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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第115話 代理戦争

 そして、ひとしきりアニメの話をした後、莉奈と西園寺綾がリビングに来た。


 いわゆる話し合いが終わったのだろう。

 その二人が階段を降りる音を聞き、唾を飲む。

 今の二人の様子によって今後どうなるかが決まる。

 近くの子供二人にはその意味は分からないのだろうが。


「どうだった……?」


 俺は恐る恐る聞く。どうなったのか、話し合って二人の気が済んたのか。

 まさかまた犬猿の仲に戻ってるなんてのはやめてくれよ?


「まだ、もやもやは治まってない感じ。でも、もうだいぶ大丈夫かなって」


 つまりまだ完全には仲直りはできていないが、ひとまず喧嘩状態は治まったという事か。


「まあ、そう言う事ならよかった。なんかあるなら言うんだぞ」

「うん」


 莉奈は元気よく言う。だが、隣の西園寺綾はまだ少し暗い雰囲気を醸し出している。

 こちらはまだ時間がかかりそうだ。


 まあ、それはともかく、今のところは由衣たちに加わって遊ぶ分には大丈夫そうだ。



「竜輝、今のところはどう? 由衣ちゃんに勝ってる?」

「うん、勝ってますよ」


 そう竜輝君は答えた。実際俺が来て以降は由衣に勝ち越していたし。


「そっか、いい子」


 竜輝君の頭をなでる西園寺綾。


「優斗君、少しいいですか?」


 そう耳打ちする莉奈。


「代理戦争です。由衣ちゃんを応援しましょう」


 はあ?


 そして、莉奈が「由衣ちゃんと竜輝君で勝負です!」


 そう言い放った。勿論是認目を丸くしてたよ。

 だが、莉奈はそのままの勢いで、


「由衣ちゃん任せた」と言った。


 由衣も最初は戸惑ってたが、すぐさま意味を理解したのか、


「分かった。莉奈ちゃんのために頑張る!」


 そう言ってバトルゲームが始まった。


 ふと思った。

 莉奈と西園寺綾がそれに加わった方がいいんじゃないか、と。

そしたら見事に二対二の大乱闘だ。

俺が見学になるのは嫌だが、それが一番おさまりがいいのでは、と。


 だが、まあ今の時点で由衣と竜輝君が乗り気だからいいか。

 今ここでする提案でもないしな。



 そして、ゲームが始まる。先に三回撃墜された方が負けだ。


「由衣ちゃん頑張って!!」

「竜輝、行け!」


 やっぱり二人よりもテンションが高い二人。

 中学生時代友達だったという事はある。

 これを見ると、完全に仲直りしたんじゃないかと思ってしまうし、疎遠になんてなってなかったんじゃないかと、思ってしまう。


 さて、黙って見ている俺だが、やはりどちらが勝ってほしいのかと言われたら由衣だ。


 莉奈に負けじと、


「由衣頑張れ!!!」


 そう俺も言った。


 その間に試合は進み、由衣が優勢となっていく。

 それも由衣が一度目の撃墜をしたのだ。

 だが、由衣も体力が一〇〇分の一二しか残っていない。

 まだまだ油断などできない。


 そして、由衣の二機目はあっさり倒され、ほぼ互角だ。

 そのたびに莉奈が喜んだり、西園寺綾が喜んだり、

 まさに一喜一憂だ。


 そして、ついに決着の時が来た。

 竜輝君が勝った。つまり俺たちは負けたのだ。


「悔しいっ!!」


 莉奈は地面に拳をたたきつける。もはや莉奈が負けたのか、由衣が負けたのか分からないほどだ。


「いえいっ!!」


 一方の西園寺綾は喜んでいる。竜輝君よりも喜んでいる。


「こうなったらっ」


 莉奈はこぶしを握り締め、


「私が勝負です!」


 そう、勢いよく言いだした。

 それに対して「受けて立つ!」という西園寺綾。いよいよ代理戦争ではなく、直接戦争をするらしい。


 そして二人はゲーム機を手に取る。


 いよいよ勝負の時だ。


「お姉ちゃんたち燃えてますね」

「そうだね」

「どっち応援してますか?」

「一応莉奈ちゃんだけど、どっちが勝ってもいいかなー」


 そう、のんきなことを言う二人。

 だが、俺にはわかる。この勝負はただの勝負じゃない。女の意地をかけた勝負だ。


「由衣、この試合大事だぞ」

「分かってるよ。莉奈ちゃん、綾ちゃんに負けたくないんでしょ?」

「由衣、分かっていたのか」

「うん。勿論。だからさっき勝ちたかったー」

「さっき、どっちが勝ってもいいと言ったのは?」

「あれは、竜輝君に気を付かっただけだよ」


 マジか、由衣に人を気遣うという選択肢があったのか。

 由衣は人の感情なんてどうでもいいという感じだと思っていた。

 由衣も友達ができて成長したんだな。


「勿論莉奈ちゃんを応援するよ」

「そっか」


 そして俺は由衣の頭をなでる。


 そんな間にも試合は続いている。というかもう終わった?

 見ると、莉奈がもう勝どきを上げている。


「莉奈。そんなにこれうまかったっけ」


 先ほどは連敗していたのに。


「だって、本気でやったんだもん」


 確かに先ほどのゲームは遊びとは一切思っていない様子だった。

 由衣としゃべりながらテレビ画面を見ていたのではっきりとは言えないが、その時の莉奈の目はまさに本気の目だった。


「これで、思い残すところはないですね」


 そうすっきりとしている莉奈。それに対して西園寺綾は悔しそうだった。


「次は負けないんだから」

「何回でも勝ってあげますよ!」


 そしてまた二人でやろうとしたが、


「俺達にもやらせてくれ」


 そう、言った。さすがに延々と二人だけでやらせるわけには行かない。


 そして俺達五人でゲームをする。





 そして、五時、俺たちは様々なゲームをして大盛り上がりだった。

 だが、そんな時間ももう終わりだ。


「今日は楽しかったです」


 そう、元気よく竜輝君が言う。


「うん、私も!」


 由衣がそんな竜輝君に手を伸ばし、二人でハイタッチする。



 そして、二人は帰っていった。

 これで波乱万丈の一日は終わりを迎えたか。

 旅行の疲れも取れていないのに、今日も疲れた。早く寝たい。


「じゃあ、私も帰りますか」


 そして莉奈もそう言って帰ろうとする。

 だが、


「莉奈ちゃん。今日泊まっていってよ」


 そう由衣が言ったのだ。そしてその発言に莉奈は首肯する。

 それに母さんも同意して莉奈のお泊りが決まった。


 おい、今日は一人でぐっすり寝かせてくれよ。


「作戦通りです」


 そんな俺に莉奈が耳元でささやく。

 まさか、これも目的の一つだったのか。

 そう思い、空を、天井を見上げた。

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