作戦会議1
シャーリーと二人の空間。そういえばさっきまでギルドマスターを通して話をしていたから、どんなことを話せばいいのかわからない。彼女からも話そうという姿勢は感じない。彼女もいきなり二人きりにされて気まずいのだろう。まして私が食事の途中だから話しかけてもいいのか悩んでいるのもあるのだろう。ここは私から切り出してあげたほうがよさそうだ。
「えっと、シャーリーって歳いくつ?」
「は、はい。16です。」
「16ということは私の一つ下だね。それならタメでもいい?よかったらそっちも気軽に話してくれると嬉しいけど。」
...少し返事が遅い。いきなりフレンドリーすぎただろうか。
「は、はい大丈夫です。あ、あの私は、基本誰にでも敬語なので...」
「そっかそっか、なら無理強いはしないよ。短い間かもしれないけどよろしくねシャーリー。」
「はい。よろしくお願いします。モモさん。」
話してみるとシャーリーは以外にもおしゃべりな性格で、オドオドしたしゃべり方も会話が進むにつれどんどん堂々と話すようになり、だんだんと彼女のことが分かってきた。
彼女は孤児院の出で、本当の親は知らないらしい。孤児院児の中でも突出した魔法の才があり、その才能をギルドマスターに買われ、ギルドの職員兼臨時冒険者的なポジションで仕事をしながらギルドマスターと暮らしているらしい。
私も孤児院の出なので孤児院育ちが苦労することはとても共感できてすぐに仲良くなった。
「そういえば、勇者さんたちは今日はこの場には来ないのですか?せっかく一緒にお仕事するのだから挨拶をしたいのですが...」
とうとう来たか。隠し通せるなんて思ってなかったし、隠し通そうとも思わないのでそのまま伝えることにする。
「えっと、そのことなんだけどね...実は勇者はこの街にはいないの。」
は?と言いたそうな顔をしているのが分かる。というよりも思いもしなかった言葉が私の口から出てきて理解できずにいる顔だろうか。
「えっと、これからこの街に来て合流するということでしょうか。」
彼女なりに一番可能性のありそうことを考えたのだろう。普通に考えてそんなことわざわざする必要ないが。
「いや、勇者はこの街にいないし、この街に来ないよ。」
彼女がまた固まった。無理もない。
「えっと、でもモモさんって勇者パーティーの方ですよね?もしかして今休暇中で一人旅行とか...」
おしい。いい線だと思うぞ。
「おしいけど違うね。私はもう勇者の仲間じゃないんだ。」
「え。」
彼女がきょとんとした顔で見てくる。
「私は勇者パーティーを抜けて一人旅してるんだ。だからこの街に勇者はいないし来ないし連絡も取れない。」
「えっと、つまり...?」
「つまり、ゴーレム討伐をするのは私と君の二人。」
「え。」
少し固まって一言漏れた。
「いやでも、魔法耐性のあるゴーレムですよ?魔法職以外の人がいないと...」
「うん。そうだね。」
「でも今は一人旅中だからモモさん一人しかいない...」
「うん。」
「モモさんは炎属性のみの魔法師...」
「うん。」
「うん。じゃないですよ。どうするんですか。というかなんで引き受けたんですか。」
ここにきて初めてシャーリーがキレた。無理もない。
「いやあそこまで事情を聞いちゃったら引き受けたくもなっちゃうよね。」
「普通に無理なものは無理だと断ってください。今ならまだ事情を言えばなかったことにしてくれると思います。言いに行きましょう。」
「無理?私は無理だとは思ってないよ。」
そう。話を聞いて本当に無理そうならさすがに私でも引き受けない。
「たしかに、だましたような形で危険な任務に付き合わせちゃったことは謝る。嫌なら辞退してもらってもいい。できれば回復魔法を近くで使える人が欲しいけど。」
少しおねだりするように言ってみる。断られたのなら仕方がない。
彼女は少し考えた後小さく溜息を吐いて口を開いた。
「はぁ。乗り掛かった舟です付き合いますよ。でも危なくなったら逃げるこれだけは守ってください。私じゃ蘇生術は使えないので足とかなくなったら終わりだと思ってくださいね。」
「怖いこと言うね。でも来てくれるならよかった。」
おねだりもしてみるものだ。それに賢者だから蘇生術までは使えないのか。そこは要注意だ。
「ちなみに魔法耐性があるゴーレム相手に魔法師か使えない私たちがどこに勝算があるのか教えたいただいても...?」
魔法耐性のあるゴーレム討伐を魔法のみで討伐するのはかなり難易度が高い。今回は事情が事情だから私の魔法構築短縮をフルに活用する以外に勝ち目はないだろう。だからシャーリーには私の秘密を話すしかないだろう...




