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031 幼女はお風呂のマナーに準ずる

「ジャスミンちゃん、あなた、タオル巻くって言ったわよね?」


「え? うん」


 タオルを巻かずに脱衣所から浴場に行こうとすると、プルソンさんに呼び止められてしまった。

 私は、やっぱり気付かれちゃったと思いながら、プルソンさんの顔を見上げて苦笑する。


「じゃあ、ちゃんと巻きなさい。はい、これ。私の予備のタオル貸してあげるから」


「ううん。大丈夫だよ。それに、まずは体を洗わないとだから、タオルなんて巻いてたら洗えないもん」


 と言うか、ここにいる皆は、体は男だけど心は女の子な人達ばかりだから、気にしなくて良いと思うんだよね。

 それに、やっぱりお風呂は何も着けずに入るのが礼儀だと思うの。


「プルソン気にしすぎっしょ。私等の裸見て興奮する男なんて、ここにはいないって」


 セレネちゃんが呆れながら、私と一緒に浴場に向かおうと歩き出す。

 勿論、セレネちゃんもタオルを巻かずにいる。


「そうぢゃぞ、プルソン。其方はもう少し、冷静になって判断をせい」


「冷静にって、あなたには言われたくないわ」


 プルソンさんは冷や汗をかきながら、鼻息を荒げて私を見ているフォレちゃんに視線を向けた。

 すると、お利口さんのラヴちゃんが体にタオルを巻いて、フォレちゃんの横に立った。


「がお」


 か、可愛い!


「あら。ラーヴちゃんは偉いわね」


「がお」


 ラヴちゃんが嬉しそうに笑顔をプルソンさんに向ける。

 その姿は本当に凄く可愛くて、私の胸はキュンキュンしてしまう。


 するとその時、脱衣所から浴場へ続く扉が開かれる。


「じゃ、ジャスミン!?」


「え?」


 扉が開かれて、私を呼ぶ声が聞こえて振り向く。


「あれ? オぺ子ちゃん?」


 なんと、そこに扉を開いて立っていたのは、私のお友達の男の娘、リリオペことオぺ子ちゃんだった。

 オぺ子ちゃんはお友達の男の子に恋をしている同じ村に住む男の娘で、最近はリリィがコーディネートしたお洋服を着て可愛らしくしているのだけど、今は浴場から現れただけに腰にタオルを巻いただけの姿だった。


「久しぶりだね。オぺ子ちゃんもこの都に来てたんだ?」


「オぺ子か、久しいのう。元気にしておったか?」


「がお」


「な、な、な……っ」


「うん? どうしたの?」


 私は首を傾げて、顔を真っ赤にさせて私を見つめるオぺ子ちゃんと目を合わす。


「誰?」


 セレネちゃんが顔を顰めてオぺ子ちゃんを見て訊ねたので、私はオぺ子ちゃんに手差しして自己紹介する事にした。


「私のお友達のオぺ子ちゃん。本名はリリオペ=ヤブランって言う名前だよ。オぺ子ちゃんは、すっごく可愛いんだよ」


「じゃ、ジャスミン! そんな事より、ここ男湯だよ!?」


「え?」


 あ、なるほどだよ。

 も~オぺ子ちゃんったら、心は女の子なのに、照れちゃって可愛いなぁ。


「気にしなくていいよ。オぺ子ちゃん」


「気にするよ! むしろジャスミンが気にしてよ! 僕達もう十歳になるんだよ!」


「えー」


 違うよ。

 もう、じゃなくて、まだ10歳だよぉ。

 まだまだお子様なんだから、大丈夫なのにね。

 オぺ子ちゃんってば、やっぱりまだまだ男の子なんだなぁ。

 あ、それとも、もしかして自分の裸が見られて恥ずかしいのかな?

 もう、本当に可愛いなぁ。オぺ子ちゃん。


「ジャスミンちゃん、一応言っておくけど、あなた達同い年なんだから、オぺ子ちゃんの反応は普通だと思うわよ?」


 そうかなぁ?

