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1-6:僕の使命

 この物語は、架空のTRPGシステムの世界を舞台にした疑似異世界転移物です。この作中に登場するシステムは、既存のTRPGシステムや、現実に存在するプレイグループとは一切の関係がありません。

「ということなんじゃないんですか?」


「…………」


 僕の書き出した狩りの協定のルールをナヤさんはまじまじと見つめ、一言。


「そうかも」


「そうなんですよ。だから、他の狩人の人たちがすぐに狩りを終えることができたのは、経験でも直感でもなく……他の人たちの獲物に気付き、そこから逆算で自分の獲物を理解したからなんですよ」


「待って! そこがおかしいと思う! どうして自分の獲物は最初からわからないの!?」


 それは僕も疑問だった。他の人の獲物の表示は見えるのに、自分の、ナヤさんの表示だけ見えなかったのだ。もしもここに理由があるとしたら……


「その方が……」


「その方が?」


「おもしろいから」


「…………」


 我ながらひどい考えだ。さすがにナヤさんは怒るかもしれない……


「ふっ、あはっ、あははははっ!」


 怒るどころか笑い始めた。


「そっか! そうだよね! うんうん! 世界はおもしろいんだ! おもしろいようにできている! その方がいいもんね! きっと精霊は、そうやって世界のシステム、ルールを作ったんだね! 納得だよ!」


 納得されてしまった。


「なるほどなぁ。精霊師の力……それは、世界のルールを読み解く力なんだね。精霊は世界を面白く作ったのに、私達はその面白さが理解できない。ただ漠然と世界で生きている。それを『直感』だとか『経験』だとか言って、考えようともしない。そもそも考えられないのかもしれない。でも君にはそれができる。なら、精霊師の仕事は……」


 振り返った彼女は、満面の笑みで僕の手を取った。


「世界を、楽しくすることなんだ!」


 呆気にとられてしまった。僕が、世界を、楽しく? 実感がない。あとそれはイケメン主人公キャラの仕事ではなさそうだ。でも、たしかに。僕にしかできないことなのかもしれない。


「ねぇ、レンヤ君」


「なんですか?」


「私、世界はもっと楽しくなればいいと思っていた。だから……私といっしょに、世界を楽しくしようよ!」


「…………」


 名前負けしているとか言われるのはもう嫌だった。名前に負けないかっこいい男になりたかった。強敵に立ち向かい、世界を救う。主人公に、ヒーローになりたかった。


 でもそれは、僕の……無い物ねだりだったのかもしれない。


 みんな誰もが得意なことがある。向いたことがある。それは、大げさな言葉を使うなら「使命」というものなのかもしれない。


 もし、僕に使命があるのなら、それは、魔王を倒し世界を救うことなどではなく……


「うん」


 ナヤさんに手を差し出す。やっぱりちょっとだけ身長差が嫌にはなるけど。


「僕も、ナヤといっしょに世界を楽しくしたい」


 それがきっと、僕の命の意味なんだ。

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