000 幼女は今日も悲鳴を上げる
前作『幼女になったので不老不死になりに行きます』(全288話)の続編です。
今回は初めての方にもわかりやすい様にキャラ紹介メインのお話です。
ここは自然豊かな村トランスファ。
小鳥さん達が囀り、草木は優しい風に揺らされて、動物達も駆け回る。
そんな素敵な大自然に囲まれた小さな村で、私は10歳の誕生日を迎えていた。
パパとママの2人が今は出かけていたので、私は自宅で親友1人と精霊さん4人に囲まれて、誕生日を祝って貰っていた。
机の上には色とりどりの料理が並び、机の真ん中には、誕生日を迎えた主役の私が何故か自分で作った大きなケーキが置いてある。
「ジャスミン。誕生日おめでとう」
「うん。ありがとーリリィ」
私の名前はジャスミン=イベリス。
9歳の時に、とある事がきっかけで不老不死になった女の子だ。
風、土、水、火の四大元素の精霊さん達と契約を結んでいて、本来ならお一人様一属性までの魔法を、私は四つとも全部使える。
身長が低くて118センチしかなく、自分で言うのも何だけれど、私はかなりの美少女である。
白銀の髪の毛は肩まで伸びてサラサラで、瞳の色はルビーの様に綺麗で美しく、目はくりくりして可愛らしい。
そして、小顔で誰もが振り返りそうな超絶美少女な顔立ち。
肌は白くてスベスベのプニプニで、小柄な体型は皆から可愛いと評判だ。
さて、そんな私だけど、ここまで自分で言っちゃえる程にナルシストなのにも理由がある。
その理由、それは、私がTS転生者だからだ。
私は前世で絵に描いたような萌え豚で、かなり冴えないロリコンのおっさんだった。
そんなおっさんが、美少女に生まれ変わったら、そんなのナルシストになるなと言う方が無理な話である。
と言っても、実は転生してから前世の記憶を思い出したのは、9歳を過ぎてからだった。
そんなわけで、私は中途半端なタイミングで前世の記憶を持ってしまった事で、思考や知識に変化が起きただけの幼女なってしまった。
そんな残念な感じなのが私なのだけど、不老不死になったのも、その前世の記憶がきっかけだったりする。
「これ、良かったら使ってね」
そう言って、優しく微笑みながら、私に誕生日プレゼントを渡してくれた親友の名前はリリィ=アイビー。
聞いた話では、現在身長が152センチもあるらしい私の幼馴染の女の子。
私の良き理解者で、私が転生者だというのも、不老不死だというのも知っている。
と言うか、私が前世の記憶を思い出してから、不老不死になるまで支えてくれた大切な大親友だ。
リリィは私と同じ10歳で、転生者でも無いのに存在がチートなせいで、恐ろしい程に強いし常識外れだ。
そのせいで、一部からは魔王と言われて恐れられている。
そんなリリィだけど、私から見ても、かなりの美少女だ。
リリィの場合、美少女と言っても、私の様な可愛い系では無く綺麗系だ。
黄緑がかった白い髪の毛は、腰まで届くストレートな綺麗な髪。
瞳の色は黄緑色で、目は同年代の子と比べると細くて大人の魅力を感じる。
そして、10歳と幼い年齢なのに、私と違って高い身長に見合うような暴力的な体型をしている。
先日聞いた話では、おっぱいが88センチもあるらしい。
同じ10歳とは思えない程にスタイルの良い親友に、私が驚きを隠せなかったのは言うまでもなかった。
と、そんな親友のリリィから、私は誕生日プレゼントを受け取る。
プレゼントは可愛くラッピングされていて、その可愛さに思わず笑顔になる。
「わあ。何だろう? 今開けて見ても良い?」
「勿論よ」
「やったー。なっにかな~? なっにかな~?」
わたしは気分良さげに変な歌を歌いながら、リリィから受け取ったプレゼントのラッピングを綺麗に外していく。
そして、綺麗にラッピングを外し終えて、プレゼントを取り出して私は笑顔のまま顔を硬直させた。
「あの……リリィ? これは……?」
「ガーターベルトよ」
……うん。
そうだね。
私は取り出した白いガーターベルトを見つめながら、何とも言えない微妙な気持ちで困惑した。
それを見ていた精霊達が声を上げ始める。
「ぷぷぷ。ご主人。に、似合うんじゃないッスか? なんせご主人は、魔性の幼女って二つ名を持ってるッスからね。ぷぷぷ」
私の事をご主人と呼び、笑いを堪えながら話す精霊さんに視線を向ける。
この子の名前は、トンペット=ドゥーウィン。
私と契約を結んだ私より長く生きている風の精霊さんだ。
ボーイッシュな見た目の子で、服装は半袖と短パンで、背中から羽を生やしている。
そして、手のひらサイズの女の子である。
「トンちゃん。その呼び方止めてよぉ」
私が肩を落として呟くと、机の上でケーキをモグモグと可愛く食べていた別の精霊さんが、私に視線を向けて口を開く。
「ジャスはいい加減に、そこ等辺は諦めるです。開き直った方が良いです」
と、私に向けて喋った精霊さんは、ラテール=スアー。
この子も私と契約を結んだ大地の精霊さんだ。
お姫様の様なドレスを着ていて、頭には小さな冠を被っている。
この子も勿論手のひらサイズの女の子だ。
「むぅ。ラテちゃんまで。そんな事言われても嫌なんだもん」
私が肩を落としながら呟くと、ラテちゃんの横にお行儀よく座っている精霊さんが、私にニコニコ笑顔で話し出す。
「主様。アタシは魔性の幼女の二つ名は、かっこいいと思うんだぞ」
私にニコニコと話しかけた精霊さんは、プリュイ=ターウオ。
トンちゃんとラテちゃんと同じく、私と契約を結んでいる水の精霊さんだ。
ツインテールにシュノーケルゴーグル。
そして、旧スクール水着を着ている可愛い手のひらサイズの女の子だ。
「えぇ……。そうかなぁ?」
私がプリュちゃんに視線を向けて訊ねると、机の上をトテトテと歩いて、私の目の前に精霊さんが歩いて来て答える。
「ジャチュ、可愛い。がお」
おまかわだよぉ!
