第126 話 妹
翌日学校に来ると、すでに準備を開始してる彰人がいた。
「あ、優斗」
「おう、戻ったんだな」
「ああ、昨日休んでたからな、必死に頑張るよ」
「おう」
彰人が戻ってきたらいよいよフルメンバーになるはずだ。
「今日は特別な客を読んでるから楽しみにしてくれ」
特別な客、はて、誰だろうか。
「そう言えばお前の姉はもう大丈夫なのか?」
「ああ、命に別状もないし、もう目を覚ましたから大丈夫だ。……まあ、今日は残念ながら来れないんだけどな」
「そうか」
彰人の姉は話でしか聞いたことがない。
今日会えるかと思ったのに、残念だ。
「しかし、何があったんですか?」
莉奈が訊く、そう言えば、莉奈にはなぜ休んだか、行ってなかったな。
「それは、内緒だ」
「いいじゃねえか、言ってやれよ」
「彰人は知られるのが嫌だと思ったんだが」
「そりゃ、クラス全員に知られるとかは嫌だが、松崎さんに知られるんだったら別にいいぜ」
「そうか」
「俺は。普通に姉が事故で怪我をしたから休んでたってだけだ」
「え、結構重大な理由で休んでたんですね」
「ああ、どうせゲーセンに行ってたとでも思ってたんだろ」
確かにクラスではそう予測されていたな。
「ただ、残念。俺は、ちゃんとした理由で休んでいるんだから」
「そうですね」
そう言って莉奈は笑う。
「さて、今日は昨日休んだ分、働いてもらうからね」
そういつの間にか背後にいた美里がそう言った。
「決まってるさ、休み時間なしでもいいくらいだぜ」
「じゃあ、本当にそうしようかな」
「それは辞めてください」
そう言った彰人の言葉に美里はくすりと笑う。
「まあでも、働くのは働くけどな」
「そう言えば、彰人。寛人は?」
「寛人……あいつは」
まさか今度は寛人が休み?
「あいつは普通に電車に乗り遅れただけだ」
なんだ、大した理由じゃなかった。
良かった。
そして、準備は一刻と進み、ついに二日目がスタートした。
だが、それでもメイド服目当ての生徒はそこそこ来ている。
「では、この席で……って」
そこに現れたのは、寛人と彰人だ。それと、
「なんでここに居るんだよ」
「そりゃ、クラスの人が着たらだめなんて言う決まりなんてないだろ」
「まあそうだけどさ、それでそこにいるのは?」
「あ、俺の妹だ」
「初めまして、上原瑞樹です」
そう丁寧に挨拶をする瑞樹ちゃん。
そんな彼女に向かって俺は頭を下げる。
年齢はおそらく一三くらいだろうか。
「では、ご案内しますね」
俺はそう言って席までご案内する。
そう言えば彰人のやつ、妹がいたな。完全に忘れてた。
なにせ、こちらも会ったことがない。
だから今日は初対面だ。
しかし、礼儀がいい人だ。
しかも、年相応の可愛さを備えていそうだ。
さて、注文を聞くのは、莉奈だ。
そう言えば莉奈に、彰人の妹が来てるのを教えていなかった。
ま、何とかなるか。
★★★★★
「え? 上原さんの妹?」
莉奈は驚いた様子を見せる。
「ああ、俺の妹だ」
「上原瑞樹です」
「礼儀正しいですね」
「はい、そう教わってるので」
そう、にっこりと瑞樹は笑った。
「しかし、上原さんには似てないですね」
「うるさいな。この子は俺とは違うんだよ。だって俺は……いや、何でもない」
「そこまで行ったら気になるじゃないですか」
「それより、そろそろやばいと思うぜ」
莉奈は周りを見る。すると、客が増えている。
このまま話していると、客の流れを止めてしまう。
「分かりました。では、注文をどうぞ」
「はい!」
そして莉奈は注文を聞いた。
★★★★★
「優斗さんなんで言ってくれなかったのです?」
「妹のことをか?」
莉奈はこくんぅと頷く。
「仕方ないだろ。俺だって聞いたのついさっきだし」
「そうですか」
「だから俺を攻めるんじゃなく、サプライズな客が来たとしか言っていない彰人を責めてくれ」
「後、ほら仕事だ」
そして、俺は客の方を指さす。
そして、俺は再び案内役に戻る。
「いやー、お疲れえ」
シフトが終わった後、彰人はその場にいた。
「まだいたのかよ」
「ああ、挨拶をしっかりとしたいらしいからな」
そして瑞樹ちゃんは頭を下げる。
「兄から話は聞いてました。いつもイチャイチャしてるとも」
「そうか」
「授業中もイチャイチャしてて先生に良く怒られているとも」
「それは違う……」
いや。違うくははない。莉奈が探求の時間に俺に抱き着いた時があったし、そのほかにも、休み時間に莉奈が俺に抱き着いてきたことがあった。
その時に、怒られたこともあるのだ。
だから、一概に否定できないのだ。
「まあ、それは置いといて、何歳だ」
「年齢を聞くのはセクハラだと思いますけど、一四です」
一四歳か。
「なるほどな」
やべ、会話が続かない。
初対面の相手と、会話を続けさせる方法を俺は知らない。
「そう言えば似合ってますね、そのメイド服」
そんな時、水木ちゃんが莉奈の服に対してコメントした。
「そうですか、似合いますよね」
「はい。似合うと思います。何より、莉奈さんの長い髪の毛がメイド服に良くマッチしてると思います」
俺とおおむね同じ意見だな。
「ありがとうございます。瑞樹ちゃんはいい子ですね」
「ありがとうございます」
瑞樹ちゃんは若干照れている感じを見せた。
「二人はこれから一緒に回るのか?」
「そうだな。お姉ちゃんからも心配いらないって言われてるしな。そもそも瑞樹が来たいって言ってるんだからな」
「そうだったのか」
「ええ、私が来たかったのです。お兄さんが頑張っているという話でしたので」
「なるほど。彰人が仕事をしてるって珍しい事だからな」
「そう言うわけじゃありません。ただ、珍しいとかじゃないとだけは言っておきます」
「なるほど」
結構兄想いな子だな。
「結構関係がいいんですね」
「はい。相思相愛なのです」
「私や優斗君と同じ感じですね」
いや、それを言ったら恋愛感情になるんだが。
「おっと、二人の邪魔したら行けないな。そろそろ俺たちはお邪魔するぜ」
「そうか、じゃあな」
そして俺たちはその場を離れる。
とは言っても、大まかなところは昨日言った。
だからこそ、今日どこに行くかは悩み所だ。
「それで、今日は、昼ご飯なのですけど、互いにシフトの時間に行きましょう」
「え、それはどういう」
「そのままの意味です」
「ああ、なるほど」
だから今日は敢えて、シフトをずらしたのか。
実のところ莉奈は敢えて、今日は俺と違うシフトがいいと言いだしていたのだ。
それは、一人に回りたい時間が欲しいからだと思ったが、そう言う事だったのか。




