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020 幼女は神々の遊びに巻き込まれる

 精霊の里に燃え広がっていた炎は消え去り、平和が訪れる。

 ギャンジさんを含めた6人の侵入者は、スピリットフェスティバルの会場の中心で縛り上げられている。

 私やリリィにセレネちゃん、それにトンちゃん達やドリちゃんを含めた精霊さん達は、6人の侵入者を囲っていた。


 そして今、精霊の里には新たな事件が発生してしまっていた。

 ギャンジさんのオートガードの力の影響で、私のお洋服がパンツと一緒に燃えてしまったのだ!

 と言う悲しい出来事が起きたのだけど、それは全く関係なくて……。


「お前等気がつかないか? 俺達の目的は他にある」


「だったらそれを早く言いなさいよ」


 リリィがギャンジさんの頭を踏みつけながら、ゴミを見る様な視線を向けると、ギャンジさんがニヤリと笑って答える。


「俺達の目的、それは大精霊の誘拐だ」


 私の周囲にいた精霊さん達が、ギャンジさんの言葉を聞いてざわつき出す。


「そう言えば、これだけの騒ぎなのに、大精霊様達の姿が見えないッスね」


「言われてみればそうです。ここにいるのはドリアード様だけです」


 トンちゃんとラテちゃんが呟くと、ギャンジさんと他の5人もニヤニヤと笑いだす。

 それを見て、ドリちゃんがギャンジさん達を鋭く睨んだ。


「大精霊を誘拐する理由を話せ」


「理由? そんなもの知らないな。アレース様に聞くんだな」


 アレース様……かぁ。

 本当に何が目的なんだろう?


「ねえ、ジャス。ちょっといい?」


「え?」


 後ろから肩を叩かれて振り向くと、セレネちゃんが眉根を下げて私を見ていた。

 そして、私は手を引っ張られて、そこから少し移動する。

 皆から少し離れた所に来ると、そこにはサガーチャちゃんもいた。


「ジャスミンくん、実は困った事が起きてしまったんだ」


「困った事?」


 私が聞き返すと、サガーチャちゃんは頷く。


「祭りが始まる前に、大精霊に挨拶に行くと言って出て行ったフェールが戻って来ないんだ」


「フェールちゃんが!?」


 私が驚く中、セレネちゃんが続けて喋る。


「それだけじゃない。今はいないみたいだけど、アレースの奴が、ここに来てたみたい」


「ど、どういう事!?」


「これ」


 セレネちゃんが手紙を取り出して私に見せる。

 手紙を見ると、そこには、こんな事が書かれていた。



 アルテミス、お前が何かを企んでを狙っている様なので、余も面白い遊びを考えたぞ。

 この里に集まった大精霊共を、余が自ら攫い出した。

 大精霊達を使いこの世界に混乱を招き、人間共に戦争をさせるのだ。

 戦争が始まれば、アルテミスも優秀な人材を見極めやすくなるだろう。

 感謝するがよい。

 他の神にも声をかけるつもりだ。

 この世界を我等の遊具として遊びつくそう。



 な、何これ?

 戦争? 遊び?

 どうしよう?

 神様って、こんな事考えてるの?


 私が手紙を読み終えて困惑していると、セレネちゃんが凄く嫌そうな顔で話し出す。


「これを精霊の里の番精霊から渡されたのよ。凄く偉そーな人に、私に渡すように渡されたってね~」


「ジャスミンくん、私は一度国に帰る事にするよ。恐らく、フェールは大精霊に挨拶に行って、事件に巻き込まれていると思うんだ。だから、私はこの事を父に知らせなければならない」


「うん。そうだよね」


 私がサガーチャちゃんに頷くと、サガーチャちゃんは微笑む。


「こんな時に言う事じゃないかもしれないけど、ジャスミンくんにプレゼントしたサーチリングを改良しておいたよ。今後は役立ててほしい」


「あっ、そう言えば、サガーチャちゃんから貰った腕輪って魔法の属性とかがわかるんだっけ?」


「ああ。それに、ご希望に答えてスリーサイズも調べられるようにしておいたよ」


 ええぇ……。

 本当に付けちゃったの? その機能。

 って、あれ?


「いつの間に改良したの?」


「昨晩ジャスミンくん達が寝ている隙にね」


「あはは……」


「さて、私はもう行くよ。早く帰って父に知らせなければならないからね」


「うん」


「ジャスミンくん、心配はいらないと思うけど、無理はしないでおくれ」


「うん。サガーチャちゃんも帰りの道中気をつけてね」


「ああ。それじゃ」


「またね。サガーチャちゃん」


 私とサガーチャちゃんは手を振って別れる。

 サガーチャちゃんを見送ると、セレネちゃんが「ねえ」と、私に話しかける。


「まだ、お友達大作戦とか言うのをやるつもり? 今回の事でわかったっしょ? 神を相手にするって事は、ただじゃすまないって事」


 確かに、今回の事でよく分かった。

 でも、だからと言って、私の考えは変わらないのだ。


「心配してくれてありがとー。でも、私はやるよ。お友達大作戦決行だよ!」


 私が笑顔でセレネちゃんに答えると、セレネちゃんは顔をほんのり赤らめてそっぽを向いた。

 するとその時、リリィとトンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃん、それにドリちゃんが私達の所にやって来た。


「こっちは話がついたわよ」


「お話?」


 リリィの言葉に聞き返すと、ドリちゃんがリリィの代わりに答える。


「うむ。あの者共を暫らくの間、この精霊の里で捕らえておく事になったのじゃ。帰してしまっては、ジャスミン様に危害を加えかねぬでの」


「皆が殺して獣の餌にしようって言いだして、止めるのが大変だったんだぞ」


 ええぇ……。

 獣の餌って怖すぎなんだけど……。


「プユ、頑張った」


 プリュちゃん偉い!

 流石はプリュちゃんだよ!


 私はプリュちゃんの頭を撫で始める。

 すると、プリュちゃんは、とても嬉しそうに微笑んだ。


 それから、リリィ達のお話を聞いてまとめるとこうだ。

 ギャンジさん達はアレース神の加護を授かっているから、精霊さん達だけでは抑えるのは困難だ。

 そこで、大精霊であるドリちゃんが、この里に残ってギャンジさん達が逃げ出さないように見張る事になった。

 そして、今回の事件のせいで、スピリットフェスティバルは中止が決定。

 ただ、恒例行事なので、大精霊を助け出して事件が解決したら、スピリットフェスティバルを開催しようと言うお話になったようだ。

 そして……。


「え!? ドリちゃんと私が契約するの!?」


「左様。ジャスミン様と妾が契約の契りを結べば、この先の神との戦い、決して後れをとる事はないじゃろう」


 私はドリちゃんから契約の申し出をされました。

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