表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/153

第108話 漫画

 部屋に着くと早速萩尾さんから漫画を手渡された。


「これは……」


 恋愛漫画だった。可愛らしいタッチで描いてある。まだ読んではいないが、キャラはかわいいなと思う。

 そして中身を読む。道端に見知らぬ女の子が倒れており、主人公がそれを助けるというストーリーから始まる。実は女の子はクラスメイトで、親から逃げ、家出してきたらしい。

 そしてそこから愛を知らぬ少女と卑屈な主人公の甘々生活が始まるという感じだった。一目見た瞬間に、これは面白いなと思った。

 女の子がとにかくかわいい。男子にとって最も好まれるキャラなんじゃないかとも思った。


「面白いですね」


 そう莉奈がつぶやいた。


「これ、漫画のことはよくわかりませんけど、持ち込みしても行けるんじゃないでしょうか」


 そう、莉奈は目を輝かせて言った。

 そう言えば莉奈はそこまで漫画を読んだ経験がなかったな。

 莉奈が好きなのは主に小説だし。


「この子、可愛いですし、男の子の方も結構なイケメンですし、そもそも設定がかわいいです。二人がドキドキしながら共同生活を過ごしている様子。本当に目に浮かんできますし、続きがどんどんと読みたくなってきます。……それに……」


 興奮したように莉奈が言い続ける。つーか、これ莉奈が嫌いなWEB小説っていうやつと設定似てるけど、これは言わんほうがいいやつだな。


 まあ、莉奈は小説とは認めないとしか言ってなかったし、内容に関しては好きだという事か。


「そう言えば莉奈って漫画は読んだことあったっけ」

「ほとんどないですよ。だからこの漫画が人生で一番面白いです」

「そう言ってもらえてうれしいわ。でも、この漫画、前に大きなコミケで売った時にほとんど売れなかったんだけどね……」


 そう言って悲しそうな顔をする萩尾さん。


「大丈夫ですよ。面白いですよ」



 そう、萩尾さんに告げると、すぐに萩尾さんは「ありがとう」と言った。


「でもね、私スランプになっちゃって、最近かけてないの。……しょせん趣味だからかけなくてもいいやと思ったけど、やっぱり漫画を描くのって楽しいからどうしようって今なってるの」


 スランプか。

 もしや、だからこの混浴に来たわけではないだろうな。

 何か自分の殻が破れるように。


「でも、今二人に面白いって言ってもらえて、すっごく嬉しい」

「そうか……」


 萩尾さんは先ほどの暗い顔から一転、明るい顔へと変化した。


「でも、スランプは収まってない感じなんですよね」

「まあ、次の設定は思いつかないわね。だって、このマンガも何とかここまでは仕上げたんだけど、そこからどう甘々展開にするか分からなくて」

「甘々展開?」

「えっと、恋人同士が幸せそうにする様よ」

「そうですか……なら私たちの話を訊きます?」

「え?」

「だって、近づいてきたのもそういう事なんでしょう。だったら私たちを利用してみませんか?」

「……利用?」


 そして、莉奈はそう言うとすぐさま俺に抱き着いてきた。そしてそのまま押し倒していく。


「お前、そう言うこと?」

「ですよ?」


 何だよこいつ。

 合法的にイチャイチャするつもりかよ。


「……なんか違うのよね」

「え?」


 莉奈が驚いた顔で萩尾さんを見る。


「イチャイチャしすぎ」

「え?」

「イチャイチャしすぎると、すぐにネタが切れてしまうから。……だって、私が書きたいのは恋人になる間の距離噛んだもの。……それにいきなりハグなんてしちゃったらもう恋人じゃない?」


 正論だ。確かに読んでる範囲では萩尾さんの漫画にはハグシーンなんてない。

 それどころか、せいぜい攻めたとしても、ヒロインがこけた時に、軽くハグみたいな感じになっただけだ。

 それでさえ、主人公の心情はドキドキしている感じで書かれていた。

 なるほど。

 俺たちとはまた違った感じなのかもな……。

 恋人になって二日目に一緒に風呂に入り、一緒に寝るなんていう俺たちとは。


「じゃあ、力にはなれないという事ですか?」

「いいえ、力にはなれるわ」

「え?」


 そして、萩尾さんは俺たちに恋人感情のことを訊き始めた。

 イチャイチャしたときにどういう感情になるかとか、そう言ったようなものだ。

 萩尾さんは本気みたいで、録音までしている。忘れたらいけないみたいで。

 正直質問の内容は恥ずかしい話ばっかりだった。

 ただ、答えられる範囲では答えた。それが萩尾さんの漫画のヒントになると信じて。


 そして、萩尾さんが満足して、漫画のプロットが完成したときにはもう九時を回っていた。


 そして俺たちは俺と莉奈の部屋に戻ることにした。

 萩尾さんとはメッセージアプリの友達登録をしたので いつでも連絡が出来る。


 そして部屋に戻った後、莉奈と残り少ない時間をどうしようかと、話し合った。

 結果、トランプをすることとなった。だが、運ゲー系のトランプでは莉奈がぼろ勝ちしてしまう。

 結果、運ゲー要素を極限まで減らす、ハイアンドローにした。

 これは単純に、出たトランプの札に対し、次のカードの数が上か下かを当てるゲームだ。

 単純なゲームだが、単純であるがゆえに運が関係することも無い。


 ゲームの内容としては、中々の熱戦になったが、それでも莉奈の運が完全に左右しないなんてことはなかった。

 俺の引いたカードが極端な数なことが多かったのだ。

 だが、俺のカードが中途半端な七とかのことも多く、中々楽しめた。


 莉奈が最終的に勝ったのだが。


 その後神経衰弱もした。

 莉奈の運で、莉奈が一気に連続で当てることも多かったが、俺の記憶力の良さが関係し、中々の勝負になった。

 これは俺が勝った。



 そして時間もいい感じになってきたので、寝ることにした。


 布団を敷き、そこに眠る。

 横並びだ。

 俺の家でも莉奈の家でもないため不思議な気持ちだ。


「ねえ、優斗くん」

「何だ?」

「今日、ここに来てよかったです」

「ああ、それは俺もだ。この旅行凄く楽しかった」

「私もです。……明日もありますけどね」

「そりゃあそうだが。でも、遊園地はもうごりごりだな」

「えー、遊園地楽しかったじゃないですか?」

「過激じゃない奴はな!!!!」


 そう言って莉奈の頬をつねる。


「痛いですよ。優斗くん」

「いいだろ。今日受けた恐怖の数々に比べたら」

「なら、お金優斗くんが出してくださいね」

「……は?」

「だって、この旅行、私のおごりですもん。今からでも割り勘にしますか?」

「……」


 流石にそれは逆らえん……。


「そういう事なので、やめてください」

「分かったよ」


 そして、渋々だが、手を放す。


「さて、優斗くん。今日も胸揉みます?」

「いや、今日はいいわ」

「そうですか」


 そして俺たちは眠りにつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