 10歳って言ったら、前世で言う所の、小学校4年生位だもん。

 まだまだ子供だよ。

 あ、でも……。


「オぺ子ちゃんも腰じゃなくて胸にタオル巻かなきゃダメだよ。可愛いんだから、男の人達が困っちゃう」


「オぺ子ちゃんもあなたには言われたくないと思うわよ」


「えー? そんな事ないよぉ」


 そう言って苦笑していると、誰かが私の背後に回りこみ、私の体にタオルを巻いた。


「ふえ?」


 私は驚いて、変な声を出して後ろに振り向く。

 すると、そこには、もの凄く顔を真っ青にさせた人物。


「リリィ?」


 そう。

 全裸のリリィが立っていた。


「ジャスミン! タオル忘れてるわよ!」


「あ、うん。って、リリィもタオル巻いたら?」


「私は良いのよ!」


 むしろリリィはスタイル良いから、私なんかよりよっぽど良くないと思うよ?


「り、りりりーぃー……っ!?」


「「あっ」」


 私とプルソンさんの声が重なった。

 そして、オぺ子ちゃんが顔を真っ赤にさせたまま倒れる。

 それはもう、頭から煙を出しながら豪快に。


「ほらー。リリィがタオル巻かないから、オぺ子ちゃんが恥ずかしさで倒れちゃったよ」


「そんなの放っとけば……あら? 何でオぺ子ちゃんがここにいるの?」


 そう言われてみると、何でだろう?

 うーん……。


 私は首を傾げて考える。

 すると、プルソンさんが大きなため息を吐き出して、私とリリィを交互に見て呟く。


「はあ……。あなた達、少しは自覚なさい」


 その言葉に、フォレちゃんが同意するかのように頷き、セレネちゃんは呆れた表情を浮かべる。


「そうよジャスミン」


「えー? リリィにだけは言われたくないよぉ」


「まあいいわ。何故いるかについて教えてあげる。オぺ子ちゃんは、今は私達のお手伝いをしてくれているの」


「え?」


「どう言う事よ?」


「話すと長くなるのだけど……」


 プルソンさんが苦笑した。

 私はお話が気になったので、聞きたいという気持ちをいっぱいめて、目をキラキラと光らせてプルソンさんと目を合わせた。

 すると、プルソンさんが微笑んで、お話の続きを再開する。


「私達が世界中の猫を集めて、猫喫茶を開こうとしているのは知っているでしょう? 実は、ジャスミンちゃん達が住んでる村に作る予定なの。それで村長さんに挨拶をしに行ったら、道中で怪我をした時に役に立つだろうって、お医者さんの子供であるオぺ子ちゃんを紹介して下さったのよ」


「そうだったんだぁ」


「ええ。オぺ子ちゃんは普段から手伝いで患者を見ているから、まだ子供なのに、とても優秀なのよ」


「わぁ。オぺ子ちゃんって、そんなに凄いんだ」


 私はオぺ子ちゃんに笑顔を向けて、顔をそのまま青ざめさせる。


 あれ? まだ気絶してるよ?

 これ、結構ヤバいやつなんじゃ?


 私が若干の焦りを感じて、どうしようかと動揺すると、セレネちゃんが呆れながら私に話しかけてきた。


「ってかさ。話変えて悪いし、今更なんだけど、ジャスは何で裸なのに恥ずかしがらないの? いつもリリーにスカート捲られたりしてる時、すっごい抵抗見せる位には恥ずかしがって嫌がってんじゃん」


「え?」


 突然何を言いだすのかと思ったら、そんな事?

 もう。

 わかってないなぁ。

 セレネちゃんってば、前世が神様って言っても、まだまだお子様なんだから。

 仕方が無い。

 ここは、大人のレディである私が教えてあげましょう。


 私は一人の大人の女として、セレネちゃんに優しく言葉をかける。


「お風呂は裸で入るのがマナー。だから、裸になる事は恥ずかしい事じゃないんだよ」


 そう。これはハッキリと自信を持って言える。

 だってそうでしょう?

 タオルを巻いて湯船に浸かるのは、間違いなくマナー違反なのだから。

 だから、私の考えは正しいのだ。

 確かにリリィみたいに、私と同い年でも、凄くスタイルの良い女の子であれば多少の配慮として巻く事も必要だろう。

 だけど、それはあくまでお風呂に入っていない間だけ。

 入る時はタオルを外す。

 それには、男だからとか、女だからとか関係ない。

 それがマナーであり、正しいお風呂の入り方なのだ!


 だけどこの時、私はセレネちゃんから、とても哀れむ様な視線を頂きました。


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