる。

 二日目は一日目と比べ物にならないくらいの速さで過ぎていき。

 あっという間に文化祭が終わった。


 正直疲れがどっと来る。

 体力がぎりぎりだ。

 明日はしっかりと休みたい。


 だが、まだ文化祭自体は終わりではない。

 これからまだ(ひと)イベントがある。

 そう、後夜祭だ。


 かたずけが終わり、校庭に行くと、すでに準備が整っていた。


 中央にはキャンプファイヤーが設置してあり、もう始まっている感じがしている。


 後夜祭とは言っても全員強制参加ではない。

 先に帰った人もちらほらといた。


 俺も正直面倒な気持ちもあったが、莉奈に「一緒に後夜祭楽しみましょう」と言われたら仕方がない。


「今日これを楽しみにしてました。キャンプファイヤーの前で男女で手をつなぐのってロマンがありますし」


 確かにそうだ。ロマンがある。


「こうやって周りにリア充感を見せつけましょう」

「おい」


 結局それが目的かよ。


「文化祭って結局恋人が多い方が楽しいんですよ。私だって、去年は回らないで、教室で小説を読んでいたんですからね」

「そう言えばそんなことも」


 部屋に一人小説を読んでいる人がいたはずだ。

 その時は回らなくて大丈夫かと思ったけど、あれ莉奈だったのか。

 


「私は今日、文化祭を恋人と回るというTHE青春イベントをこなして、本当に去年までとは全然違う楽しい文化祭になって……本当に優斗君愛してます」

「おい、なんでいきなりそこへと飛んだ」

「だって、楽しい文化祭にしてくれた優斗君に本当に感謝していますという枕詞での、愛してますですから」

「お、おう」


 莉奈のテンションが暴走している。

 莉奈にとって、去年は暗い気持ちで過ごしていたのだ。だからこそ今年は楽しかったのだろう。

 昨年の後悔を今取り戻すためにテンションが高いのだろう。

 多分去年は後夜祭も帰ってたのだろうし。



「まあでも、今の私には恋人がいない人が可愛そうに思えますよ。……そう思ったら私よく勇気を振り絞りましたって、過去の私をほめたいです」

「それはそうだな。過去のお前に感謝だ」

「あと、綾ちゃんに会いに行ったことを家まで謝罪しに来てくれた優斗君にもですね」

「それは言うなよ」


 あれは過去に葬り去りたい。

 浮気するぞと思って会った訳ではないが、実際莉奈にいらぬ勘違いを起こさせ、悲しませた。

 しかも、莉奈の気持ち的に過去に一悶着あった友達と自分の彼氏が会ったとなれば、普通に考えて浮気を疑う。

 それを言うなよとは言ったが、仮に莉奈に叱責されたとしても俺に反論するつもりはない。


「結局あれは私の過去が気になっただけですよね」

「当たり前だ」

「浮気じゃないんですよね」

「しつこい」

「ふふ」


 莉奈が笑った。

 そしてその顔が炎に照らされる。

 暗い夜空の元、火で照らされた莉奈の顔は、とても美人だった。


「莉奈、可愛いな」

「え?」

「いつも言ってるだろ。……何をいまさら」

「でも、今日は少し違いますから」


 そうだ。今の俺たちはまだ衣装を着ているのだ。

 メイド服と、執事服。

 互いにいつもと違う服装だ。


「そう言えば打ち上げっていつでしたっけ?」


 莉奈が話を変えるように言う。


「日曜日にやるって行ってなかったか? 日曜日にカラオケ行ってから焼肉食べ放題って」


 しかも、結構繁盛したから、打ち上げ代の中から五万円程度は売り上げから出せる。それで多少なり安くなる。とはいえ、クラスの人数の三十七人分を入れなきゃならないから実際一人当たり千二百円ほど安くなるだけだろうけど。


