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006 幼女は変態な事件に関わりたくない

 白くて冷たい甘~いソフトクリームをペロッと舐めながら、私はベンチに座ってリリィとギャンジさんのお話を聞いていた。

 ギャンジさんはさっき私達を取り囲んでいた小父さん達の中にいた人相が悪かった小父さんで、傭兵稼業をしているらしい。

 ギャンジさんは魔幼女と呼ばれる吸血鬼の女の子に弟さんを殺されてしまい、それからずっと弟さんの仇を取る為だけに、魔幼女を追っている。

 元々は都会の方で活動をしている様なのだけど、この村に魔幼女が出るという情報を手に入れてやって来たようだ。

 それで、この村に雇われて、弟さんの仇を取ろうと考えているのだとか。


 と言うわけで、そんなお話を聞かされながら、私はトンちゃんと一緒にソフトクリームをペロペロと舐めている。

 ソフトクリームは甘くて美味しくて、一舐めごとに私は笑顔になる。


「ご主人。ソフトクリーム美味しいッスね」


「うん。甘くて美味しいね」


 私がトンちゃんと微笑み合っていると、ギャンジさんが眉根を下げながら私に視線を向ける。


「嬢ちゃん。本当に噂の魔性の幼女さんなのか? こうやってみると、見た目通りの子供にしか見えないな~」


 見た目通りの子供だよ。


「なあ魔王さん。本当にこの子は頼りになるのか?」


 そのリリィに対しての、魔王さんってのもどうなの?


「何言ってるのよ。頼りになるかどうかで言えば、ジャスミン程可愛い女の子はいないわ」


 答えになってないよリリィ。


「魔王さんがそう言うなら、まあ、俺もこれ以上は言わねえよ」


 え?

 今ので納得しちゃうの?


 私が2人の会話に困惑していると、ソフトクリームを売っていた小父さんが、小走りで声を上げながらやって来る。


「おーい! ギャンジさん! モーフさん家のビーが、魔幼女に襲われたそうだぞ!」


「何だと!?」


「リリィ、トンちゃん」 


 私はリリィとトンちゃんの名前を呼んで、顔を見合わせて一緒に頷き合う。


 ギャンジさんと共闘して魔幼女を倒す事になったのだけど、私は倒すという事に抵抗があった。

 だから、リリィとトンちゃんには私の考えをあらかじめ伝えていた。


 私の考えとは、倒すは倒すでも、殺さずに懲らしめる感じでいくという考えだ。

 トンちゃんには人殺し相手に甘いと言われてしまったのだけど、私は自分の考えを変える気はない。

 だからと言ってギャンジさんを邪魔したり、考えを否定しようとは思ってない。

 だって考え方は人それぞれだし、私だってリリィが殺されちゃったら、今と同じ考えでいられるかなんて分からないから。


 モーフさんのお宅へ辿り着き、扉を開けて家の中に入る。

 家の中は静まり返っていて、窓には全てカーテンがかかっているか、木の板で家の中に光が入らないようにされていた。

 そして、家の中に入って玄関で立ち止まった私達を、その家に住む50歳位の小母さんが迎え入れる。


「ギャンジさん。うちの息子を見てやって下さい」


「ああ、分かった。上がらせてもらうぞ」


 ギャンジさんが返事をすると、小母さんが私とリリィに視線を向けて、困惑した表情で訊ねる。


「あの、この娘達は?」


「ああ。この方達は、魔性の幼女と魔王さんだ」


 違うよ?

 ジャスミンとリリィだよ?


「まあ。あの有名な」


 小母さんが両手で口元を隠して驚く。

 その姿を見て、私が複雑な気持ちになっていると、トンちゃんが私の肩の上で笑いを堪える。


 それから小母さんに案内されて、魔幼女の被害にあった息子さんのいる部屋まで辿り着き扉を開ける。

 部屋の中は真っ暗……では無かった。

 窓は閉め切っていて、カーテンで陽の光が部屋に入らない様にしていたけど、部屋の中にある照明は点いていて明るい。

 そして、そのせいで部屋の惨状がハッキリと見えていて、私は顔を引きつらせる。


「ご主人。この事件は放っておいても良いと、ボクは思うッス」


「うん。私もそう思うよ」


 私はトンちゃんの意見に同意して、顔を引きつらせながら失笑する。


 さて、何故私とトンちゃんがこんな反応を見せてしまったのかと言うと、部屋の中に散らばっている物が原因である。

 部屋の中には、そこ等中にパンツが散らばっていたのだ。

 しかも、女の子用の。


「何だよ母さん。俺は今魔幼女たんから貰ったおパンチュを、どう部屋に配置するか悩んでいて忙しいんだ。用が無いなら出て行ってくれ」


 そう口に出したのは、部屋の真ん中で、私達に背中を向けて座っていた20歳位の見た目のお兄さんだった。


「ビーの為に、傭兵のギャンジさんが来てくれたのよ」


「傭兵のギャンジさんだって!?」


 お兄さんは驚いて立ち上がり、私達に振り向く。


「どう言うつもりだよ!? 魔幼女たんは俺の――っ!?」


 お兄さんが怒鳴って何かを言おうとしたその時、私と目を合わせて言葉を詰まらせる。

 そして、私の事をしばらく見つめると、ごくりと唾を飲みこんで大声を上げる。


「うっひょおーっ! 超絶美幼女キターッ!」


 お兄さんの目は血走り鼻息が荒くなり、ハアハアと息を荒げて両手の指をくねくねと怪しげに動かしながら、私にじわじわと近づき始める。

 私はその絵に描いたような変態な症状を見せたお兄さんにドン引きしながら、顔を青ざめさせて一歩後ずさる。

 そして、ギャンジさんが私の前に立って、リリィがお兄さんから私を遠ざけさせる。


「ビー君と言ったね? やはり君は魔幼女の毒牙にやられてしまった様だな」


「どけ! おっさんに用はねえ! 俺はそっちの超絶美幼女とエッチな事をするんだ!」


「やめてビー! あなた、そんな子じゃなかったでしょう?」


「うるせーババア! 年増は引っ込んでろ!」


 う、うわぁ……。

 何だか変態な事になってきたよ。


 私がげんなりしていると、トンちゃんが私に話しかける。


「ご主人ご主人」


「うん? どうしたの?」


「あの変態野郎の首筋を見るッス」


 変態野郎って……。

 まあ、その通りだけど。


 私はトンちゃんに言われた通りに、変態野ろ……お兄さんの首筋に視線を向ける。

 するとそこには、吸血鬼に血を吸われた様なあとが残っていた。


 間違いない。

 やっぱり、魔幼女って言われているのは吸血鬼なんだ。

 でも、何で吸血鬼に血を吸われて、変態になっちゃうんだろう?

 話を聞いてる感じだと、血を吸われる前は変態じゃ無かったみたいだよね?

 うーん……。

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