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008 幼女の噂を変な伝承で広めてはいけません

 この世界の転生者は、悪魔に魂を売った魔族と言う種族の人が殆どで、私の様に人でありながら転生者なのは稀である。

 そして、転生者は誰もが前世の記憶を持っているわけでは無く、記憶を持たない人が殆どだ。


 転生者の一番の特徴は特殊能力にある。

 特殊能力と言うのは転生者が使える能力で、前世の記憶の無い者は一つで、前世の記憶がある者は二つ使えるという変わったものだ。 

 そして、前世の記憶が無い転生者は、自分に能力があると気付かずに一生を終える事もあるのだとか。


 ちなみに私にも二つの特殊能力があり、魔法を使う時に複数の属性を操る能力と、無意識に変態を引き寄せる能力を持っている。

 正直、一つ目は便利だけど、二つ目のせいで本当に苦労していたりする……。

 役に立たないどころか災難しか呼ばないこの能力が、オートでオンオフ出来ないという酷い仕様で、大変な毎日を送っているのだ。

 私の平穏はどっちだ!? って感じである。


 そんなわけで、私は自らを転生者と発言したモーフ小母さんに驚いていた。

 何故なら、自分が転生者で、特殊能力があると知っていたからだ。

 私が驚いていると、モーフ小母さんは微笑みながら話し出す。


「本当はね。この事は誰にも言わない様にしているのよ。でも、魔性の幼女のジャスミンちゃんを見て思ったの。こんな小さな子が自分の事を隠さずに、魔性の幼女と名乗っているのに、大人の私が黙っているなんておかしいって。だって、ジャスミンちゃんも転生者なんでしょう? 噂で聞いているから知っているのよ」


「モーフ小母さん……」


 ごめんなさい。

 魔性の幼女だなんて、一度も名乗った事ないの。

 皆が勝手に言ってるだけで、むしろ凄く嫌なのその通り名。


「その幼女、不思議なパンツの力と精霊を使い、世界を救う。それが、この村にも伝わっている伝承よ」


 衝撃的な意味不明な伝承に、思わず私もニッコリと笑顔になり硬直する。


「流石ジャスミンね。私も鼻が高いわ」


「ぱ、パンツの力っ。ぷぷぷ。ご主人。良かったッスね。ぷぷぷ」


 トンちゃん。笑いが漏れてるよ?

 って言うか、伝承おかしくないかな?

 パンツの力って何?


 私がニッコリ笑顔のまま困惑していると、ギャンジさんが真剣な面持ちで口を開く。


「カーミラか。セレネって子と声が同じってのは、本当なのか?」


「はい。息子に書かせた日記には、確かにそう書いてあります」


 モーフ小母さんが答えながら日記帳を取り出して、私達の目の前で開く。

 私は開かれた日記帳を見て、書かれた日記の内容を確認する。


 本当だ。

 カーミラって女の子と、セレネさんの声が同じって書いてある。

 って、あれ?

 カーミラ……カーミラ……うーん。

 あっ。そうそう。

 ヴァンパイアの女性版をカーミラって言わなかったっけ?

 そう考えたら、やっぱりこの女の子が吸血鬼なのかも。


「俺の勘がセレネって子が怪しいと言ってやがる。そのセレネって子に話を聞きに行くぞ」


 そう言って、ギャンジさんが立ち上がる。

 私もギャンジさんが立ち上がるのを見てから立ち上がった。


「ご主人、ボク等もついて行くッス?」


「うん。私もセレネさんが怪しいと思うの」


「……そうね。声が同じなんですもの。無関係なわけが無いわよね」


 リリィも私に同意しながら立ち上がる。

 ただ、リリィは何か別の事を考えている様に、私の目に映った。

 私がリリィの表情を見て首を傾げていると、ギャンジさんがニヤリと笑い声を上げる。


「決まりだな。それじゃモーフさん。俺達はセレネって子に聞き込みに行って来るぜ!」


「はい。よろしくお願いします」


 モーフ小母さんは返事をすると、深々と頭を下げた。



 モーフ小母さんのお宅を出ると、夕陽に照らされて、私は目を細める。

 どうやら、お話をしている間に大分時間が経っていたようだ。

 私が目を細めながら、夕陽を見て綺麗だなぁと考えていると、ギャンジさんが私に視線を向けて話しかけてきた。


「もう直ぐで夜みたいだな。これならセレネって子の家に行くより、その子が働く居酒屋に行った方が良さそうだ」


「うん」


 私が返事をすると、ギャンジさんは歩き出した。

 その姿を見て、私もてくてくとギャンジさんの後ろをついて歩き出すと、私の横にリリィが並んだ。

 そして、リリィは私に顔を向けて話しかけてきた。


「ジャスミン。思ったのだけれど、やっぱり私達は話に出て来た遺跡に行ってみない?」


「え?」


「気がついたら遺跡にいたって所が、どうも気になるのよね」


 あーうん。

 確かに言われてみると気になるかも。


「気がついたら遺跡にいたと日記に書いてあったでしょう? 私の予想だと、それは行ったのではなく、連れて来られた。だと思うのよ。そうなると、どうやって遺跡に連れて来られたのかも気になる所だけれど、それよりも遺跡に連れて来られた理由が一番気になるのよね。それで考えてみたのだけど、その遺跡に何かあるのかもしれないと思ったのよ」


「そっか。うん」


 私は返事をしてから頷いて、真剣な面持ちでリリィと目を合わす。


「セレネさんの事はギャンジさんに任せて、私達は遺跡に行こう」


 多分だけど、ギャンジさんはカーミラと名乗った女の子とセレネさんが同一人物だと思っている。

 私も実際そう考えてるし、だからセレネさんに会いに行こうと思ったのだ。

 だけど、確かにリリィの言う通り、遺跡に行く理由が謎だった。

 別にパンツを買わせるだけなら、わざわざ遺跡に行く必要もないと思うし、何か理由があるのかもしれない。

 そう考えると、遺跡を調べてみるのもありだと私は考えた。


 そんなわけで、私はギャンジさんに説明をして、遺跡を調べに行く事になった。

 ギャンジさんもリリィの考えに納得して、それならと遺跡の場所を教えてくれた。

 そうして夕陽が沈む中、私はトンちゃんを肩に乗せて、リリィと一緒に遺跡に向かって歩き出した。

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