「そうでしたね。……今から楽しみです」

「俺も楽しみだが、少しだけ懸念点もあるな」

「なんですか?」

「そりゃ、お前の歌が他の人にも聞かれるってことだが」

「あ、嫉妬ですか?」

「違うと言いたいところだが、実はそうだな。ただのやばいイチャイチャ厨かと思ったら歌が上手いという展開が待っているからな」

「それってどういうことですか?」


 莉奈の顔が険しくなる。

 俺はただ、冗談を言っただけなんだが。


「冗談だよ。その可愛い顔も台無しだぞ」

「自分によってます?」

「は?」

「漫画みたいな口説き文句はやめてくださいよ」

「莉奈ってそう言うやつが好きじゃないのか?」

「そうじゃないですよ。もう……」


 そう言った莉奈は軽いため息をついた。


「それで、そろそろしますか?」

「何を?」


 まさかいかがわしい奴じゃないよな?


「フォークダンスみたいなやつです」

「おい、しないという話じゃねえのか?」

「しないとは言ってないじゃないですか。やりましょ」


 そう言って俺の手を取る莉奈。


「さあ、勝手に踊っちゃいましょう」

「お前、フォークダンスの踊り方なんて知ってるのか?

「知らないです」


 だろうな。


 はあ、こうなったら仕方がない。

 俺はとりあえず見よう見まねの雑な踊りをした。

 莉奈がきちんと合わせてくれたから良かった。

 そのおかげでひどいが、形には、なっていた。


「ん?」


 めちゃくちゃみられている。

 いや、そりゃそうか。そうなるか。


「はあ」


 軽くため息をつく。


「いいじゃないですか。この前も言ってませんでした? 見られたいとかなんとか」

「それは莉奈のテンションに合わせただけだ」


実際そう言う気持ちがあったことは否定しないけど。


「ふふ、もっといい言い訳を用意してくださいよ」

「言い訳じゃねえ。楽しいのはそうだが、恥ずかしいんだよ」

「恥ずかしいと思えるのっていいですよ。だって、周りから裏山がられてるってことじゃないですか」

「まあそうだけどよ」


 実際は、好奇な目で見てる可能性もあるんだがな。

 そう。こいつら恥ずかしいことしてるなといった目だ。

 まあ、でもいいか。

 それは俺の考え過ぎだろう。もう少し莉奈とのイチャイチャを楽しもう。



そんな時、みんなに料理が配られた。

軽い肉だ。

これは売上とかじゃなく、学校側から出ている。

そこまで本格的に、やるわけでは無いが、軽いパーティみたいなものだ。


百均皿に乗せ、割りばしで食べる。

うん、中々美味しいな。


しっかりと肉に味がついている。

これ自体が打ち上げでもいいくらいだ。


しかも、上を見上げたら星がキラキラとしている。

全部の星が輝いていて、素晴らしい。キャンプファイヤーの雰囲気が星のきれいさを増している。

そしてどんどんソーセージ、マシュマロ、ポテチなどなどが配られる。


「これだったら去年から後夜祭参加しててもよかったかもしれませんね」

「去年は莉奈がいなかっただろ。去年告白してくれてたらこうはならなかったのにな」

「ふふ、まあそうですね。去年の私にもっとストーカー紛れの事じゃなく、堂々と告白しておけと言いたいです」

「ストーカー行為か。最近そんな話はしてなかったな。……そういや莉奈、去年の文化祭何をしていた?」

「え?」

「よく考えたら莉奈が文化祭で俺に何もしてないわけがない」

「いや、それは無いですよ。……何もしてません。小説を読んでただけって言ってたじゃないですか」


それが信用できない。よく考えたら莉奈がそれだけに甘んじてる訳がない。

そもそも俺のことを好きになったのも去年の文化祭よりもだいぶ前のはずだ。


「正直に言ってくれ。怒らないから」

「それ、怒るってことじゃないですか」

「ということは、やましいことでもあるんだな」

「やましいことなんてないですよ。……ただ、着いていっただけです」

「してるじゃねえか!!」


ストーカー行為だ。


「でもでも、危害は加えませんでしたから。あの時はスリル満点でした、だってばれるリスクを負っていましたから」

「ん、もしかして莉奈がクラスで小説を読み漁ってたように見えたのって……」


