お礼と報酬
目が覚めると昼過ぎだった。かなりの時間寝ていたらしい。魔力が無尽蔵とはいっても疲れはそれなりにたまる。さすがに体に負担をかけすぎたかもしれない。しばらくこの街で休息しよう。
まず身支度をしてギルドに報酬を取りに行くことにする。シャーリーが暇してたらこの街を案内してほしいななんて考えながらギルドに向かう。
ギルドにつくと相変わらず中は騒がしい。昼間から飲んでるやつが多すぎる。
「いらっしゃい。」
昨日のウェイトレスさんだ。この人もずっといるな。一日目もいた気がする。
「こんにちは。あのギルドマスターさん呼んでいただいてもいいですか?」
「あ、昨日の...かしこまりました。少々お待ちくださいね。」
「ありがとうございます。」
席について待つことにする。しかし、今日はここで昼食をとる気はない。この街にはまだおいしそうな飲食店があるので、できればシャーリーのおすすめを聞こうと思っている。
しばらくするとシャーリーとギルドマスターが来た。
「こんにちは師匠。」
「おはよう。シャーリー。」
「おはようって、もう昼ですよ。」
「そうだったね。さっき起きたばっかりだからさ。」
「そうでしたか。昨日は本当にお疲れ様です。」
「シャーリーからモモ殿がたいへん活躍したことは聴いたのだが、詳細をいくら聴いても教えてくれなくてな。魔法耐性があるゴーレム相手に魔法師のモモ殿がどのように活躍したのか、よかったら教えてくれないだろうか。」
ギルドマスターが聞いてくる。そういわれても能力を隠しているのだから下手なことは話せない。どうしたものか。
「それにシャーリーが急にモモ殿を師匠と呼び出したり、モモ殿と旅に出ると言い出してな。一体何があったのか...」
「まぁ、いいじゃないですか。私はたった一日でしたが師匠との旅がこれまで生きてきた中で一番と言ってもいいぐらい楽しくてついていきたいと思ったんです。」
「そうか。シャーリーがそういうなら止めはしないがな。」
「それよりお父さん。報酬ですよ。報酬を渡さないと。」
「そうだったな。」
私がなんて返そうか迷っているとシャーリーが上手く話題を変えてくれて助かった。ギルドマスターはおそらく金貨が入っているであろう包みを渡してきた。かなり重い。
「確か勇者パーティーは4人だったな。4人で分けるには少々少ないかもしれないが、この街中の店から集めた報酬だ受け取ってくれ。」
「少ないかもしれないがって、これ多すぎますよ。こんなにいただけないです。」
本当に多すぎる。これだけの金貨があれば土地と家が買えてしまう。
「この街を救ってくれたんだ。これでも少ないぐらいだと思うんだが。」
ギルドマスターは4人とシャーリーで討伐したと思っているからさっきから私と少し話が食い違うのか。しかし、本当は私とシャーリーの2人で倒したなんて言えないしなどうしたものか。
「もらっちゃいましょうよ師匠。」
シャーリーが言う。
「でもこれもらいすぎだよ。せめて1/4ぐらいで十分なんだけど...」
「じゃあ、私と師匠で半分こしましょう。これから一緒に旅に出ますが、一応別々にお金持っていた方が何かあった時に便利でしょう。」
それで多い気がするが...この先何があるかわからない。金は多いに越したことはないか。
「そうだね。ありがたく頂戴します。」
「おう。これからシャーリーをよろしくな。」
そういうとギルドマスターは去って行った。
「そういえば聞きたいことがあったんだけどいい?」
「はい。私にわかることであれば。」
この街について聞きたいことがあった。本当はギドマスターに聞こうと思っていたが、彼も多忙なのだろう。いつも用が終わるとすぐにどこかに行ってしまう。
「この街の人についてなんだけど。一昨日この街に来て昨日私がゴーレムを倒すまでこの街って結界が破壊されそうで結構ピンチだったんだよね?ギルドマスターもそれなりに焦ってたし。」
「はいそうですね。実際、ゴーレムが装置を破壊しようとしているとき私もかなり焦りましたからね。」
「そうだよね。でもさ、街を歩いていた時とかこのギルドで飯食べてる冒険者とか全く焦ってなかったというか、気にしてなった気がするんだよね。もしかして街の危機を街の人に伝えたなかったとか?」
「いや伝えてましたよ。師匠もこのギルドに初めて来た日、討伐依頼の張り紙見ましたよね。」
そういえばそんなの見た気がする。私では力になれないとか思ったっけ。
「おそらく焦ってなかったのはこの街に人じゃないからですね。」
「なるほど...?」
「師匠がこの街をどれだけ見て回ったのかわからないですけど、この街って店が多いように感じません?」
「たしかに」
いわれてみれば、店や宿が多い気がする。一軒家とかこの街で見てない気がする。
「この街って、魔法師が集う街っていいわれてるんですよ。」
「それは知ってる。私もとある魔法を探しにこの街に来たからね。」
「そうだったんですね。ちなみに...」
「あぁその話は話すと長くなるからまた後でするね。」
「そうですか。了解です。それで、この街を歩く人ってほとんど街の外から何かを求めてきてる人が多くて、街の住人よりも観光客のほうが多い珍しい街なんですよ。」
「なるほど、つまり街ゆく人はほとんどこの街の危機に対しては関心がないってことだね。」
「そうですね。」
商業都市みたいなものか。それならあまり焦りが見えなかったことや、この街の店から集めたといっていたギルドマスターからの報酬の量の多さに納得がいく。
それにしても薄情な奴らだなと言おうとしたが、私も最初は引き受けようともしなかったことを思い出して口を閉じる。結局は私も同じようなものだからな。
「でもシャーリーはよくついてきてくれたよね。偉い。」
「いえ、私も怖くて一人じゃ討伐なんていけませんでしたから...本当に師匠のおかげです。ありがとうございました。この街を、私の街を守ってくださって。」
シャーリーが頭を下げてお礼を言う。改めて言われると少し照れ臭い。
「私も流れで引き受けただけだから、改まってそんな丁寧に必要ないよ。」
「それでも、あなたがいなければこの街はなくなっていたかもしれません。住民を代表してお礼を言わせてください。」
孤児だった自分を受け入れてくれた大切な人がいる故郷を守れたこと。その嬉しさは同じ孤児育ちだからわかる。私の故郷でと考えたら私も同じようにお礼するだろう。
「そっか。じゃあさそのシャーリーの大好きな街を案内してよ。改めてお礼としてさ。」
「...はい。ぜひ案内させてください。」
嬉しそうに答える。
「私おなかすいたな。どこかいい店知らない?」
「とびきり美味しい店ありますよ」
「いいねまずそこに行こうか。」