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悪役らしく


  ドルン伯爵令嬢が去った後、私は再びカザノフ子爵令嬢に視線を向けた。


「あなた、カザノフ子爵令嬢でしたわよね?私、以前からあなたと是非お話してみたいと思っていたんですの」


 怯えている彼女に、悪役の笑みを顔に貼り付けたままで話しかける。


「ひっ…!わ、わたしは…なにもしていません…っ!」


 別に、あなたをいじめたい訳では無いんだよ…?けど、私は悪役やらないといけないから、そんなに優しく話しかけられないんだよ。仕方ないよね…?


「あら、本当にそうなのでしょうか?なにも、していないのですか。私はあなたのことを色々知っていますけれど」


「ど、どうしてですかっ!?私は本当になにもっ…!!」


 ステラ・カザノフ。彼女はカザノフ子爵家のご令嬢である。そして、完全なるモブだ。


この世界でモブなのは幸せだよね。なにより、寝取りゲームに巻き込まれないし。敬意を込めて「モブ令嬢」と呼ばせてもらいたいところだけど、今回はやめておこうと思う。


カザノフ子爵領は素敵なところだ。領民が少ないし、土地は痩せていて作物の収穫も少ない。けれども、そこはブドウに適した土壌で、ワイン作りが活発に行われているし、人手不足はワインの生産量が限られてしまうという反面、ワインの希少価値を増すのに一役かっている。


 また、彼女自身も、身分は低く容姿も決して華やかではないけれど、魅力的な人物だということを私は知っている。


「私、あなたに聞きたいことがあるの。心して答えなさい」


「は、はいぃ…」


瞳がうるうるとして、今にも涙がこぼれおちそう。早く解放してあげたいんだけど、一つどうしても聞かなければならないことがあるのよ。


「…あなた、もしかしてだけれど、毎日のようにワインを飲んだりしていないでしょうね?」


 その言葉に驚いたようで、彼女はポカンと私を見つめた。


確かに、あなたにとって見当はずれの問いかもしれないけれど、それでも淑女がする顔ではないわね。


「あ、あの…私…」


ほら、これに答えればあなたは自由よ。早く答えなさい。


「飲んでいるのか飲んでいないのか、どちらなの?」


 少し強めの口調で答えを促す。


「の、飲んでいますっ!」


 叫ぶような答えに、私は厳しい視線を返した。


「やめなさい」


「え?」


「これから、それはやめなさい」


 困惑している彼女には申し訳ないが、未成年のアルコールの摂取は危険だ。すぐにでもやめて欲しい。


「あなた、そんなことをしていると死ぬわよ」


 戸惑いと困惑に何も言えない彼女にさらに言いつのる。


「あなたごときがお酒を飲むなんて傲慢よ」


「…ですが、いまから舌を鍛えておけと両親が…」


 やっぱりそうなのね。家業が家業だからそうじゃないかと思ってた。


「それでも、だめよ」


急性アルコール中毒は本当に恐ろしいのよ!


「…ですが」



「もう!うるさいのよ!!成人前にお酒を飲むのは危ないの!!やめなさいってば!!」


「っ…!」


 悪役らしく大きく声を荒らげると、彼女は不可解だとでも言うような顔をした。そうだろうね。だって成人前の飲酒は毒だとかいう知識はこの世界に存在しないし、そもそも成人年齢が違う。


それに、家の方針に口を出す公爵令嬢なんて普通は居ないよね。


「…分かり、ました」


 これ以上私に何か言われるのを恐れたのか、肯定の言葉を小さく呟く。


「…ならいいわ。それでは、私はこれで失礼するわね」


 これ以上変なやつと思われたくないから帰ることにする。

 悪役っぽい印象は十分に与えられたと思うし、今日はこれでいいや。また明日、頑張ろう。



 *


 さて、家での私の振る舞いはどうすればいいんだろう。

 精一杯悪役を務めて、私が断罪されたあとで家に責任が及ばないようにしなければ。


「お帰りなさいませっ!お姉様っ!!」


 家に帰るとルーシーが私を見て駆け寄ってきた。真っ直ぐな黒髪が少し乱れ、ところどころ跳ねている。


「私、お姉様の帰りをお待ちしておりましたわっ!!」


「え、ええ。ただいま帰りました…」


 私はルーシーの勢いに気圧(けお)される。

 昨日、ルーシーに婚約破棄についてしつこいぐらいに聞かれ、どうにかするからと無理やり話を断ち切ってしまったから、こうなることは想定していたけれど。


「それで、婚約破棄の件はどうなったのですか!」


 おお…。ルーシー、あなたは変化球というものを知らないの…?そんなバカ正直に聞いて、私が答えるはずないじゃない。


 …まあ、ルーシーはバカでも可愛いけれど。


「…そうね、まあ何とかなりそうよ」


 実際は、どうすれば良いのか分からず四苦八苦しているけれど、ルーシーにすべてを話す必要は無い。私はこれから悪名を轟かせるつもりだし、私が自ら悪役を演じていることを知ってしまえば、ルーシーは私を止めるだろう。「私のために傷つかないで」と。ゲームの中の彼女は、自分に嫉妬し、いじめ、いびり倒す姉でさえも守ろうと考えていたのだから、そう考えるのが自然だ。


 …でも、私一人でほんとに何とかできるのだろうか…。


 …いいえ!何とかしてみせるの!!



「…私、お姉様のこと心配なんですの」

 ルーシーは一点の曇りも無い瞳でに私を見つめ、言葉を紡ぐ。


「婚約破棄のお話を耳にした時、私、お姉様が落ち込んでいるのではないかと思っていたの…」


 そういえば、前世の記憶が戻るまでの私は本当にあのバカ王子が好きだったのよね…。


「だから、変わらず元気でいるお姉様を見て、なんだか少し安心していたの。…だけど、それは間違いだったわ。だって、婚約破棄をされた貴族の令嬢の次のお相手が見つかることはまずないのですもの…。お姉様はこの婚約破棄によってずっとずっと苦しむことに…?私、そんなの嫌だわ…」


ルーシーの瞳が潤み、今にも涙が零れてしまいそう。


 どうやらルーシーは、私がルーシーの追求を(のが)れて悪役の道を(こころざ)していた間、私の将来を案じてすごく悩んでくれていたみたい。


 …なんて愛らしい妹なのでしょうっ!


「まあ、心配してくれて嬉しいわ!あなたはそんなことを気にしなくていいのよ!!」


 私は思わずルーシーを抱きしめ、ぎゅっと包み込んだ。


 …ほんと可愛いんだから!あなたは私が幸せにするわっ!!


「お姉様…」


「ルーシー…!私、あなたが大好きよ…!!」


読んでくださって、ほんとありがとうございます!!更新遅くて申し訳ない!!


今、まだ4話目だけど、月1更新になってますね…。スマホで書いてるから遅いんですよね…。


これからパソコンでやる予定なので、だんだん更新早くなると思います…。私、キーボード打つの、すっごく遅いですけど、徐々に早くなるはずです!!


ですので、まずは月2回の更新を目指します!その後、月3回!そして週1回!!

応援よろしくお願いします!!m(_ _*)m゛


※改行を入れて読みやすくなるように工夫しました。

「余計読みにくくなったわ!」と教えてくださる方や、「もう少しこうした方が…」とアドバイスをくださる方大歓迎です!

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