嫌な予感がする。


「カモフラージュです」


やっぱりか。


「小説を読みながら優斗くんが部屋を出るタイミングを伺ってたんです」


だと思った。


「ばれてしまっては仕方がないですね。……ここで記憶を消させてもらいます」


そう言った莉奈は俺に抱き着く。


「おい、何をするんだ」

「そりゃ、おっぱいじゃないですか。こすりつけて、記憶を上書きしようと」

「無理だろ。……それに俺は今はもうお前の胸なんかで動揺しない」


うそ、結構してる。ただ、生胸を温泉で見てるし、胸も触ったことがあるのに、今更そんなもので、顔を赤らめるほど興奮したりなんてしない。


「まあ知ってますけど。でも見てください、周りの人たち私たちを見てます」


周りを見ると、みんな俺と莉奈を見てる。


「しかも先程おっぱいって言いましたよね?」


あ、察し。こいつ、あえて下ネタを言ったのか?

くそ、これは非常にまずい。俺たちはイチャイチャカップルだけじゃなく、下ネタカップルになってしまう。

これは何かしらに引っかかるな。怒られるかもしれない。


向こうで美里がちょっと怪訝な顔をしている。

あ、怒られる。


「ねえ、どうしたらいんだ?」

「さあ、どうでしょう」


こいつ、いつの間にウザいキャラになってるんだよ。こっちが困るんだよ、そう言うのは。


「とりあえず一つだけ言おう。……俺たちは絶対に処される」

「ですね」


そして、あっという間に距離を詰めてきた美里は一言。


「だから、イチャイチャしないの」


とだけ言った。

それからすぐに距離を再びとったものだからびっくりとした。

てっきりまた俺たちを攻めてくるものだとばかり思っていたのだから、意外だ。


「もっと責められてもよかったですのに」

「お前はいつからマゾにでもなったんだよ」


はあ、都溜息一つ。


「とりあえず、持っといちゃいちゃをしましょう」

「いや、もういいだろ」


流石にこれ以上やったら怒られるに決まっている。


「な、莉奈。とりあえず今日はここまでな」

「はい、分かりました」


莉奈のやつ。本当に分かってるのか?


「でも、最後に一つだけ。このキャンプファイヤーの前でキスしたカップルは結ばれるっていう伝説があるのですよ」

「それ嘘だろ」


そんな話聞いたことがない。


「ひどいです。私を疑うんですか?」

「今の莉奈に信ぴょう性なんて一切ないだろ」


むしろあると思ってる方がびっくりだ。


「俺は、莉奈のことが好きだ。だから俺は……その嘘には乗らないし、キスはしない」

「信用してくれない優斗君なんて……」

「莉奈、変なテンションを出すのはやめろよ?」

「大好きです」


そう言って莉奈は俺の顔を掴みに来る。


「何するんだよ」

「見たらわかるじゃないですか。……無理やりのキスですよ」

「馬鹿なことはよせよ。おい!」


今度こそイチャイチャ警察に捕まる。


「本当にお前らはさ」


そんな俺たちの前に彰人が来た。


「見せつけんのはやめろよ。とりあえず優斗は俺が貰ってくから」


そう言って彰人は俺の手を取る。


「放せよと言いたいところだけど、今回は助かった。いくら何でもこの場でのキスはやり過ぎだ」

「そう思える脳が会ってよかったよ」

「まあ、俺は基本巻き込まれてるだけだからな」


莉奈の我儘に。


「でも最近のお前は、自分からまきこまれに行っている感じはするけどな」

「そうか?」

「というか、上原さん何をしてるのですか?」

「いい機会だ。こんなつまらないパーティ抜け出して、面白いところに行こうぜ」

「それ、絶対言いたいだけだろ」


憧れてるだけなのだろうと俺は推察する。


「それで、どこに連れて行くんだよ」


そもそも俺たちは執事、メイド服とかのままだ。


「いいだろそう言うのはさ、着いてからのお楽しみさ」

「はあ」


そうして少々の時間が経ち、連れ去られた場所が判明した。


「ここは、病院?」


しかも、彰人の姉の美幸は入院してると言っていた。ということはここに来た目的なんて一つしかないな。

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