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005 幼女を取り囲むのは止めましょう

 精霊の里は豊かな自然に囲まれた、とっても綺麗で素敵な場所でした。

 そう。

 場所でした……。


 何故過去形なのかと言うと、それには悲しい事情がある。

 それは……。


「ねえリリィ。スピリットフェスティバルが終わっちゃうよ?」


「大丈夫よジャスミン。二日で不老の女の子を捜しだして、精霊の里に戻れば間に合うわ」


「そうだけど……」


「ご主人諦めるッスよ。さっさと終わらせて、精霊の里に戻るッス」


「うん」


 私は肩を落として力無く項垂れる。


 そんなわけで、私はリリィに連れられて、不老と名乗る少女が現れると噂されている村までやって来ました。

 ちなみに、ラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんは精霊の里でお留守番。

 サガーチャちゃんがサーチリングの新機能をつけると言って、私にプレゼントしてくれた物とは別の物を取り出して改良を始めたのを、プリュちゃんとラヴちゃんが興味津々に見ていたので残ってもらったのだ。

 ラテちゃんは興味ないと言って、ついて来なかっただけだけど……。


 私達が訪れた村は、何も無い草原が広がる平野の中心にある小さな村で、家畜を育てて生計を立てていた。

 おかげで、食用の動物さん達の小屋が多くて、なんだかちょっと獣臭い。


「あ、あれは!? 見るッスよご主人!」


「え? どうしたの?」


 トンちゃんが突然指をさして私の目の前に飛んで来るので、私は首を傾げて、トンちゃんが指をさした方へと顔を向ける。

 すると、その先には、ソフトクリームの屋台があった。


 おぉ。

 搾りたての牛乳を使ったソフトクリームって書いてある。

 美味しそう。


「ご主人! ぼくはアレが食べたいッス」


「よぉし。買っちゃおー!」


「流石ご主人ッス~!」


 そんなわけで、私は早足でソフトクリームの屋台へと向かう。


「小父さん。ソフトクリーム下さい」


 屋台まで辿り着くと、私は店員の小父さんに注文した。

 すると、小父さんは私の顔を見てから、顔を青ざめさせた。


「ひいっ。赤い瞳の幼女! お、俺は騙されねーからな!」


「え?」


 私が青ざめる小父さんに首を傾げたその時だ。

 突然、何処からともなく武器を持った小父さん達が数人現れて、私は囲まれてしまった。

 そして、その中でも一番人相の悪い小父さんが一歩前に出て、私を睨みながら話し出す。


「ついに追い詰めたぞ! 赤い瞳の魔幼女め! 俺の弟の恨み、今こそ晴らさせてもらう!」


「え!? 弟の恨みって何の事!?」


「とぼけるな! ロリコンだった俺の弟を誘惑して、殺した事は分かってるんだぞ!」


 ど、どうしよう?

 本当に意味が分からないよ?


 私が困惑していると、トンちゃんが私の肩の上に止まって、耳元で喋る。


「ご主人。もしかして、例の吸血鬼と勘違いされてるんじゃないッスか? 博士の話では、見た目がご主人と同い年位だって話だったし、多分そうッスよ」


「えぇー!? で、でも、確かにそうかも」


 って、年齢も同じ位で瞳の色が一緒だからって、早合点しすぎだよ!

 どうしようどうしよう?

 このままじゃ大変な事になっちゃう!


 私がトンちゃんの言葉に納得して慌てていると、私の予想が的中してしまった。


「がはーっ!」


「ぎゃーっ!」


「ぐあーっ!」


「げほーっ!」


「ごへーっ!」


 私を囲む小父さん達は、縦読みがガ行な悲鳴を叫びながら、次々と吹っ飛ばされていく。

 そして小父さん達を吹っ飛ばした張本人が、私の目の前に立ち、人相の悪い小父さんを睨む。


「私のジャスミンに手を出すとは良い度胸ね。ぶっ飛ばすわよ?」


 リリィ?

 私まだ手を出されてないし、既に殆どぶっ飛ばしちゃってるよ?


「な、何なんだお前は!?」


 人相の悪い小父さんが顔を青ざめさせて、一歩後ずさる。

 すると、人相の悪い小父さんの近くに立っていた小父さんが、震えながら私に指をさして叫んだ。


「ギャンジッ! 違う! 赤い瞳の魔幼女じゃない! この幼女は、魔性の幼女だ!」


 ……その呼び方止めて?


「何だと!? 魔王を配下にし、凶悪な魔族を滅ぼしたと言われている、あの魔性の幼女だと!?」


 滅ぼした覚えが無いんだけど?


「俺も知ってるぞ! ドワーフの国で、人々をパンツで救ったと言われている魔性の幼女だ!」


 パンツで救った覚えなんてないよ?

 って言うか、嫌な過去を思い出させないで?


「俺も知ってる! ある時はパンツで、そしてまたある時もパンツで、世界中の苦しんでいる人々を救ってくれる魔性の幼女だ!」


 それ全部パンツ。

 って言うか、話が飛躍されすぎて意味わかんない事になってるよ?


 私を囲む小父さん達が次々にパンツパンツと騒ぎ出し、そして、リリィがビシッと右手を前にかざして、小父さん達が静まりかえる。

 小父さん達はリリィに注目し、リリィが真剣な面持ちで口を開く。


「そうよ。アンタ達の言うそのパンツ。そのパンツこそ、ここにいるジャスミンのパンツよ!」


「「「うおおおぉぉーっ!」」」


 リリィの言葉を聞き、何故か小父さん達が涙を流しながら雄叫びを上げる。


 な、何これ?

 どうしよう意味わかんない。


 私が困惑していると、人相の悪い小父さんが前に出て、リリィに握手を求めるかのように右手を前に出す。

 すると、リリィは穏やかな笑みを見せ、人相の悪い小父さんと握手する。


「どうやら、俺達は救世主様に、とんだ勘違いをしていたようだ。すまなかったな」


「次やったら殺すから、気をつけるのよ?」


 リリィあのね。

 軽々しく殺すとか言わないで?


「ああ。勿論だ。しかし、噂の救世主様である魔性の幼女の配下の魔王に殺されるなんてご褒美を貰ったら、死んだ俺の弟が羨ましがっちまうぜ」


 全然ご褒美じゃないよ! 

 って言うか、あれ~?

 どうしよう?

 私はただソフトクリームを買いたかっただけなのに、リリィまでおバカな事を言い出すから、おかしな展開になりそうな予感がするよ?

 救世主とか言われてるし、何だか先が思いやられるよ……。

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