昼食
こんがり焼けたウサギの皮をはぐ。この皮は以外にも服などの素材で汎用性が高いらしく銀貨一枚にはなるからしっかり回収しておく。銀貨一枚あれば飯一回分にはなるからね。
慣れた手つきで皮をはぎ肉を切り分けている私の姿をシャーリーは軽蔑するような目で見ている。そんな目で見られるのは少しきつい。意地でも食べさせて美味いといわせてやる。
「できた。」
「...匂いはおいしそうですね...」
こんがり焼けたウサギ肉の香ばしい匂いはやはり美味そうに感じるらしい。
「それでは私はお弁当を食べますね。」
「シャーリーもウサギ肉食べてみなって。だまされたと思って。」
「ウサギ肉が美味しいのは知ってますよ。ギルドの食堂にもウサギ肉あるので。でもこれは魔物じゃないですか。魔物食べるなんて聞いたことありませんよ。」
「魔物も動物も少し見た目が違うだけだと思うんだけどなぁ。」
なんで世の中の人々がここまで魔物肉を毛嫌いするのかがわからない。というかシャーリーは孤児院の出なんだから魔物肉ぐらい食べたことないのだろうか。私も勇者も孤児院時代は魔物でも食べないと生きていけなかったというのに。
そういえばシャーリーは魔法の才でギルドマスターの養子になったんだっけか。そう考えると恵まれた才能に少しむかついてきた。
「シャーリー。」
「はい?」
こっちを向いた瞬間にウサギ肉を一切れ押し込んでやった。必死に吐き出そうとしていたがとっさのことで飲み込んでしまったらしい。どうしようと言いたげな顔をしながら必死に自分に状態異常回復魔法をかけ続けている。しかし、しばらくすると魔法かけなくなった。
「なんてことするんですか。」
涙目になりながら訴えてくる。
「でも美味かっただろ?」
シャーリーは少し考えた後。
「確かに...」
そう一言つぶやいた。
「必死に吐き出そうとしていたのではっきり味はわかりませんでしたが、悪い味はしなかったですね。毒もないようでしたし。」
「でしょ。もう一切れ食べてみなよ。」
そう言って彼女に一切れウサギ肉を渡す。
彼女は、まだ少し不安なのか恐る恐る口に運び、ゆっくり噛んで食べ始める。目をつぶりながら恐る恐る食べていたのは最初の数噛みでやはり美味しかったのかどんどん噛むスピードも速くなってあっという間に食べてしまった。
「そんなにおいしかった?」
「はい。普通のウサギ肉よりもさらにさっぱりで食べやすく、歯ごたえもあっておいしいですねこれ。」
「魔物のおいしさが分かってくれたのならうれしいよ。また今度別の魔物も食べようね。あ、弁当少し頂戴。」
シャーリーの弁当を一口もらう。めちゃくちゃ美味い。最近ウサギ肉ばかり食べていたから久々ほかのものを食べた気がする。ぱっと見白飯にギルドの食堂の残飯を合わせたおかずに見えるが、弁当の見栄えはとてもきれいで、茶色のおかずが多い割にはきれいに色が整っているように見える。シャーリーの女子力の高さが弁当一つでよくわかった。私にはこんな弁当作れないな。
「美味しいですか?」
「うん。めちゃくちゃ美味い。シャーリー女子力高いんだね。また作ってよ。」
「はい。こんなのでいいならいつでも。」
それからシャーリーと談笑して楽しい昼食タイムは終わった。シャーリーが魔物の美味さを知ってくれたおかげで私に対する軽蔑の眼はほぼなくなった気がする。
あとはゴーレム討伐するだけだ。魔力体制を持つゴーレム。骨が折れそうな相手だがやるしかない。




