古代魔法
地下にも一階と同じぐらいの量の本が並んでいた。ほとんどが3属性に関する本の中で、奥の方に進むと一角にほかの本と隔離されたように置かれた本たちがあった。
ここかと思い足を踏み入れる。そこにはほかに人はおらず、大量にある3属性の本に比べて極端に量が少なく少し寂しく感じる。しかし、感じるだけであって、量自体はその辺の街にある図書館では比にならないほどある。
ぱっと見ほとんどが光と闇属性に関しての本だが、奥に進めば進むほど、回復魔法、召喚魔法、降霊魔法など、さらに魔法に限らず蘇生術や呪術など魔術に関する書物なども出てくる。
「回復、召喚、降霊...古代、これか。」
古代魔法に関する書物をいくつか見つける。そのうち一つを取りその場で広げる。
古代魔法とは過去に開発され使われたとされるが、現代では使い手も製法も失われた魔法。
失われたということは転生魔法は存在しないのだろうか。転生魔法について探す。
転生魔法は、古代魔法でも限られたものしか使うことができなかったという魔法。限られたものとは主に王や魔王など、王の血筋を持つ者だったという。なぜ王の血筋を持つ者だったのかは解明されていないが、王の血筋ができた歴史に答えがあるのではないかと言われている。
何個か手に取ってみてみたが、わかった情報はこれぐらいだろうか。というのも、古代魔法というものはあまり解明されておらず、実際に確実になっている事実が少なく、この図書館にあった書物もほぼすべてが、学術書という形で、事実からの推測めいた本が多かった。
中には、現代の王の血筋も転生魔法を使えるのではないかという考察もあったが、そんなこと聞いたこともない。しかし、ここまで情報がそろわないと、確かめてみる価値はあるかもしれない。
学術書とはいえ貴重な情報なので読みふけっていた。何時間ぐらい呼んでいただろうか。
「あれ、こんなところに人がいるなんて珍しいっすね。」
人が来たのか。というか話しかけられた気がする。このエリアには私以外人いなかったと思うし。
ゆっくり声の主のほうを見てみる。腰に手を当て仁王立ちでこっちを見ている女の子がいた。
きれいな金髪に先っぽが少しはねたロングツインテール、なぜか自信ありげな顔でこっちを見ている。見た目で言えばシャーリーにも負けず劣らずの可愛らしい女の子だ。
「えっと、何か用ですか...?」
とりあえず返事を返してみることにした。あまりめんどくさそうなやつにかかわりたくはないが、声をかけられて無視するほど無神経な人にもなりたくはない。
「いや、ここに人がいることに驚いて声かけたんすよ。この図書館に来る人の多くは3属性の本目当てでくるっすからね。」
なるほど。たしかにこのエリアに数時間いても彼女以外入ってくることはなかったし、司書も3属性以外の本についてはあまり知識がなさそうだったな。
「ここにいるってことはおねーさんも3属性以外を使うんすか?それともなにか特殊な職業だったり?」
「そんなことないですよ。ただの魔法師で炎属性しか使えないですよ。」
「へーそれじゃあ珍しいっすねこんなところにいるの。」
「少し古代魔法に興味がありまして。」
少し初対面の人に話しすぎた気がする。だいたい読みたいものは読み切ったしそろそろ帰ろうか。
「それでは私はこれで...」
「あれもう帰っちゃうんすか?せっかく珍しい人見つけたからもう少し話したかったのに...」
少し礼をしてその場を去る。
そういえばシャーリーを何時間もほったらかしにしていた。今どこにいるのだろうか。ほったらかしにしたこと怒ってなければいいけど。
二階にあがり歩き回っているとシャーリーを見つけた。きれいな青色の髪のせいか一目ではっきりわかるためとても見つけやすい。
「シャーリー。帰るよ。」
「あ、はい師匠。」
シャーリーが本を戻す。戻し際に魔法構築の文字が見えた。
「師匠。転生魔法について何かわかりましたか?こっちには全くなかったんですけど。」
「あ、うん。それについてはしっかり調べられたよ。ところでシャーリーはなに読んでたの?」
「魔法構築の短縮についてです。師匠のあれを見てしまったらあこがれてしまって。何とか私もできないかなと。」
「そっか。私は生まれつき持ってたからアドバイスとかはできないけど、後天的に身に着けた人もいるって聞いたことはあるね。」
「そうみたいですね。でもかなり難しいみたいで。」
「そっか。まぁでも私の場合は少し特殊だからあんまり見習わないほうがいいよ。魔法構築短縮は本当に魔力の消費が激しくて、すぐ魔力切れを起こすらしいからね。」
「そうですね。私もそこまで魔力の量には自信ないので、どっちにしても使えないですね。」
そんな話をしながら帰路についた。