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クラスの女子と関わったことの無い俺の机の中に手紙が入っていたのですが  作者: 有原優


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第十話 お泊まり

「人身事故が起きてる」

「え?」

「なんか、山稜棟駅のホームから社会人の男性が飛び降りたとニュースに書いてあります」

「最近そういうの多いもんなあ」


この前も遅延で一時間電車が遅れて、一時間目が自習になった日があったのだ。

「どうしよう、このまま電車が動かなかったら」


 莉奈は少し心配そうな顔をする。


「そんなもん俺が送ってやるよ」

「お父さん酒飲んでただろ」

「そうだったな」


 父さんはそう言って豪快に笑う。


「莉奈、ほかに帰る方法はないのか?」

「えっと、別の路線だったら帰れないこともないんですけど、三十分ぐらい歩かなきゃならなくなるので」

「まあもう遅いしなあ、家族とかは迎えに行けるのか?」

「うちの家には車がないんです」

「万事休すか、そうだ母さんうちに泊まれるところってあったっけ」


 今日は疲れたから莉奈には本当は泊まってほしくはないが、仕方ない。それしか方法ないし。


「布団の予備はあったかしらね、探すわ」


 そう言って母さんは寝室に行く。


「ありがとう母さん」

「莉奈はうちの家に泊まっていいか?」

「うん、逆に泊まりたいぐらい」

「分かった」


 そう言うと思った。


「やっぱり電車は動く気配はないみたいです」

「そうか、母さん布団見つかった?」


 俺は寝室に向かって叫ぶ。


「予備の布団があったわ」

「そうかよかった」


 これでとりあえず問題は解決だな。


「寝る部屋はどうしましょうか?」

「優斗の部屋に寝てもらったらいいんじゃない?」

「は? なんで、リビングがあるだろ」


 俺はそろそろ一人の時間が欲しい、莉奈と一緒に生活するのは楽しいのだが、疲れるのだ。


「でも優斗の部屋広いしピッタリじゃない、莉奈ちゃんもいいでしょ」

「はい! もちろんです」

「別に俺の部屋に来る必要はないだろ」

「私優斗くんの部屋で寝たいのですが、だめですか?」

「はあ、仕方ねえな」

「やった!」

「そういや教科書とかは大丈夫か?」


 そういえばその問題があった。


「はい! 私教科書を学校に置いてくるタイプなんで」

「それはよかった」


 よかった、教科書を学校に置いてくるタイプか。


「ところで部屋に行きましょうか」

「ああ、そうだな明日も相変わらず早いしな」

「はい!」




「しかし、まさかこんな形で優斗くんの家にお泊りができるなんて思ってませんでした」

「そうか、ところでもう家には連絡したか?」

「もちろんです、ところでこれからどうすごしますか?」

「もう風呂入って寝るでいいだろ」


 今日も疲れた。黒歴史を暴露されるし。


「でも物足りなくないですか?」

「お前あんなに喋っといてまだ満足してないのかよ」

「いや、食事と暴露会は満足しました」

「ならば何が足りないんだ?」

「さっき由衣ちゃんが言ってましたよね、エッチなことをしたらみたいなことを」

「おい、俺はそんなことを今はする気じゃない」

「じゃあ私が無理やりするだけです」


 莉奈は俺の手を床につけさせてそのまま俺の体を倒す。


「ちょっ何をするんだ」


 どういうことだいきなり、エロ漫画かよ、この状況は?


「抵抗させませんよ」


 莉奈は静かに莉奈の唇を俺の唇にそっと触れさせる。急だったのでびっくりしたが、莉奈のキスを甘んじて受け入れた。


 莉奈の唇は少し不思議な感じがした。俺は正直に言って人とキスしたことなんてない。今、初めて唇を奪われた。これがファーストキスというやつだ。


 キスとはこういうことなのかと何度も心の奥底で思う。そのキスは何秒間も続いた。こころなしか時間が遅く感じ、莉奈がいつもよりもかわいく感じる。かわいい、いや美しいという言葉のほうがふさわしいのかもしれない。だがとりあえず気持ちがいい。


 莉奈の唇が俺の唇から離れる。時間にしたら二十秒もたっていないかもしれないが、体感だと五分は経っている気がする。それぐらい濃密な時間だった。



「エッチなことってこれかよ」


 本来だったらキスの感想を先に言うべきかもしれないが、俺はツッコみたかった。エッチなことをもっと過激なものだと思っていたからだ。


「はいそうです、これで満足です」

「別にそれだったら、いつでもしてやるぞ。思ったより気持ちいいしな」

「本当ですか? あーんは嫌だったのにですか?」

「まあ、あれは嫌だったな」

「そうですか」




「それに、俺はエッチなことを別のやつだと思っていたし」

「それって」

「いわなくてもいい、俺はそういう話が嫌いなんだ」

「下ネタ無理なタイプなんですか?」

「当たり前だ」


 男子は下ネタ得意なんだろうが、俺は嫌だ。


「ところでもう一回してもいいですか?」

「ああ、かまわないよ」


 そうして俺はもう一回濃密なキスをした。二回目も相変わらず気持ちがよかつた。



「二人ともお風呂湧いたよー」


 下から由衣の声がする。俺たちはその言葉を聞き、三回目のキスをストップさせた。


「呼ばれましたね」

「ああ」

「先お風呂に入ってもいいですよ」

「ああ、今行くわ」


 俺は大声でそう叫ぶ。


「じゃああとで」

「おう」




「はあ風呂気持ちいい」


 俺はそうつぶやく。今日も色々なことがあった、まだ二日しかたっていないのかと疑いたいぐらいの濃密すぎる日々だ。昨日はたしか朝に机を見たら手紙が入ってたんだっけな、それで寛人に相談して、そして宿題忘れてて先生に怒られたり、告白オッケーしたら家に来ることになったり、まあ家に呼んだの俺なんだけど。今日も謎のあーんのしあいをしたりとか、キングカートで莉奈と戦ったり、黒歴史を暴露されたりとか、キスをしたりとかいろいろなことがあった。


 一昨日までの俺には考えられなかっただろうな、こんな状況。莉奈に振り回されてばっかりだが、楽しいかと言われたら、楽しいな。ただ、彼女としてはまだ見れてない。もちろん莉奈はかわいいが、今は友達としてみてしまっているところもある。


 だけど、莉奈もわかっているんだろうな、俺がまだ彼女として見れていないということを、だからキスをしてきたんだと思う。だたまだこの生活は始まったばかりなのだからそのうち彼女として、女として見れるかもしれない。まあキスは気持ちよかったが。


 しかし風呂は気持ちいい、一日の疲れが吹き飛ぶ。少しだけ熱いが、これがまたいいのだ。今考えると一人の時間がこの二日間ほぼなかったように思える、せめて言って昨日莉奈が帰った後の三時間ぐらいだ。今日に至ってはずっと授業時間以外莉奈といたのだ。誰かといる時間はもちろん大切だ。しかし、一人の時間も同じくらい大事なのだ。俺はそう深く理解をする。


「すみません」


 莉奈の声が聞こえる。何だ? 急に、何か用事があるのか?


「なんだ?」

「お風呂に私も入っていいでしょうか?」

「は?」

次の話はキスよりも少し過激になるので、苦手な方は二話後の十三話からお読みください。


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