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019 幼女のパンツは最強である

 プリュちゃんと炎を消しながら、ドリちゃんがいる場所まで辿り着く。

 私は冷や汗をかきながら、地獄の様な光景を目のあたりにした。


 こ、これは……。


 精霊の里を襲ったと思われる男の人達は全部で5人くらいだろうか?

 ドリちゃんに全員掴まっていて、と言うか、植物魔法で出現させた木の根っこの様な物で縛り上げられている。

 しかも、周囲にいる精霊さん達の何人かも魔法を使っていて、じわじわといたぶる様に攻撃していた。

 男の人達を、時には業火で燃やし、時には細胞が凍る程の冷気を浴びせ、時には風の刃で切り刻み、時には土石の中に埋める。

 そして、傷つけられた彼等は回復を施されて、死ぬ事の許されない拷問が続いていく。


 男の人達は悲鳴を上げたり、助けを求めたりしている。

 でも、可哀想だけど意味が無い。

 だって、ここには私達以外の人間はいないのだから。


 私は流石にヤバいのでは? と思い、ドリちゃんに近づく。

 すると、ドリちゃんが私に気がついて振り向いた。


「おお、ジャスミンさ……っ!?」


 ドリちゃんが目を見開いて驚く。

 と言うか、何か目が怖い。


「じゃ、ジャスミン様? ど、どど、ど、どー……」


 え? 何?

 急にどうしたの?


「ドリアード様は、主様の服装に驚いてるかもしれないんだぞ」


 あっ。


 くどい様だけど私の今の格好は、スケスケネグリジェ乳ベルトガーターベルトの、何も知らない人が見たら痴女と思われてしまう服装だ。

 私は胸にサッと手を当てて隠す。

 元々ベルトで大事な所は隠れているけれど、しないより少しマシなはずだ。

 と思う。


 ドリちゃんは咳払いを一つして、顔を若干赤らめながら、口元を押さえながら話し出す。


「すまぬ、少し取り乱してしもうた。まさか、ジャスミン様からご褒美を頂けるとは思わなんだのじゃ」


 ご褒美じゃないよ?

 と言うか、そう言う意図でこんな格好をしているわけもでないし、むしろ私的には罰ゲームの真っ最中だよ?


「妾は、精霊の里に不法侵入をしたこ奴等不届き者を処刑している所じゃ。ジャスミン様も宴の余興として見ていくがよい」


「処刑なんかしたら可哀想だよ」


 私がそう言うと、ドリちゃんは眉根を下げて男の人達を見た。


「しかしのう。こ奴等は見せしめに殺さぬと、こ奴等を裏で操っておる神が調子に乗るであろう?」


「え? 神様の事知ってたの?」


「うむ。先程ジャスミン様の精霊達に説明を受けたでの」


 そっかぁ……って、あっ。

 そう言えば、トンちゃんとラテちゃんとラヴちゃんは何処にいるんだろう?


 私は3人の事を思いだして、周囲をきょろきょろと見て捜す。

 するといました処刑され中の彼等の前に。


 はい。

 トンちゃんとラテちゃんはレジャーシートを広げて、私が昨日焼き上げたパンケーキとミルクを美味しく頂きながら、とても良い笑顔で処刑を眺めていました。

 ラヴちゃんは目の前にパンケーキとお煎餅を並べて、何だか難しい顔して悩んでいるご様子です。

 私は3人の姿に微笑んで、そっとプリュちゃんの頭をなでなでしました。


 プリュちゃんは本当に良い子だなぁ。


「って、本当にやめてあげて!? 死んじゃうよ!」


 私が大声でドリちゃんにお願いすると、ドリちゃんは私の真剣な眼差しを見て、男の人達の拘束を解いてくれた。

 すると、今まで攻撃を止めなかった精霊さん達も、一斉に攻撃を止める。


 男の人達を、念の為に頑丈な鉄でできた縄で縛って、暴れられない様に再び優しく拘束する。

 優しく拘束ってなんだよって感じなのだけど、さっきまでの光景を見ていたのだから、私がそう感じるのも仕方が無い。


「ドリちゃん、ありがとー!」


 私はお願いを聞いてもらえた事が嬉しくて、ドリちゃんに抱き付く。

 ドリちゃんは顔を赤くしながら、私を抱きしめ返そうとして、何故か途中でやめて手をワキワキとさせた。

 そうしていると、トンちゃんとラテちゃんが私に気がついて声を上げる。


「ご主人遅かったッスね」


「もしかして、ジャスが止めさせたです?」


「え? うん。そうだよ。あんな酷い事しちゃダメだよ」


 私がラテちゃんの質問に答えると、ラテちゃんが可愛らしく首を傾げた。


「この変態達は、ジャスが昨日穿いていたパンツを舐め回していたですよ? 許しちゃって平気です?」


「うん。お仕置きが必要だね」


 ラテちゃんの言葉に私も思わずニッコリ笑顔。

 私は手に魔力を集中して――


「主様! 待つんだぞ! 主様が魔法を使ったら本当に死んじゃうんだぞ!」


「止めないでプリュちゃん! あのパンツはお気に入りのパンツだったの! 一着しかなかったの!」


「そこッスか? と言うか、いつもパンツは十枚くらい買ってるのに、珍しいッスよね」


「ドゥーウィンもそんな事言ってないで、主様を止めるんだぞ!」


 私が今にも魔法を使って、目の前で倒れている変態さん達を跡形も無く始末しようとしていると、突然ラヴちゃんが私の目の前に立った。

 そして、ラヴちゃんの可愛い姿に動揺を見せた私のハートに、ラヴちゃんの質問がクリティカルヒットする。


「ジャチュ、おちぇんべいとパンケーキ、ふたちゅとも食べていい?」


 きゃー!

