第103話 旅行
そして翌日早速計画を立てた。温泉に行く計画だ。向かう温泉は、混浴目的として作られた温泉であり、カップルのための温泉だ。
家からおおよそ三時間程度かかるらしく、俺たちは旅行としていくことに決めた。
早速、火曜日、まずは莉奈の家に泊まり、水曜日に二人で温泉に行くという計画だ。そして、水曜日は二人で温泉に併設されているホテルに泊まる計画だ。
そして、お金は全部莉奈持ちだ。
そして火曜日、早速莉奈の家に行った。温泉道具を持って。
「優斗くんいらっしゃい!」
そう莉奈が笑顔で出迎える。
それに呼応して俺も「お邪魔します」という。
まずは莉奈の部屋に入る。今日は前日とは言え、まだ一〇時だ。まだまだ遊ぶ時間はある。そして、早速俺たちは部屋でキングカートをして、外に出かけた。その先は、カラオケだ。二人でのカラオケは久しぶりだが、莉奈が相変わらずの上手い歌を歌ったことで、もちろん俺も楽しかった。流石は莉奈だ、今日の歌も期待を裏切らない。
そして、莉奈の家に泊まった後、二日目、俺たちは混浴のお風呂に向かって電車に乗る。
「今日も優斗君と一緒にお出かけ……幸せです!」
「ああ、俺もだ。しかも今回は莉奈と一緒にお風呂入れるもんな」
「それに、私以外の裸も見れますよ」
「莉奈、一旦黙ろうか」
まずい流れになっている気がする。
「えー、私の水着エロいって言ってたじゃないですか。それに、優斗くん地味に私以外の水着見てませんでした?」
「それは完全に誤解だな。俺はそこまでは見てない」
多少目移りした程度だ。別にガン見はしていない。
「そこまではってことは見てるじゃないですか」
「……」
「……私は寛容なので許します」
「おう、そうか。だけど、こういうのは水着を着ているからっていうものもあるし、別に裸に興味があるわけじゃないぞ」
何しろ、結構莉奈の裸を見ているしな。
「それは本当ですか?」
「本当だよ」
「まあ、もし私以外の裸を見たら、即ビンタですからね」
「寛容じゃなかったのかよ」
「ふふ、冗談です」
冗談かよ。
「そう言えば優斗くん、今日温泉だけじゃ物足りないですよね」
ん? 温泉だけ行くと思ってたんだが。
「なので、これ持ってきました」
そうして莉奈が見せてきたのは、遊園地のチケットだった。
「おい、それはどういう」
「もちろん遊園地で遊ぶんですよ」
「それは完全に聞いてないぞ」
「ええ、言ってませんもの」
っくそ。しかも莉奈の場合絶対絶叫マシン得意なんだよな。
普通に終わったかもしれない。
何しろ、ウォータースライダーでもぎりなのだ。ジェットコースターに乗ったら死ぬこと間違いなしだ。
「なあ、莉奈」
「何ですか?」
「絶叫マシンとかに載せないでくれよ」
「え? 何を言ってるんです? 載せるに決まってるじゃないですか」
「なあ、破いていいか?」
「だめです。優斗くんは私とジェットコースターに乗る運命ですから諦めてください」
こりゃあ駄目だ。何を言っても聞いてくれそうにない。
ジェットコースターか。今日が俺の命日にならなければいいけど……。
そして、そんな会話をしていると、一つ目の乗換駅に着いた。ここで、電車を乗り換えるのだ。
「そうだ、優斗くん。ここで何か買っていきませんか?」
「お土産的なやつ?」
「いえ、間食系です」
「おやつか……」
「はい!」
確かにここから先も距離はある。新幹線内で何か食べないともたないだろう。
そして、おにぎりと、軽いスナック菓子を買い、電車に乗る。莉奈が欲張ったせいで、思ってたよりも多くの量になってしまった。これ絶対宿に残るなあ、まあ莉奈はそれが目的だろうけど。
新幹線の中で、スナック菓子を食べながら、進んでいく。あくまでも電車の中なのでこぼさないようにきをつけながら。
「そういやさ、莉奈」
「なんですか?」
スティック菓子を手に持った莉奈がとぼけた顔でこちらを見る。
「やっぱりさ、ジェットコースター止めないか? 俺、今楽しくないんだが」
まさに死刑を待つ罪人のような気分だ。
「私は楽しいですよ。それにご褒美が待っていますから」
「お前との混浴?」
「もちろんです」
確かにご褒美ではある。だが、
「その前の罰ゲームが嫌なんだがな」
「そんなこと言わなくても。……それに観覧車とかコーヒーカップとか、ゴーカートとか、絶叫じゃない遊具もありますよ。それに確かアトラクションもありますし」
「じゃあ、ジェットコースターはやめてくれるか?」
「やですよ。それは確定事項です」
「そうか……」
少しだけこの旅を後悔した。なぜこの可能性に気づかなかったのだろうか。
そして現実は残酷なもので、新幹線はあっという間に駅までついた。今回ばかりは新幹線の速さを恨む。
そして周りを見渡すと、大きな観覧車が見えた。
……遊園地、ふつう楽しいはずの物なのに、なぜ俺は遊園地を非常に恐れ、絶望の象徴としえ扱っているのだろうか。
「まずは遊園地に入りましょうか」
そう元気に言う莉奈。
「待ってくれ、ジェットコースターは本当に勘弁してくれないか?」
「嫌です」
そう言った莉奈の手により俺は遊園地の中に連行されていく。俺の意思など関係なく。




