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ルーシーからの助言(レヴィン視点)

 

「僕は本当にリリアンのことが好きなのだろうか…?」


 目の前で僕の話を静かに聞いていたルーシーへ、疑問を投げかける。他人に自分の心を問うなど馬鹿げていると自分でも思うが、今の僕は(わら)にでも縋りたい気持ちなんだ。


「ではお尋ねしますが、レヴィン様の中にお姉様を好きでないという選択肢があるのですか?」


 切り口の鋭い返しに驚いた。ルーシーは明るさと笑顔だけが取り柄で、賢いなどと言う言葉とは無縁だと思っていたからだ。


 ルーシーには答えが分かっているようだった。


 僕自身はどんなに考えても分からないのに。


「はっきり言わせていただきますわ。私とお姉様とを比べるなんてありえませんわ。今までのレヴィン様は、お姉様だけをじーっと、じぃぃーっと見つめてきましたわよね?」


 比べるなんて失礼な、という意味かと思ったけれどそうでは無いらしい。僕の普段の行動から僕の心を分析しているみたいだ。


「そ、それは…」


 その通りだ。ルーシーは僕をよく見ている。


「まず、どこに私を好きになる要素があるのでしょうか?私のことなど目に入れたことも無いくせに。私、ずっとずっとレヴィン様を見つめてきましたが、これっぽっちも目が合いませんでしてよ?どんなに好きでいようと、一度だってチャンスをもらえませんでしたのよ?」


 ルーシーには申し訳ないことをした。でもべつに、ルーシーを見ていなかったんじゃない。僕には彼女(リリアン)しか見えていなかったんだ。


 僕が彼女を嫌いになったのでないのなら、変わらず僕が好きなのは彼女だと断言された。僕の中で、他の令嬢はおろか、自分(ルーシー)(リリアン)を上回ることは爪の先ほども無いのだと。


「た、確かに…」


 彼女の言葉は(もっと)もだった。


「やっぱりそうなんですのね。まったく、ひどいったらないですわ!」


 僕は戸惑いっぱなしだ。いつもは穏やかなルーシーが、憤慨した様子で声を荒らげているのだから。

 

 …でもそうか、僕のこの肯定はルーシーに興味が無いと言ったも同然だ。


 ルーシーが怒るのも当然のこと。


 (みずか)らの姉に婚約破棄を申し出た人物が、自分に告白(まが)の話を振ってくる。加えて、姉を好きかどうか分からないなどとのたまう。懇切丁寧(こんせつていねい)に相手の気持ちになって解説してやれば、この発言。


「悪かった…」


 本当に。君の気持ちに応えられなくて。


「謝らないでくださいまし!…私は確かにレヴィン様を好きですが、お姉様を好きでないレヴィン様などお断りですわ!」


 もちろん、ルーシーを愛しく思う気持ちもまだ無くなったわけではない。今は胸の奥で(くすぶ)っている。燃え上がらないだけましだけど。


 ルーシーのおかげで、あの幸せな日々は嘘ではなかったのだと信じられる。僕がリリアンを好きだったこと、そしてまだその想いが僕の中で消えてしまってはいないこと。今の僕にはこの二つを確かめられただけで十分だった。


「ありがとう、ルーシー。君のおかげで僕は大切な気持ちをなくさずに済んだみたいだ」


 気持ちが晴れやかになった時、ルーシーが現実を突きつけてきた。


「それはよかったですわ。…問題は、お姉様がレヴィン様をどう思っているかですわね」


 うっ…。


 そういえば彼女、この婚約破棄にずいぶんと乗り気だ。ぐいぐいと計画を練り上げる手腕は見事としか言いようがない。


「僕はあまりよく思われていないだろう…」


 嫌われてはいないと思いたい…。


「そうなんですの?」


 ああ、そうなんだ…。


「婚約破棄の準備など僕は一切進めていないけれど、リリアンはそうでないみたいで…」


 彼女のことだ。もう計画どころか実行に移しているかもしれない…。


「お姉様のことですからね…。このままでは近いうちに婚約破棄してしまうでしょうね…」


 実の妹までもがこう言うのだ。もうこれは婚約破棄される以外の道がないのではないだろうか…。なんてことだ。破棄するのとされるのと、立場が逆転してしまっている…。


「私がそれとなく、お姉様にお聞きして差し上げます。ですのでお姉様が戻ってくるまで、のんびりとお話していましょう」


 ああ、そうか。ここが学院でお昼休憩の時間だということを思い出す。ルーシーにはずいぶん赤裸々(せきらら)な告白をしてしまったなあ…。


「ほんと、リリアンの用事は長引いているみたいだな…」


 彼女(リリアン)は昔から、ルーシーは天使だの天からの使いだの幸運の女神だのと言っていたけれど、それが今やっと分かった。ルーシーほど優しく(たくま)しく美しい妹がいれば、誰だってそう自慢したくなるだろう。


「お茶のお代わりはいかがかしら?このお茶、気に入られたのでしょう…?」


 ルーシーの洞察力には脱帽(だつぼう)する…。


「感謝する…。どうもありがとう…」


 僕はこれでも一国の王子のはずなのに。


 姉の方は王子の仮面をいとも容易(たやす)く剥がし、妹の方は仮面などものともせずにこちらの内を覗き込んでくる。すべてされるがままの僕。なんて情けない…。


「いえ、お姉様の幸せのためですから。私にできることならなんなりと」


 本当にできた妹だ…。


 すべて引っ(くる)めて、あの(リリアン)あっての(ルーシー)ということなんだな。


更新更新っ!


少しでも楽しんでくださったなら嬉しいです!

今回はレヴィンとルーシーの回でした〜!!


うん、ルーシーがヒロインである理由が分かったきがする…。確かに書いたのは私だけど、予想以上に魅力的なキャラクターに…。


次回の更新はまた少し間が空いてしまいます…!広い心でのんびりとお待ちください…(^^;


皆様!これからもどうぞ応援よろしくお願い致します!!(⋆ᵕᴗᵕ⋆)"☆*ペコリ



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