 ラヴちゃん可愛い!


「うん。両方食べていいよ!」


 私がラヴちゃんに答えると、その瞬間、一斉に精霊さん達の拍手が巻き起こる。

 その時、精霊使いさんは怒らすと怖いだとか、流石パンツで世界を救った女の子だとか、色んな声が私の耳に届いた。

 その声に恐る恐る周囲をチラ見すると、何人か顔を青くさせている精霊さんがいた。

 あのまま変態さん達にお仕置きしていたら、もしかしたら精霊さん達から恐怖の象徴にされて距離を置かれていたかもしれないと思い、私はラヴちゃんに本気で感謝する。


「バカッスね」


「バカです」


「良かったんだぞ。流石ラーヴなんだぞ」


「がお?」


 首を傾げてお煎餅をバリバリ食べ始めたラヴちゃんを見て、私が可愛いなぁと感じていると、ドリちゃんが私に話しかける。


「して、ジャスミン様。こ奴等をどうする? 神の使いとしてジャスミン様の命を狙う以上、妾としては放ってはおけぬのじゃが」


 うーん。


 と、私は考える。

 私本人を直接狙ってくるならまだしも、関係の無い精霊さん達にまで危害を加えるのは、流石に放っておけないのだ。

 今回は、たまたま実力が高いドリちゃんや、自然の加護を味方につけている精霊さん達が狙われただけだから良かったとも言える。

 何故なら、もし私のパパやママの様に普通の人が襲われたら、こういう結果にはならなかった筈だからだ。

 放っておけば、絶対に大変な事になる。

 だからこそ、私はどうしたものかと考えた。


 だけど、私には考える余裕が無くなってしまった。

 何故なら、この時思いもよらぬ大どんでん返しが押し寄せたからだ。


 突然、私の目の前に、空からリリィが降って来たのだ。


 私は目の前に落ちて倒れるリリィに驚き、目を見開いた。

 リリィの体はボロボロで、何か所か刃物で切られた様な傷があり、私は信じられないリリィの姿に気が動転して動けなくなる。

 そして、ゆっくりとリリィが顔を上げて私に告げる。


「ジャスミン、逃げて」


「リリィ!」


 私はリリィの言葉を聞いて、我に返ってリリィを抱き寄せる。


「お願い。逃げてジャスミン。アイツは、ギャンジには勝てないわ」


 そんな!?

 ギャンジさんはそれ程までに強いの!?


 私がリリィの言葉に動揺したその時、近づいて来る足音が聞こえてきた。

 その足音に恐る恐る振り向くと、そこには剣を片手に持ったギャンジさんの姿があった。


 緊張が高まり、周囲もしんと静まりかえる。

 それもその筈だろう。

 ドリちゃんも精霊さん達も全員が知っている。

 リリィの恐ろしいまでの強さに。

 そんなリリィを、ここまでボロボロに追い込んだギャンジさんに、恐怖を覚えない筈がないのだ。


 私はリリィをそっと地面に寝かせて、ギャンジさんと向き合った。

 そして、私とギャンジさんの目がかち合う。


「後はお前だけだ。魔性の幼女」


「ギャンジさん、本当に、本当にギャンジさんがリリィをこんな目に合わせたの?」


「そうだぜ。俺はアレース様から加護を頂いた。神の加護を手に入れた俺は、最早無敵だ。どっからでもかかって来な」


「ご主人、本当にヤバいかもッスよ」


「です。神の加護は、ラテ達の自然の加護より強力です。魔族なんかよりよっぽど厄介な相手だと思って、気を引き締めて戦うです」


「うん。戦いは避けられそうにないもんね。プリュちゃん、リリィをお願い」


「わかったんだぞ!」


「ジャチュ、わたちも戦う!」


「うん。ありがとーラヴちゃん」


 私とギャンジさんは睨み合い、そして、リリィが大声を上げる。


「駄目よジャスミン! その男の神から受けた加護の力は、自動で発動するオートガード。空間跳躍によって、あらゆる物を目の前に出現させて身を守る力よ!」


 自動で身を守る!?

 リリィの攻撃を防げるほどの強力な防御が、自動で起きるって事だよね。


 私は緊張し、ごくりと唾を飲み込む。


「ギャンジはその加護の力を使って、盗んだジャスミンのパンツを出現させているのよ! だから逃げて! 全ての攻撃が、ジャスミンのパンツで防がれてしまうわ!」


 リリィの言葉に、私も思わずニッコリ笑顔。


「はっはっはっはっはっ! その通りだ! どうだ!? 手も足も出まい! この力があれば、どんな相手だろうと――」


獄炎制裁ダークエクスプロージョン


「ぎゃあああーっ!」


 わぁい。

 とっても禍々しくて綺麗な、黒い炎の花火の出来上がりだよ。


 私が使用した魔法で、花火の様に綺麗な黒炎の火花が朝空に咲き乱れ、黒い炎が燃え上がる。

 精霊さん達もそれを見て、禍々しいけど綺麗だね、なんて言って微笑み合った。


 こうして、私のパンツはギャンジさんと一緒に、黒い爆炎の炎と共に朝空に舞いました。


「ぷぷぷ。ご主人のパンツで自動防御。ぷぷぷ。確かに最強ッスね。ぷぷぷ」


「た、大変なんだぞ! ギャンジさんが燃えながら、凄い勢いで落下してるんだぞ! 死んじゃうんだぞ!」


「ラーヴ、あっちで一緒にパンケーキ食べるです」


「が、がお」


 って、あれ?

 可笑しいな?

 パンツの他に、私のお洋服も一緒に燃えてるよ?

 えっとぉ……気のせい……だよね?

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