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003 幼女は天国に迷い込む

「ジャスミンのスリーサイズね」


「成程。スリーサイズか。確かに、それは必要かもしれないね」


「いやいやいや。ないよ? そんなの必要ないよ?」


 さて、開幕早々何の話をしているのかと言うと、私がサガーチャちゃんから貰ったサーチリングの話である。

 どうやら、サーチリングは現在まだまだ開発中のプロトタイプと言う事で、魔法と特殊能力の他に何の情報を取得出来ると良いだろうかと相談されたのだ。

 そして、リリィから出た言葉がスリーサイズだった。

 それで私がリリィの発言を否定したのだけど、サガーチャちゃん的にはそうでも無いらしい。


「いいや。ジャスミンくん、よく考えてみてくれ」


「え?」


「今後このサーチリングを開発していき、これを世間に広めて国の資金源にする予定なんだ。そうなると、その位のサービスは必要だと思わないかい?」


「え? サガーチャちゃんこれ売り物にするの? だったら尚更ダメだよ」


「主様、何でダメなんだぞ?」


「何でって、うーん。そうだなぁ……」


 改めて説明ってなると、言葉が出てこないなぁ。

 個人情報だからって言っても、そう言う言葉とは無縁のプリュちゃんには分からないかもだしね。

 それに、プリュちゃんや精霊さん達からしたら、スリーサイズなんて気にする様なものでもないもんね。

 うーん……悩むなぁ。


 私がどう答えようかと考えていると、リリィが私に代わって答える。


「スリーサイズは女の子の秘密のステータスだからよ」


「秘密のステータス? リリさん、そうなのか?」


「そうよ。だからこそ、それが分かれば、色々と妄想が……」


 あのぅ……リリィ?

 鼻血出てるよ?

 変な妄想しないで?


「秘密なら仕方がないんだぞ」


 あ。それで納得しちゃうんだ。

 確かに秘密って言われたら、純粋なプリュちゃん達精霊さんなら、納得してくれるもんね。

 深く考えすぎだったなぁ。


 私はティッシュを取り出して、リリィの鼻血を拭き取りながら話す。


「そう言う事だから、スリーサイズなんてダメなの」


「分かったんだぞ」


「そうだね」


 と、サガーチャちゃんも頷く。

 どうやら一件落着の様だと私は胸を撫で下ろす。

 正直、スリーサイズを勝手に見れる様にするだなんて、絶対ダメな行為だから、考え直してくれてありがたい。

 世の中は、スリーサイズを言いたくない系女子で溢れてるのだ。

 スリーサイズを簡単に調べられる装置が世に出回るなんて、考えただけでも恐ろしい。

 そんなわけで、私は考え直してくれたサガーチャちゃんに微笑む。


 良かった。

 サガーチャちゃんも分かってくれたんだね。


「スリーサイズも分析出来る様に改良するよ」


「何で!?」


 あれ?

 おかしいな。

 流れ的にはスリーサイズを見る機能を入れない流れだったよね?


 私が困惑していると、トンちゃん達が戻って来た。


「ご主人、何かあったんスか?」


「ジャス煩いです。恥ずかしいから黙るです」


「ジャチュ。皆見てる」


「え?」


 私はトンちゃん達に言われて、周囲に視線を向けて気がついた。

 いつの間にか、精霊の里の精霊さん達が私達を囲んでいて、私達の様子を楽しそうな顔で見ていたのだ。

 火の精霊さんや水の精霊さん、そして風の精霊さんに土の精霊さん。

 様々な精霊さん達が沢山いて、私達を囲んでいた可愛い。


 あれ?

 ここは天国かな?


「その顔止めるです」


 ラテちゃんが私の頭の上に乗って、そう言ってペチリと私の頭を叩く。


「ご主人。一応ボク達の契約者なんだから、皆の前ではしっかりしてほしいッス」


「ジャスは精霊四人と契約する精霊界の有名人です。ここに滞在している間位は、身を引き締めるです」


「え? 私って有名人なの?」


「がお」


「主様は大精霊のドリアード様とも仲良しだから、精霊の皆から凄いって言われてるんだぞ」


「そんな風に言われると照れちゃうなぁ」


 私が照れながら笑うと、またもやラテちゃんにペチリと頭を叩かれる。


「だからその顔止めるです」


「うん……」


「主様、元気出すんだぞ」


「いい子いい子」


 私が若干凹んでいると、プリュちゃんとラヴちゃんが私を励ましてくれた。


 えへへ。

 やっぱりプリュちゃんとラヴちゃんは優しいなぁ。

 こんなに可愛い2人に慰められたら、直ぐに元気になっちゃうよぉ。


「また顔がだらしなくなってるッス」


「今度は重いのをぶちかますです」


 そう言って、ラテちゃんが魔法を使おうとすると、リリィがラテちゃんのおでこにチョンと触れる。


「はいはい。その辺にしておきなさいね。ラテがジャスミンの事を、精霊の皆に自慢したいのは十分伝わってるわよ」


「そ、そんなんじゃないです!」


「ぷぷぷ。ラテール、珍しく顔が真っ赤ッスよ」


 ラテちゃんの顔が真っ赤!?

 見たい!

 絶対可愛い奴だよそれ!

 もの凄く見たい!


「煩いです! もう良いです! ラテは寝るです!」


 ぐぬぬぬ……。

 頭の上にいるから、ラテちゃんの可愛い真っ赤な顔が見れないよぉ。


「あっ。不貞寝したッス」


 私の頭の上で横になって寝たラテちゃんに、トンちゃんが面白そうに喋ると、黙って見ていたサガーチャちゃんが笑いだす。


「あはははは。ジャスミンくん達は相変わらずだね。何だか安心したよ」


「あはは。そうだね」


 私も苦笑して返事をして、改めて、私達を囲んでいる精霊さん達を見た。


 精霊さん達って、何で皆こんなに可愛いんだろう?

 見ているだけで癒されるのに、こんなに見つめられたら、可愛すぎて何かしてあげたくなっちゃうよね。

 うーん……あっ!

 そうだ!


 私は背負って来た鞄を開けて、パンケーキの素を取り出して一言。


「パンケーキ食べる?」

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