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悪役令嬢の誕生


 その日もいつも通りレヴィン様が私の家の前まで馬車で迎えに来た。


「やあ、リリアン。今日もいい天気だね」


 馬車の中で笑顔で語りかけて来るレヴィン様。だけど、昨日の婚約破棄もあってかその笑みは少しぎこちない。学園に着くまでずっとこの気まずい空気なのだろうかと思うと嫌になる。

婚約破棄のことは別に悲しくもなんともないし、私はいつも通りだけど。前世の記憶を思い出したからなんだろうけど、なんだか不思議だ。


「ええ、そうですわね。レヴィン様は何故ここに?」


 もう迎えに来る必要は無いんですよ?と少々の嫌味を込めて言ってみる。だって、ねぇ?前世でも、「何だこのバカ王子。姉から妹に乗り換えるなんて頭沸いてんのか?」って思ってたし。


「僕たちの婚約は直ぐには破棄できないみたいでね…。君には悪いが、もう少し付き合ってもらえないだろうか?」


 ああ、分かった。そういうことか。これは、あれなのよね。周りにはまだ婚約してると思わせたいわけね。お互いの外聞を傷つけずに〜とかそういうやつよね。


 貴族の婚約破棄というのはとても大変で、破棄するにあたっての原因をどちらかが被らなければいけない。そうなると家にも迷惑をかけてしまうことになる。今回の場合、新たにレヴィン様とルーシーの婚約を成立させるため、私の家もレヴィン様の家(つまり王家)も外聞に必要以上に気を遣わなければならないのだ。


「ええ、もちろん構いませんが…。どうやって波風たてずに納めるおつもりですか?」


 私の疑問にレヴィン様は苦い顔をする。


「まだ分からない…」


 でしょうね。だって、どんなに気をつけて婚約破棄したとしても、レヴィン様は『姉から妹に乗り換えたクズ』と思われるのですから。


 …(わたし)的にはいい気味だと思わずにもいられないのだけど、ルーシーも『姉から婚約者を奪った』という看板を背負わなくてはいけなくなるのでなんとかしたい。


「レヴィン様。(わたくし)がなんとか致しますわ」



 *


『悪役令嬢』を演じよう。


『カナコイ』の私のように。そうすれば、私一人が悪評を被り婚約破棄できる。そして政略結婚的に、必然的にレヴィン様とルーシーは結ばれるのだ。そう考えた私はさっそく行動を開始した。



「あら、そこにいるのはドルン伯爵令嬢ではなくて?」


 まず、伯爵令嬢に喧嘩を売りに行った。

 ちょうど彼女は取り巻きとともに一人の女子生徒を囲んでいる所だった。お(つと)めご苦労様です。…私も悪役の(つと)めを果たさねば。


 私が話しかけると華やかなその顔から、サァーッと血の気がひいていく。彼女は私と違って分かりやすく金髪縦ロールで立派に悪役令嬢をやっている。

 私は真っ直ぐな黒髪でヒロインである妹と瓜二つだから悪役やってもあんまり凄みが出ないと思うんだよなぁー…。


 …あれ?そういえば、カナコイでは王太子がヒロインの後ろ姿に声をかけたら悪役令嬢(つまり私)だったとかいうハプニングイベントとかあったなぁー。あれは恐怖だった。画面越しとはいえ、ヒロインと同じ顔で振り向いて悪役っぽくニヤリと笑うあの瞬間は鳥肌が立った。あぁ、思い出すだけで…。

 よし。これでいこう。あの恐ろしい微笑みをものに出来れば私も晴れて悪役令嬢よ!

 目の前にはドルン伯爵令嬢。実験台にはもってこいじゃない。



「コホンッ!」


 私の咳一つでビクッとする彼女と取り巻きたち。よしよし、これは『王太子の婚約者』と『自分より爵位が上の公爵令嬢』という私の立場がいい味だしてる。


「こ、公爵家の方がこんなところになんの用で…」


 取り巻きたちはとても萎縮していて、なんだか私を怖がっているみたい。…レヴィン様にべったりで他の生徒との交流をあまり持っていなかったのも良かったのかな?


「あなたたちこそ、こんなところで何をしているのかしら?」


 刺々しく聞こえるように意識して放った言葉は予想以上に冷たく響いた。ここは学園の別棟で、滅多に使われることがない。それに加えて今は授業をも終えた放課後。静かで雰囲気もどことなく暗い。


「っ…!」


 まぁ、私はカナコイで知ってたんだけどね。あなたたちがここに来ることも、何をしに来たのかも。台詞は悪役っぽさの演出です。


「一人を大勢でとり囲んで…。仲良くお話でもされていたというのかしら?」


「そ、それはっ…!」


 彼女はレヴィン様を慕うあまり、少しでも目立った行動をとったりレヴィン様に話しかけたりしたご令嬢らをここに呼び出している、という設定のはず…。私という婚約者がいるからレヴィン様と結ばれるわけないのにね。


「…ねぇ、あなた。あなたは何故こんなところにいるの?」


 口ごもる伯爵令嬢と取り巻き達をよそに、私は囲まれて涙目になっている女子生徒に聞いてみる。


「わ、私はっ…!別に王太子様に色目を使ってなんかないですっ…!だから呼び出される覚えなんてありませんっ…!!」


 レヴィン様の婚約者である私を黒幕だと勘違いしたのか、酷く怯えている。


「へぇ…。こちらのご令嬢を呼び出して何がしたかったんですの?」


 ここぞとばかりに"悪役の微笑"を浮かべてドルン伯爵令嬢の方を振り返ると、彼女は少し後ずさる。


「ひっ!…そ、そこにいるカザノフ子爵令嬢は王太子様に近づいて色目を…」


 カザノフ…?ああ、ワインの生産が盛んなあの領地の…。この子も災難ね…。


「もしそうだとして、何故あなたがこのようなことをなさるのでしょう?」


 余計なことはしないでよ…。あなたが悪役するのはいいけど、それは今日から私の仕事だからやめて!私の出番を残しといて!


「あなたが今するべきことは、レヴィン様の露払いでは無く、自らを磨くことではないかしら?それとも、あなたは婚約者など必要が無いのでしょうか?」


 あなた、まだ婚約者もいないでしょう?こんなことしてたら、一生独り身よ!?


「っ!…そ、そのようなことは決して!申し訳、ございませんでしたっ…!!」


 ドルン伯爵令嬢は取り巻きを連れて逃げるように走って行った。うん、その行動は正しいよ。私(というか私の家)を敵に回したらほんとに婚約者なんてできないでしょうしね。

 それに、こんなことして問題になったら相手もいなくなる…か…ら…


 ん!?…そうだ…!それは私も同じなのか…!!


 …悪役令嬢になるっていうのはそういうことなのか…。一生独り身なのか…。それに、あんまり悪役をやると、平民に落とされたり、処刑エンドも…。


 …ううん!なんとかなる!今は考えない!!今はルーシーの方が大事だから!!すべてはルーシーのために!!


読んで下さって本当にありがとうございます…!


そんなにあけずに更新しますって言っといて…。結構遅い更新…。ほんとすいません!

見切り発車なので納得いく続きがなかなかできなくて…。

頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!!m(_ _)m

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