第116話 莉奈のお泊り
そして、食事の時間だ。
「結局、あの時何を話してたの?」
由衣が効く。昨日の西園寺綾との会話の事だろう。
「あれは、単に昔の話をしてただ絵kだよ。由衣ちゃんも知らない話されても面白くないでしょ?」
「いや、聞きたいよ」
「えー、どうしよっかな」
そう、にやにやしている莉奈。楽しそうだ。
「でも。教えてあげないです」
「えー」
「ダメなものはだめですから」
まあ、そう簡単に言えることではないな。
そして莉奈は俺の耳に囁く。
「優斗君にはあとで教えてあげますから」
そして食後、三人で遊ぶ予定だが、その前に俺たち二人で集まる。
「綾ちゃんにはあの後私の怒りをぶつけました。もう、それは盛大に。途中からあの子は涙目になってたから相当堪えたんだと思います」
おう、すげえ。
「まあ、その分涙目になりながら反論もしてましたけど」
だから暗い顔してたわけだな。
「まあ、それでいい喧嘩が出来たと思います。私の中の彼女への怒りも治まってきましたし」
なら良かった。てか、
「だいぶ盛り上がってたよな? ゲームの時」
二人とも楽しそうだったし。
「あれは本当に負けたくなかったので」
「そうか……あの代理戦争もな」
「ふふ、ですね! まああれは、綾ちゃんの方が本気になってたと思いますけど」
「いや、莉奈の方が本気だっただろ」
「またまたそんなこと言って」
「いや、本当だが。……まあ、それはともかく、楽しかったか? 喧嘩仲直り後のゲームは」
「うーん」
莉奈は口をとがらせながら思考に励む。
「楽しかったと言えば楽しかったですし、楽しくなかったと言えば、楽しくなかったです」
そんなあいまいなことを言う莉奈。
「どうしてだ?」
「そりゃ、喧嘩してたわけだし、気まずかったから」
「なるほど」
そんなに気まずそうな感じはしなかったんだけどな。
ただ、それを莉奈に行ってもなあという感じなので黙っておくが。
「まあでも、莉奈の笑顔が見れてよかったよ」
「笑顔かどうかは分かりませんけどね」
そして、再び下に降りると、父さんが帰ってきていた。
そしてテレビ画面は野球へと変貌を遂げていた。
「父さんテレビゲームしたいからテレビ貰っていい?」
「ワンアウト23塁で四番西条だ」
「つまりだめってことかよ。じゃあ、このイニングが終わった後は?」
「笹村が好投してるから駄目だ。あいつのピッチングが見たい」
「いやいや」
とは言ったものの、この前生で試合見てたからわかる。あれは、野球を知らない人でも引かれるピッチングだ。
197センチの高身長から繰り出される165キロのストレートは。
だが、
「このテレビの方が見やすいんだけど」
「はあ……交渉は決裂。お前らは優斗の部屋でしろ」
というか、
「莉奈がいてもその態度なのかよ」
「勿論だ。父さんは野球第一の男だからな。それに、今は首位と五ゲーム差の三位だ。つまりまだ優勝の可能性があるんだ!!」
なあ、とでも言いたげに莉奈の方を見る父さん。
まったく、こいつは。
「私もそう思いますよ」
おい、莉奈のるな。
「まあでも、今は私たちがゲームしたいので」
「そうだよ。お父さん、テレビ頂戴? そして、お兄ちゃんのテレビで見て」
「悪いが、それは無理な話だ。それにだ、」
「それに?」
「今まさに西条がフォアボールを選んだ」
あ、
「つまり満塁という事だ」
「ならさっさと併殺でチャンスつぶせ」
「ゆうとーお前も野球ファンになったんじゃなかったのか?」
「それとこれは違う」
「まあ、終わっても、笹村の好投を見るからな。お前らには貸さんぞ」
これは埒が明かないな。
「由衣、莉奈、俺の部屋に行くぞ。もう仕方ない」
「分かりました」
そして俺たちは部屋に向かう。
「うわあ、三振かよおい」
そう言う父さんの悲鳴が聞こえた。ざまあみろ。
そして俺たちは早速ゲームをする。バトルゲームは先ほどやったので、今回はキングカートだ。
「はあ、もうこんな時間かあ」
もう時計の針は九を指している。そう、もうそろそろそんな時間だ。
「さて、お風呂の時間か」
父さんと母さんは後で入る。まずは子供たちで、誰が先に入るかを決めることだ。
「まず、俺と莉奈は後で入るから、由衣先に入れ」
俺と莉奈が一緒に入るのは前提条件だ。莉奈が俺以外と(由衣とはいえ)入るわけがない。
だが、
「私、莉奈ちゃんと一緒に入りたい!」
由衣がそう言いだした。
こうなったら大変だ。何しろ、俺と由衣は一緒に入るわけには行かないからな。
案の定、莉奈は「優斗君と一緒に入りたいから……」と渋る。
だが、その一方由衣は本当に莉奈と一緒に入りたそうだった。
「莉奈、由衣と一緒に入ってやれ」
俺は昨日も一昨日も、さらに言えばその前の日も莉奈と一緒にお風呂に入った。
だが、由衣は莉奈と一緒に入ったことはまだ一度たりともない。
「えー、私優斗君と一緒に入りたかったのですけど」
「わがまま言うな、それに俺とは毎日入っているだろ」
「私は毎日だって一緒に入りたいんですっ!!」
莉奈は萌え声みたいな感じで言う。
普段そんな声使ったことないよな。
「なら、三人で入っちゃおうよ」
ばっ、それはだめすぎる。
それをやるには由衣の年齢が高すぎる。
せめて小学生低学年までだろ。
いくら、相手が兄とは言え。
「いいですね、三人で入りましょう!」
まあ、莉奈ならそう言うと思ってたけど。
「だめだ。その選択はよくない」
それに、俺だって男だ。妹の胸を見て無表情でいられる自信はない。
もし、それで興奮してしまったらただの変態だ。
由衣に申しが経たない。
「えー、優斗くんのケチ」
「 お兄ちゃんのケチ」
こいつらハモってきやがった。
「いや、なあ」
莉奈の裸で興奮するのは分かる。ただ、由衣の裸での興奮は絶対あかん。
「二人で入ってこい」
「はーい」
そして二人がそう呟いた時、父さんが部屋に入ってきた。
「すまん優斗、先に入ってくれないか? そろそろ野球も終わりかなと思ったら抑えが同点スリーラン撃たれたんだ。この試合が終わるまで俺は動けん。だから頼む」
そう頭を下げる父さん。
度絵だけ野球に本気なんだよ。
「分かりました。なら私たち三人で入りましょう」
「あ、おい」
莉奈に腕を引っ張られる。
おい、待てよ。




