第九十八話 川遊び
そして、月曜日は由衣と川遊びに出掛けた。
まず、更衣室で服を着替え、ロッカーに荷物を預けて、川の方に向かった。
そして着替えた後、川へと向かう。その道中由依は上機嫌で鼻歌を歌いながら歩いていく。
「そんなに楽しいのか?」
「うん! お兄ちゃんとの川遊びだもん。絶対楽しいし!」
そう由依は言って、俺の手をつかむ。
そしてしばらく歩くと、川が見えてきた。
「お兄ちゃん! 行くよ!」
由依は俺の手を離し、スク水で川に飛び込んで、由依は楽しそうに笑った。
「お前いきなりすぎるだろ」
「お兄ちゃんもおいでよ!」
「まったく」
そして俺も川に飛び込む。まったく、明日莉奈とプールなのにな。
「お兄ちゃん!! えい!」
そう言って由依は水をかけてくる。お返しとばかりに水をかけ返すと、「きゃ! やったね!」と言って由衣も元気に水をかけ返してくる。
妹と二人で川遊びか……楽しいな。
そして由依と水掛けをしたあと、二人で手をつなぎながら川下りをする。
この川は深い所があまりないので事故の可能性が少ない。そこは安心できるところだ。
そしてしばらくちゃぷちゃぷと歩いていくと、岩が沢山あるところに出た。子どもが好きなタイプの遊び場だ。
岩の上を飛びながら移動してもいいし、今まで通り、水遊びしてもいいし、なんでもござれだ。
由依は「私遊んできていい?」と言ったので許可すると、「わーい」と言って向こうに走りすぎていく。その際に一言、「けがすんなよ」とだけ言った。とはいえ、仮にも今は俺が保護者である以上、由依の安全は確保しなきゃならない……という事で、由依を追っかけに行く。
由依が移動している岩の上を俺も移動していく。しかし、なかなか怖い。よく由依はこの上を気軽に飛べるものだ。すごいな。
そして何とか、高校生の本気で食らいついていると、由依の姿が急に消えた。何だ!? と思って舌を見ていると、華麗に着地していた。
「由依、どうしたんだ?」
「んっと、滑っただけ。でも大丈夫!!」
そうピースサインが送られてくる。しかし、こちらは全然安心できない。
ビビらせて来ないでくれ……。こっちからすると危なっかしくて見てられねえ。もしも由依がけがしたら俺の責任だからな。
そして由依は再び走り出した。
そして一時間後、由衣が飽きたのか、こちらに戻ってきた。
「岩遊びはどうだったんだ?」
「楽しかったよ。お兄ちゃんももっと大胆に飛び跳ねたらいいのに」
「それしたら、危ないからしねえんだよ」
「絶対怪我しないのに……」
「お前何回か滑りかけてただろ」
「あれは演出だよ演出。余裕だったらつまらないでしょ」
「……お前なあ」
「じゃあ、お兄ちゃん行こう!」
飽きれている俺の手を引っ張り、由依は次の場所へと俺を引っ張っていく。さらなる下流の方へと。
この下流は深さがそれなりにあり、泳ぐこともできる。由依は運動が得意なこともあり、溺れるかもという心配をあまりしなくてもよさそうだ。だが、向こうに行きすぎると、足がつかなくなる。
そのリスクを由衣に伝えて、二人で泳ぐ。
ちなみに俺は運動が下手だが、泳げない程ではない。軽いバタバタ程度でなら移動できる。
そして由衣と泳ぐこと一時間、俺の体力が無くった。だが、その一方由衣はまだまだ元気そうだ。
やはり由衣、体力は化け物クラスのようだ。
ん、待てよ……てことは莉奈も体力があるんじゃ……
明日は覚悟しなくてはならないかもしれない。
そして由衣に「俺は疲れたから休憩しとくわ。由依、あまり奥まで行きすぎるなよ?」と言って、近くの岩に登る。この一打と遊んでいる由衣の姿が見えていいだろう。
ふうと岩の上で景色を眺める。この位置からだと結構川全域が見えて気持ちがいい。しかも近くに大きな滝があるという点でもいい景色だ。
そしてしばらく休憩して、体力が回復した俺は再び由依と合流して遊びに遊んだ。
そして、しばらく遊んだ後、由依も飽きてきたみたいで、帰る流れになった。
そして帰り道、
「楽しかったか?」
「うん。めっちゃ遊べた。だけど一番はやっぱりお兄ちゃんと遊べたこと。それが一番!」
「一番って、俺は結構見てただけだぞ」
「……それでもさ、私は楽しかった。この前の山登りだってそうだし。やっぱりお兄ちゃんといるときが一番楽しい!」
「……そうか」
そう言って由依の頭をなでる。
由衣は上機嫌になったのか、「競争ねお兄ちゃん!!」と言って走り出した。
まあ俺も口には出さないが、同じ気持ちだ。莉奈と遊ぶとき並みに楽しいよ。