おまかわな精霊さんは、ラーヴ=イアファ。
私と契約を結んでいる精霊さんの中では最年少の、まだまだ幼い火の精霊さんだ。
最近はお話しが上手になってきていて、楽しそうにお話するのがとても可愛い。
いつも怪獣の着ぐるみパジャマ姿の、手のひらサイズの女の子だ。
私がラヴちゃんの可愛さにニヤニヤしていると、ラヴちゃんの周りにトンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんが集まった。
それを見て、私がどうしたんだろうと首を傾げて考えていると、4人は向かい合ってコソコソと話し出す。
「皆どうしたの?」
私が気になって訊ねると、4人は笑顔を私に向けた。
そして、トンちゃんが何かを持ちながら羽ばたいて、私の目の高さまで飛んで来る。
「ご主人。これはボク達からのプレゼントッス」
「え? ありがとう」
トンちゃんが持っていた何か、それはラブレターを入れたりする様な見た目の封筒だった。
封筒には、端に風と土と水と火を連想させるイラストが描かれていて、封筒を開封する所にはパンケーキのシールが貼ってあった。
私はトンちゃんから封筒を受け取って、トンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんを順番に見る。
すると、4人とも凄く可愛らしい笑顔で、私と目を合わせた。
「開けて良い?」
私が4人に訊ねると、4人は嬉しそうに頷いたので、私はドキドキしながら封筒を丁寧に開ける。
そして、私は封筒の中に入っていた紙を見て、首を傾げながら呟く。
「招待状?」
封筒を開けると、その中には、スピリットフェスティバル招待状と書かれた紙が入っていた。
私が呟くと、トンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんが笑顔で声を揃えた。
「精霊のお祭りにご招待ッス!」
「精霊のお祭りにご招待です!」
「精霊のお祭りにご招待だぞ!」
「精霊のお祭りにご招待がお!」
やーん!
可愛すぎるー!
私はトンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんの4人の可愛さに我慢出来なくなり、思わず4人を抱きしめて微笑んだ。
「皆、ありがとー!」
「ジャスミン。私は?」
私が精霊さん達と微笑み合うと、それを見ていたリリィが、とても期待に満ちた目で私を見つめる。
「えっと……」
私はリリィから貰ったプレゼント、ガーターベルトに視線を向ける。
「本当は黒にしようと思ったのだけど、ジャスミンには、やっぱり白が似合うと思って白色のガーターベルトにしたのよ」
リリィが照れながら鼻息を荒くして、期待に満ちた目で話すので、私は無心になって微笑む。
「ありが――って、いやいやいや。リリィ、あのね? 何でガーターベルトなの!? もっと他になかったの?」
はい。無理でした。
と言うか、鼻息を荒くして期待に満ちた相手に、微笑んでありがとうと言える程、私の心は寛大では無いのである。
だってそうでしょう?
「気持ちは嬉しいけど、鼻息荒くして言われたら、下心しか見えなくて受け取り辛いよ!」
「でもジャスミン、話を聞いて?」
「何?」
「私ね、最近ガーターベルトの良さに気がついたのよ」
「知らないよ!」
「そう言うわけだから、今すぐここで着けるべきだと思うの!」
「何で今すぐなの!? 付けないよ! って、ちょっと嘘でしょう!? やめ! やめて!? リリィ何で私のスカートを引っ張るの!?」
「安心してジャスミン! 初めてなんだから、私が着けてあげるわ!」
「全然安心出来なって、本当にやめて! パンツ掴んでるから! パンツも脱げちゃうから! お願っ――きゃあーっ!」
今日は私の10歳の誕生日。
トンちゃんとラテちゃんとプリュちゃんとラヴちゃん達に見守られ、今日も親友のリリィに襲われて涙目で叫ぶ。
「主様がピンチなんだぞ!?」
「いつもの事ッスよ。あ、このケーキ美味いッスね」
「パンケーキにも、生クリームをいっぱいかけたら美味しそうです」
「が、がお……」