第6話 自然の中の野生児マリィ
大陸インガルトの中でもマリィの育ったロメア地方は自然が濃い。
マリィ達パーティメンバーは荘厳なグレイアス山が納めるチモシー一面の大地にいた。
空も青くゼニスブルーをしていてまるで映画のように風光明媚な光景が広がる。
たまに『ヒヨ・ヒヨ…』と聞こえてくるのはキバシガラスだろうか。
チモシーは葉が長く牧草となる草で、マリィ達はチモシーを踏みつけつつ歩く。
「今から初戦闘かあ。このあたりはコボルトがいっぱいいるからねえ」
そうマリィが言うと、イツキは「コボルトの罠に引っかかるなよ」とマリィが心配げだ。
すると少しリンゴの木が群生している場所に行き着く。
「あーかいリンゴ! お腹空いたねー!!」
マリィはそう言ってひょいひょいとリンゴの木に登る。
マリィのまるで子供の様な身の軽さにパーティ一同は苦笑した。
「ぷっ!…サル」
イツキにそう言われたマリィは「それ食べろ!」と言ってイツキにリンゴをぶん投げた。
もちろん古武道使いのイツキはそれくらい軽く避けたが。
キッ…キキキ…
カーサンは「早速お出ましたわね」と長剣と短剣を構え、ニガヨモギもショートボウを構える。
イツキは余裕そうに腕を構えると存在感を消し、コボルトに襲われないようにする。
現れたコボルトは2体でまだ幼体とちょうどマリィの戦闘の練習には良い感じだった。
コボルトはリンゴの木のあたりなら獲物が引っかかると思ったのだろう。
メーテルは「さあマリィ、援護するからコボルトと戦ってみてね」とマリィに指示する。
マリィは「はい、行ってきます♥」と本当に嬉しげだ。
コボルトに取ってはたまったものではないだろうが。
「ちょーっ!」と言ってロングソードを構えマリィはコボルトの首を狙って一閃する。
クリティカルヒット!
コボルトの首が派手に飛んだ。
イツキ達バーティメンバーはおおっと言ってびっくり。
しかしマリィは偶然でたクリティカルヒットの衝撃で手が痛くなり、思わずロングソードを落としてしまう。
「あ! 痛たたた…」
キーッ!
マリィは当然コボルトに飛びかかられた
ボカスカボカスカ!
マリィは女性としては力が強めだと言うこともあるのか、コボルトに飛びつかれたのに割と無傷で素手でやり合っている。
マリィの初戦闘だと言うのにまるでこれでは子供のケンカだ。
「はい、終わり」と言ってニガヨモギがショートボウと放つと、頭の急所に当たってコボルトは絶命した。
マリィ初戦闘の傷は、マリィの陶器のような肌にうっすらコボルトの爪の傷が残るくらいで終わった。
このコボルト、相当弱かったようだ。
カーサンは「…マリィ攻撃呪文は…?」とマリィに話すとマリィは「まだ使えないー」と言って笑った。
それを聞いたイツキは「やっぱりサルだ」と呆れた顔でマリィを見ていた。
そしてコボルトの身ぐるみを剥ぎ、その日はやっぱり野営はせずにアジトの宿屋に帰ろうと言うことになった。






