第一〇〇話 プール2
そして水の掛け合いをしたあと、俺達はそのプールを出て、大きなプールに出た。
そこは水が自動で流れているプールだ。それにより、泳がなくても、勝手に進んでくれるという優れ者だ。しかも……
「見てください優斗くん! 下がまる見えですよ」
そう、このプールは透明な素材で作られているおかげで下が見えるようになってるのだ。
そのおかげでこのプールで潜ったらまるで飛んでいるような気分にしてくれるという訳だ。
「優斗くん、潜りましょう!」
「ああ」
理由は前述した通りだ。潜ることで空に浮かんでいる気分を出すためだ。
とはいえ、俺は水中に長く入れるわけではない。莉奈がどれだけ泳げるのかは知らないが、おそらく俺は莉奈の半分の時間も潜っていられないだろう。
粋を大きく吸って、プールの中に沈む。すると、透明床から、下の様子が見えた。ビーチボールを打ち合っている親子、二人でベンチに座っている陽キャっぽいカップル、物凄い泳ぎを見せている筋肉ムキムキ男子、色々景色が見える。
そんな中、莉奈が俺の肩をちょんっと触った。そして振り返ると、莉奈が俺の手を掴んで手を繋いだ。
なるほど一緒に泳ごうということか。
だが、今の俺にはそれはできなかった。理由は単純だ。息が切れかけていたのだ。
そこで莉奈には悪いが手を無理やり解き、水上に戻った。
「ぶはあ」
空気が美味しい。……少し潜りすぎたな。
「ふう」
莉奈も上がってきた。
「なんで手を解くんですか?」
「だって、もう息がしんどかったし」
「しんどくても私と手を掴んだままでいてください」
「無茶言うなよ!」
そしてもう一度莉奈と手をつなぎなから潜る。
今度は先程みたいにならないように、酸素補給したくなったら莉奈の手をちょんちょんとして合図をするという算段だ。
今は二人で一心同体だ。二人で水中の水をかきながら進む。ただでさえ水が流れているので、そのおかげでかなりのスピードになる。
その分下の景色の移り変わりも激しくなる。
色々な場所が見えてくる。
そんなところで息が切れたので、梨奈の手をちょんちょんと触り、息継ぎをしたいということを示す。すると梨奈はすぐに手を離してくれた。
「ぶはあ」
空気美味しい。そしてすぐに潜ろうとするが、莉奈も上がってきたので、潜るのをやめた。
「優斗くん……息継ぎ早くないですか?」
「仕方ねえだろ人間は水中では生きられないんだから。……てか潜るぞ」
「もしかしてごまかしました?」
「うるさい」
そしてもう一度潜る。それを追うように莉奈も潜る。
そしてそんなことを繰り返しているとあっという間に終着地点へと到達した。
「もう終わりなんて悲しいですね……」
「もう一周するか?」
このプールはほぼ円形となっているので、終着地点と開始地点がほぼ一緒なのだ。だから行こうと思えばすぐに行ける。
「もちろんです!」
そして色々な感じでもう三周した。
例えば走りながらだとか、歩きながらだとか、ゆらゆら水の動きに身を任せながらとか様々な感じでだ。
そしてそれも飽きた俺たちは次なる場所へと行く。水の滑り台だ。ここはウォータースライダーのような豪華な感じではないが、一回の滑りにかかる時間が少ないので回転率が高く、列もそこまでは並んでいない。それにただの滑り台なので二人乗りできるという点が素晴らしい。
それにウォータースライダーよりは大したことがないというだけで、ちゃんと楽しそうなのは変わらない。
そして並ぶと二人で話す暇もなく、三分程度で順番が来た。
俺と莉奈は滑り台用の乗り物をもらい二人で乗る。俺が前で莉奈が後ろだ。つまり莉奈の足で俺の体を挟むという感じになっている。
「優斗くん、このままずっとしときたいですね。カップルっぽいです」
「そうだな。だが、列に人が並んでいる。行くぞ」
「はい!」
そして二人で滑る。見た目に反して思ったよりもスピードが出て、びっくりする。こんなに速いのかと。
「うわああああ」
「きゃあああああ」
二人してそんなことを言いながら滑っていく。莉奈は楽しそうだ。
そして二十秒当たり経った後、執着地点に着いた。
そして俺たちは乗物から降りる。
「楽しかったですね」
「ああ。スリリングで良かった」
「私からしたらもう少しスリルがあってもいいと思うんですけどね」
「もっとって……」
そしてそのまま下のプールで泳ぐ。滑り台の下にも大きなプールがあるのだ。
そしてこのプールははシンプルな作りになっている屋外プールだ。
そしてちゃぷんと水中に入った時に、
「さて、競争しましょう!!」
そう莉奈が言った。
「却下」
「なんでですか?」
「だって、お前に追いつくなんて無理だろ」
走りで勝てないのに、泳ぎで勝てるわけがない。
「良ーいどん!」
そんなことを考えていると、莉奈が泳ぎだした。
「おいまて」
「待ちません」
そして俺たちは泳ぐ。しかし、莉奈は俺のはるか先にどんどんと行っていく。全く追いつく気配もない。
そして、中くらいの距離まで来た時、息が苦しくなり、息継ぎをする。だが、もはや息継ぎだけでは酸素補給が間に合わなくなった。
そして仕方なく、足を下につけ、思い切り深呼吸をする。当然その間も莉奈は先に行っているわけで、もうほぼゴールまでいた。
莉奈早すぎるだろ。
そして俺ももう一回何とか泳ぎだす。
そして必死に泳ぐこと八分、ようやく莉奈の待つ端まで来た。
「優斗くん……遅すぎませんか?」
「うるせえ。お前が早いんだよ」
「でも私結構ここで待ちましたよ。たぶん一〇分くらい」
「そりゃあ悪かったな。あいにく運動音痴なもんで」
「分かってますよ。それは」
「おい!」
「えい!」
莉奈が抱き着いてきた。
「私だって、ずっとここに一人でいるの暇だったんですからね? もう少し遅かったら私自ら迎えに言ってたところです」
「……本当にそうならなくて良かったよ」
そしたら軽く恥ずかしい。
「じゃあ、今度はこのまま行きましょうか?」
「このままって?」
「二人でに決まってるじゃないですか。今度は優斗くんを置いていきませんから」
「……じゃあ一緒に行くか」
「ええ」
そして俺たちは並びながら一緒に泳いだ。だが、途中でだいぶ莉奈に待ってもらったりしながらだが。
この話で100話突破しました!




