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ギルドマスター

 ギルドに入る。目につくのはローブを羽織った人たちばかり。ここまで魔法師が集まるのも圧巻だ。魔法師4人のパーティーなんて本当に実在するのか。


 そんなことを考えながら受付に向かう。




「ご用件はなんでしょうか。」




 受付嬢さんが気さくに話しかけてくる。




「この毛皮って売れますかね」


「はい。こちらは銀貨1枚で買い取りますよ。」




 銀貨一枚か。この辺の魔物の素材としては高めに買い取ってくれるんだな。今晩の飯代が浮いたと思えばうれしい。




「そしたら全部で3つ買取をお願いします。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」




 受付嬢が裏のほうに入っていった。今のうちにギルドの食堂のメニューを...と、メニューの前に張り紙に目が行った。


 ゴーレム討伐依頼。どうやら魔法耐性を持つゴーレムが街の近くに現れたようで、魔法師だらけのこの街では倒せる者が少ないようで、でかでかと急募と書かれている。私も魔法師だから力にはなれなそうだ。




「お待たせしました。あ、お客様もしかしてゴーレム討伐興味あります?今この街に討伐できる人材がいなくて本当に困ってるんですよ。」


「い、いえ私も魔法師なものでおそらく歯が立たないかと...」


「そ、そうですよね...あ、これ先ほどの買取金銀貨3枚になります。」


「ありがとうございます。失礼します。」




 ギルドの食堂のほうへ向かう。席に座るとウェイトレスさんがお冷を持ってきてくれた。このギルドは親切だなぁ。




「お決まりになったらお呼びください。」


「ありがとうございます。」




 何を食べようか。メニューを見る。私は今ウサギ肉ブームだからウサギ肉がいいな。




「すいません。ウサギ肉の白ワイン煮込みを一つ。あと、白ワインも一つお願いします。」


「かしこまりました。」




 ほどなくして料理が運ばれてきた。白ワイン煮込みに白ワイン。合うのだろうか。


 ...美味い。ウサギ肉がさっぱりしているからか白ワインがよく合う。これは美味い。


 


「お嬢ちゃんちょっといいかい?」




 黙々と食べているとおじさんと表現するのが適しているような初老ぐらいで少し屈強な見た目の男が話しかけてきた。なんの用かはわからないが、でかい体格の男性に急に話しかけられると少し怖い。




「は、はい。なんでしょうか。」




 すこしオロオロしながら答えてしまった。




「俺はここのギルドマスターをしている者なんだが、嬢ちゃんに頼みたいことがあってな。」


「頼みたいことですか...」


「あぁ。細かいことは嫌いだから単刀直入に言うが、魔法耐性を持ったゴーレムを討伐してほしい。」




 ゴーレム。先ほど張り紙で見たやつのことだろう。魔法耐性を持っているなら私は力になれないと思う。




「なぜ私なのですか。見てもらえばわかると思うんですけど私も魔法師なので魔法耐性持ちを相手にするのは難しいですよ。」


「あぁ、そうだった。嬢ちゃんじゃなくて嬢ちゃんたちだな。」


「たち?」




 見ての通り私は一人なのだが。




「嬢ちゃん、勇者さんとこの魔法師だろ?勇者さんたちなら俺たちでは太刀打ちできないあのゴーレムを討伐できると思ってさ。」


「なぜ、私が勇者のパーティーメンバーだと知っているんですか?」


「結構有名だぜ。そりゃああんだけ魔王の幹部倒してんだもん。その辺の冒険者ならともかく、一つの街のギルドマスターが今世界を救おうとしている救世主たちの顔を知らないなんて問題だろ。」


「な、なるほど。」




 私たち思ったより有名人だったのか。意識したことすらなかったな。しかし、この様子だと私が抜けたことは知らなそうだ。




「だからさ、討伐を引き受けてはくれないか。報酬はそちらが提示する額出すし、今日の飯代もいらない。あのゴーレムのせいでこの街かなりピンチなんだ。」


「ほかの街に助けを求めないんですか?」


「求めたさ。しかしここから一番近い港町にはほとんど初心者の冒険者しかおらずゴーレム討伐なんて依頼できない。次に近い西の城下町には凄腕の冒険者はたくさんいるが、ここまで馬車で何日もかかってしまう。助けは呼んでいるが、到着は約1週間後になるそうだ。あのゴーレムは1週間以内には街につくだろう。そうなるともう止めることはできない。なんとか奴が街につく前に討伐したい。」


 「...えっと、なんでここまで街がピンチになるまで放置してたんですか?」




 純粋に疑問だった。ゴーレムが魔法耐性を持ってて手に負えないならもっと早くから救援を呼ぶことも出来ははずだ。




「実はあいつは元この街の守護獣でな。いろいろあっていまこの街を破壊しようとしている。このことについては落ち着いた時に必ず話す。だから引き受けてはくれないだろうか。」




 ギルドマスターは深々と私に頭を下げてきた。本当は話の最初のほうに勇者とは別れたことを伝えさっさと断るつもりでいたが、つい気になってしまって最後まで話を聞いてしまった。ここまで聞いておいて勇者と別れたのでの一言で断るほど私も薄情ではないと思っている。




「わかりました。引き受けましょう。報酬の件忘れないでくださいよ。」


「ありがとう。本当に感謝してもしきれないよ。」




 実際勝てるかはわからない。相手の魔法耐性の強さにもよるが、まぁつらい戦いになることは明らかだろう。すべてを聞いてしまったとはいえ我ながら安易にイエスと言ってしまったかもしれない。




「そうだ。勇者さんのパーティーにはすでに聖職者さんがいるので必要かはわかりませんが...」




 そう言うとギルドマスターは受付のほうに向かっておいでと言いながら手招きする。すると奥のほうから私と同じぐらいか、少し小さいぐらいの少女が出てきた。青髪ショートの髪型のせいか一目見ではボーイッシュな子という印象だ。




「挨拶をしなさい。」


「あ、あのわ、私、シャーリーと言います。職業は賢者で、氷、光、闇の3属性を使うことができます。」


 


 見た目とは裏腹に少しオドオドと話す少女。しかし、3属性使いで賢者か。しかも光属性ということは回復魔法が使える。かなりの逸材のように思えるがこの娘がどうしたのだろうか。




「ご丁寧にありがとうございます。私はモモと言います。使える属性は炎のみの1属性です。ギルドマスターさん。彼女がどうかしたのですか。」


「あぁ。良ければ彼女をゴーレム討伐に同行させられないかと。」


「本当ですか。ぜひ一緒に来ていただきたいです。」




 即答した。私は今一人で、回復はポーションに頼りきりなので人数が増え、さらに回復魔法が使える人材は即採用ウェルカム状態だ。しかも賢者なんてありがたすぎる。断る理由がない。




「そうか、助かる。シャーリーは魔法の才はすごいがほとんど実践して来なかったからいい勉強になるだろう。よろしく頼む。」




 そう言うとギルドマスターは裏方へと去っていった。



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