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「カナコイ」と現実


「お姉様!婚約を破棄するってどういうことですの!?」


 家に戻った私は静かに部屋に引きこもっていたのだが、しばらくするとルーシーが訪ねてきた。


ついさっきのことなのに、情報がはやい。あの時そばにいたメイド、おそらくテイリーあたりがあの後すぐに走ったのでしょう。これなら、お父様も知っているとみていいわね。


「どういうこともなにもないわ。言葉の通りよ」


 …そうよね、ルーシー。あなたはまだなにも知らないのだわ。

 そう考えるとあの王太子、ルーシーには何も言わずに私との婚約破棄を決めたということになる…。ルーシーがあなたの婚約の申し出を受けると確信していたの…?



 …「カナコイ」でもそうだった。

 ルーシーは王太子の思惑など何も知らない。そして、私とレヴィン様の婚約破棄を聞いて心配して、部屋までやってくる。そんな彼女に私は当たり散らす。


「お姉様!婚約を破棄するってどういうことですの!?」


「ひどいわ、ルーシー!!レヴィン様を誑らかして、私を蹴落とすなんて…!」


「…なにを言っているのです?お姉様…?私はなにもしていませんわ…!?」


「とぼけるんじゃないわよ!!レヴィン様から聞いたのよ!…好きな人が出来たって!そして、それはルーシー、あなたの事だって!! 」


 ルーシーは目を見開くと途端に勢いを失い、うつむいてしまう。


「うそ、ですわ…。そんなことが、あるはずがないんです…」


「ルーシー!知らないふりはやめて!あなた、彼のことが好きだったじゃないの…!私に嫌味を言っていないで、もう少し喜んだらどうなのっ…!!」



 ルーシーは今にも泣きそうに顔をゆがめてこちらを見る。そして、意を決した様に口を開く。


「そんなこと、ありえるはずがありませんわっ…!だって、…だって彼は…レヴィン様は、お姉様を愛してるんですものっ…!!」


「なにを言っているのですっ…!私、ルーシーなんて、大っ嫌いですわっ…!!」


「お姉様っ…!」


 この日、仲の良かった姉妹はいなくなり、二人は一生仲良くすることはなかった…。



 …はっ!なんだかトリップしていた…。あれは、前世の乙女ゲーム「叶わぬ恋の行方」の記憶…?


 …そうだ。あのゲームは、乙女ゲームにしては珍しく、一番の攻略対象である王太子レヴィン様は政略結婚にも関わらず、婚約者である悪役令嬢に恋をしている。そして、ヒロインの奮闘により、王太子は次第にヒロインに惹かれていく…。

…要するに、王太子ルートを選ぶと、乙女ゲームの甘酸っぱい恋愛要素を兼ね備えた、ただの寝取りゲームが展開される…。


「うーん…」

 …レヴィン様は、私を好きだった…?そして、今はルーシーのことが好き…。そしてルーシーは、レヴィン様が好きなのは私、リリアンであると思っている。そういうことよね。


「お姉様っ…!」


 あぁ、ルーシー。そこにいたの。


「言葉の通りって、どういうことですの…?」


 私はすべて知っているので、彼女に当たり散らしたりはしない。ゲームのリリアンはルーシーが嫌味を言っているのだと決めつけていたが、本当にルーシーは何も知らず、自分が原因で婚約破棄をしたのだと知るやいなや、王太子から距離をおくのだ。ゲームでは、「はやく王太子を攻略して他のキャラやりたいのにっ!」とどんなにもどかしく思ったことか…。


「あのね、ルーシー。王家と公爵家の婚約は簡単に破棄は出来ないわ。だから、しばらくはこのままだろうけど、これが実行されれば次の彼の政略結婚の相手はあなたよ、ルーシー…」


 彼は政略結婚などではなくてもあなたを望むでしょうけど、と心の中でつけ加える。


 ルーシーは泣きそうに顔をゆがめる。


「そんなっ…。…だって彼は…レヴィン様は、お姉様を愛しているはずではないですかっ…!!」


 …あぁ、ルーシー…。そうだったかもしれない…。ゲームの設定的には間違いなくそうだったわ…。でも、違うのよ。…今は、彼の想い人はあなたなの。

 私は過去にも彼に愛されていた記憶はないのだけれど、ルーシーは確信しているみたい。

「…私がお姉様でいる時、彼は熱のこもった瞳で私を見つめていたわ」


 …ルーシーが私でいる時?…幼い頃にやった入れ替わりのことなのかな。


「…それは。…中身がルーシー、あなただったからでしょう?私はそんな目で見つめられた記憶が無い…」


 いいえ、と首を振ってルーシーは儚げに笑う。


「私、昔から羨ましかったの。私たちそっくりのはずなのに、お姉様にだけ向けられるあの眼差しが…。…あれを見て、私はレヴィン様を諦めることを決めたのですわ」


 …ゲームでは。

 ルーシーはレヴィン様が好きで、姉が羨ましくて仕方がない。それでもレヴィン様を諦めようとするが、隠しきれない好意にレヴィン様が揺らぎ、だんだんと彼女に気持ちが傾く…。



 ルーシーはゲームと同じでレヴィン様が好きだ。そして、ゲームと違うのは、私が前世の記憶を持っているがために、誤解からルーシーと仲違いすることもなく、ルーシーがまだ私のことを慕ってくれているということ。だからこそ、優しい彼女は私を思い、王太子の婚約者という自らの運命を受け入れることが出来ないかもしれない…。


 私はルーシーが好きだ。ゲームのヒロインなんかではなく、そのままの彼女が好きだ。だから、自らの婚約破棄など忘れて、ルーシーの恋を応援しよう。そうすれば、ルーシーはゲームと同じ幸せな結末を迎えるはずだ。



 悪役令嬢の私は、ヒロインのハッピーエンドを勝ち取るため、奮闘するのであった。


読んでくださってありがとうございます!!


…なんか、自分の作品に見たこともないポイントがついていて、困惑しています。


とりあえず、この作品を待ってくださっている方がいるようだ…!となにかに突き動かされるように続きを執筆させていただきました!


そんなに日を開けず次回も投稿したいと思っていますので、どうかこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m



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