作戦会議2
「ごり押し」
「はい?」
「魔法耐性のあるゴーレムを討伐する方法はごり押しだ。」
シャーリーは黙ってしまった。
「えっと、そのゴーレム魔法耐性を持ってるんだよな。」
「はい。」
「魔法耐性って魔法でもダメージは入ることは知ってる?」
「はい。大幅にダメージカットするのが耐性ですからね。前にそのゴーレムを討伐しようと攻撃を仕掛けたパーティーの話によると、氷の上級魔法を一発当てただけじゃほとんど意味をなさなかったらしいです。」
上級魔法一発じゃひびすら入らないか。骨が折れそうだな。
「じゃあ、何人かの魔法師で一斉に上級魔法を仕掛けてみたら?ひびぐらい入るんじゃない?」
「そうかもしれませんが。この街には魔法師が多く集まっているとはいえ上級冒険者はあまりおらず、ほとんどの魔法師が上級魔法を1,2発撃つと、魔力切れを起こしてしまって歩けなくなってしまうんですよ。」
「つまり、上級魔法を一斉に当てたところで討伐しきれなければ、逃げるのが難しくなって下手に仕掛けられないということか。」
「そうです。」
なるほど。というかこの街あまり上級魔法師がいないのか。転生魔法についての手がかりは見つからないかもな。
「まぁ。明日になればわかるよ。とりあえず明日ゴーレム倒す気で町の外に出るから準備してきてね。それじゃ。」
「あ、ちょっと、まって...」
シャーリーに集合時間と場所だけ伝えて店を出た。この店は私の特技を言うには人が多い。
宿に戻って寝ることにする。そういえば今日この街に来たんだっけか。まったく休む時間ないじゃん私。まぁゴーレムかたずけてから休むとしよう。
夜が明け身支度を整えシャーリーとの待ち合わせ場所に行く。時間ぴったりについたはずだが彼女はすでに待っていた。
「おはよ。いつからいたの?」
「おはようございます。20分前ぐらいですよ。」
「早いね。それじゃ行こうか。」
「はい。っとその前に勝算教えてください。」
「そのうちわかるよ。」
ここはまだ人の目につく。もう少し人目のないところに。
とりあえずゴーレムがいるという場所の半分ぐらいまで歩いた。シャーリーは道中ぶつぶつ言っていた気がするが、とりあえず無視した。
「おっ。」
思わず声が出た。というのも例の美味いウサギが目の前を通ったからだ。昨日までに狩ったウサギはほぼ食べてしまったし、私はまだウサギに飢えている。
「どうしたんですか?」
「しずかに。」
昨日まで数匹狩ってわかったのだが、あいつら魔物の癖に人間を見ると逃げ出すのだ。こっそり魔法を放つのが一番効率がいい。
「そうだいい機会だからわたしの特技を見せてあげるよ。」
「え。もしかしてあのたいして害のない魔物狩ろうとしてます?時間がもったいないですよ。急ぎましょうよ。」
「いいから見てなって。」
杖を構えてウサギの魔物に向ける。魔力を杖の先に集中して構築過程を魔力で短縮しほぼノータイムで中級魔法を魔物にぶつける。魔物はこんがり美味そうな色に焼けあがった。
本当は上級魔法で実践して見せてやりたかったが、上級魔法ではウサギが焦げてしまうので仕方がない。
「えっと、スクロールを使ったのですか?モモさんってもしかして魔術師だったんですか?」
「いや、間違えなく私は魔法師だよ。」
「ということはうわさに聞く魔法構築短縮というやつですか。中級魔法とはいえ使った後にまだ立っていられるなんてすごい魔力量ですね。もしかして魔力回復のポーションとか飲みました?」
さすがは賢者。その辺の知識はしっかりあるようだ。ただ彼女の眼にはただ魔力量が少し情人よりも多く魔法構築短縮が使える珍しい人としか映っていないようだ。
「うーん。今のじゃわかんないよね。私が伝えたかったことは、私は魔法構築短縮が使えることに加えて、魔力が無尽蔵ってこと。」
シャーリーは黙り込んだ。そんな人間見たことないだろうし仕方がない。
数分沈黙が続き、やっと口を開く。
「面白い冗談ですね。そんな人間がいるなんて聞いたことないですよ。この世界でそんなことをなしえるのは魔の王ぐらいなのではないのですか?」
「確かに、魔王って魔の王だもんね。それぐらいできるのかも。じゃあ私って魔王の素質あり?」
冗談のつもりだったが気まずい空気になってしまった。シャーリーはまたもや口を閉ざしてしまった。どうしようか。
「とりあえずさ飯にしようか。ウサギ肉も手に入ったことだし。」
「ウサギ肉ってまさかさっきの魔物を食べる気じゃないですよね?」
「え、そうだけど。」
呆れを通り越して軽蔑の目線を感じる。人外的な特技に加えて魔物まで食べだしたらもう人間だとみられていないのだろうか。
「あの、お弁当を一応用意したのですが...いらなそうですね...」
「お弁当?ほしい。ありがとう。」
シャーリーの作るお弁当はめちゃくちゃ美味しそう。それも食べたい。
弁当も食べるし、ウサギも食べよう。なんならシューリーにウサギを食べさせて魔物の美味さを教えてやりたい。
「それじゃあ飯にしようか。」