転生者
シャーリーに連れられて行ったお店はとてもおいしかった。会計を済ませ外に出る。
「美味しかったですか師匠?」
外に出るなりシャーリーが心配そうに聞いてきた。
「美味しかったね。さすがシャーリー一押しの店だね。」
「そうですよね。良かったです気に入ってもらえて。」
本当に美味しかった。しかし、少々値が張る。貧乏人の私は一人ではなかなか入らないだろう。
例の依頼の報酬で今はそれなりに金を持っているが、昔からあまり贅沢をしてこなかったからか、あまり金を使いたいという欲望はない。
「次はどこに行きましょうか。」
シャーリーが聞いてくる。そういえばこの街を案内してもらうんだっけか。
次はと考えると、ふとこの街に来た理由を思い出した。
いろいろとありすぎて忘れかけていたが、私は元の世界に戻る方法を探していた。そしてこの街で探せそうな手掛かりと言えば、転生魔法だろうか。
「この街って図書館とかある?」
「ありますよ。魔法に対する需要が集まる街ですからね。たいていの魔法についてはそこに行けばわかりますよ。」
「そっか。じゃあそこまで案内お願いしたいな。」
「了解です。」
そう言うとシャーリーは歩き始める。
「そういえば師匠ってなんでこの街に来たんですか?」
「あぁ、えっとね元居た世界に帰る方法を探してるんだよね。」
「元居た世界...?ということはもしかして師匠って転生者なんですか?」
「うん。実はね。あまり人には話してこなかったけど。」
この世界には私以外にも転生者はいる。身近で言うなら勇者だ。
転生者は何かしら特化した能力を持って転生してくるとされている。それは勇者の万能に強くなる能力だったり、私の無尽蔵魔力だったり、様々だと聞く。
実際私は勇者しか転生者に出会ったことはないが、この世界には意外と転生者がいるらしい。そして転生者はその能力で各地のギルドなどでそれなりに活躍しているため、有名なのだ。だからシャーリーも知っていたのだろう。
「私転生者って初めて会いました。確かに師匠のずば抜けた能力は転生者のそれですね。」
「思ったより驚かないんだね。」
「まぁ、ギルドに住んでたら各地の転生者の逸脱した噂ぐらい毎日のように聞きますからね。実際能力を目の当たりにしたときはさすがに驚きましたが。」
「そっか。それで、まずその帰る方法を探るには転生魔法からかなと。」
「転生魔法ですか...それはこの街では探すのは難しいかもしれません。」
「え、そうなの?」
この街は魔法師が多いって聞いたからあるものだと...
「前も少し話したんですけど、この街って魔法師の需要が集まる街であって、魔法師以外のものはあまりないしいないんですよ。」
「えっと...」
「つまりですね、この街は魔法師が多く、魔法師の使う3属性に関する物は他に追随を許さないぐらいにそろっていて、その3属性に対する研文の量もすさまじいのですが、逆に賢者や聖職者みたいな他属性も使える魔法師だったり、その他の物や研文についてもあまり量がないんですよ。」
「そっか...ちなみに転生魔法って何属性に入るの?」
「私も詳しくはないんですよね。そのぐらいだったら図書館に何か資料があるかもしれないですね。行ってみましょうか。」
そう言うとシャーリーは私の手を引いて歩き出した。心なしか少し早歩きな気がする。シャーリーも気になっているのだろうか。
しばらく歩くとそれらしき建物の前についた。白を基調としたかなり大きな建って物で、かなりおしゃれな建物だった。
「ここです。」
「思ったより大きいね。」
「まぁ、この世界で一番と言っていいくらい魔法師に関する研文は多いですからね。一応この街の観光名所でもあります。」
「そうなんだ。」
そういいつつ中に入っていく。中も広々としていて、吹き抜けの作りで開放感がある。入ったばっかりだが居心地の良さがよくわかる作りだ。しかし、広すぎて目当ての転生魔法についての書物の場所が分からない...
「広いですね。これは探すのに苦労しそうです。わたしあっちの方探してきますね。」
ちょっと待って...という前にシャーリーはさっさと二階のほうへ行ってしまった。司書さんがいるんだから聞けばいいのに...
「すいません。少しいいでしょうか。」
「はい。なんでしょう。」
司書さんは愛想よく返してくれた。話しやすくていい。
「あの、転生魔法について書かれている書物を探しているのですが...」
「転生魔法ですか...」
司書さんは渋い顔で答える。3属性の本ばかりの図書館でそれ以外の魔法関連の本のことを聞かれても困るだろう。申し訳ない。
「なんでもいいんです。何か少しでも書いてある本なら何でもいいんです。」
「そうですね...昔、転生魔法は古代魔法の一つってこの図書館のどこかで見た気がします。なのでもしかしたら地下の3属性以外の書物がまとめられてる場所に何かあるかもしれないですよ。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ司書として完ぺきにこの図書館を把握できていなくて申し訳ないです。」
そういって司書さんは去って行った。私も地下に向かうとする。