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1話 はじめましてクソゲー


「クソゲーだな。アンインストールしよう」


『ギルティフロンティア』このクソゲーの正式名称だ。別にガチャの排出率が悪いわけでも敵が異常に強い訳でもない。プレイヤーが国王として建国して、ガチャや施設、イベント等で入手したキャラクターや武器と共に国やモンスターと戦ういたって普通のよくあるソシャゲだ。まぁ、時代設定はよく分からないが。ならば何故このゲームがクソゲーなのか。それはあまりの無課金勢への待遇が悪いからだ。なにも無課金にこだわっている訳では無い。他のゲームだったら少しは課金している。だが、まだ初めて15分だ、課金は流石に考える。

このゲームでは、ガチャやイベント、施設で入手したキャラクターや武器を使用可能にする必要がある。入手したからといってすぐには使えない。その為には『建国ポイント』なるポイントが必要なのだ。他にも国や設備を強化する為にもこのポイントは使われ、あらゆることにポイントが必要になってくる。そして一番問題なのは、この『建国ポイント』の入手方法は課金だけなのだ。イベントやログインボーナスでは決して配布しないらしい。つまり無課金勢は最初に配られる『建国ポイント』だけでやりくりしなくてはならない。このゲームの運営はなんてケチなんだ。


「アンインストール開始」


端末にアンインストールボタンが表示され、それを躊躇無くおす。

だが──。


「あれ?アンスト出来んな」


いくらボタンをタップしても、反応が無い。仕方なく一度、端末の電源を落とす。そして再起動。すると光が部屋中を包み込む。


「うわ!なんだこれ!」


明らかに端末で発生させられる光量以上の光が部屋を呑み込む。やがて体を浮遊感が襲い、意識を手放した。





目を開けるとそこには草原が広がっていた。言い換えよう。人工物が一つも無かった。


「どこだよここは」


ゲームをアンインストールしようとしたら何故か変な所に飛ばされた。どういう事だよ?


「えっと、服はそのまま。携帯もある。...持ち物これだけかよ」


ついでに言うと頬をつまんでも痛くないし、さっきまで自室に居たからもちろん裸足。靴下は履いているけど。


「これはあれか?僕こと賢吾の異世界召喚て事か?」


遠くで6本脚のトナカイが歩いているし、空には3mを超えそうな巨大な鳥が飛んでいる。まぁ、地球では無さそうだ。知らんけど。俗に言う異世界モノって奴らしい。


「もちろん電波なんて繋がってないよな」


ふと端末の電源を入れると『ギルティフロンティア』のホーム画面が表示されていた。


「あれ?開けるな...まさか!」


この展開は嫌な予感がする。代々異世界モノは高確率で主人公はチートを得る。そして今、僕はなんの能力も持っていない。そしてこんな人の手が入っていないような場所であのクソゲーが開ける、ということはよりによってクソゲーの能力を手に入れた可能性。


「データは初期化されているようだな」


15分せっせと頑張ったデータは削除されているらしく、アイテムもキャラクターも何一つ無い。一応初心者用のあまり強くない『鉄の剣』くらいならある。


「うわぁ、『召喚』なんて項目があるぞ」


武器一覧を開くと、本来情報の閲覧程度しか出来ないはずだが『召喚』や『送還』という見た事の無い項目がある。

試しに『召喚』を押してみると、地面に1本の無骨な鉄製の剣が出現した。


武具

属性:無

ランク ☆

名称:鉄の剣 カテゴリー:剣

Lv:1/5

物攻+5

スキル:なし

特殊技:なし


「はぁ...確定だな」


キマリだ。僕はこんなクソゲー能力を持って異世界で生きていかねばならない。まずいぞ。このクソゲー、『建国ポイント』が無いと何も出来ないじゃないか。どうやって課金するんだ?


「だいたいログボとかあるのか?」


元はソシャゲだ。この世界でもログインボーナスを受け取れないようではやはりクソゲーと言わざるを得ない。


「あ、あった」


『初日ログインボーナス。魔石×10、アイテム 悪魔呼びの銀鈴☆☆☆☆☆×2、魔カード クリムゾンサークル×3』

『初心者限定ログインボーナス。魔石×40、武具 フレイムリボルバー☆☆☆☆ 入手・解放、付カード 筋力上昇Lv1』


本来の『ギルティフロンティア』の初日ログインボーナスもこれと同じだった。意外と豪勢だというのが最初の感想だった。

とりあえず、『鉄の剣』を『送還』し『フレイムリボルバー』を『召喚』する。


武具

属性:炎

ランク ☆☆☆☆

名称:フレイムリボルバー カテゴリー:魔導銃

Lv:1/5

魔攻+200

スキル:炎弾 Lv2

特殊技:フレアグレネード 10min


僕は赤く塗装された拳銃型の魔道具『フレイムリボルバー』を手に取る。ちなみにこの武器は弾を撃つ度にMPを消費する。今の自分がどの程度弾を撃てるのかで今後の戦闘力に関わってくる。よって次に端末でステータス画面を開く。



プレイヤーランク:1

HP:50

MP:100

物理攻撃:2 物理防御:3

魔法攻撃:202 魔法防御:3

素早さ:4

建国ポイント:3000

スキル:なし


例に漏れず、『ギルティフロンティア』の初期ステだ。という事は、『フレイムリボルバー』の弾1発でMP5消費だろうな。


「何か的になりそうなものは...あった」


近くにある岩に向けて『フレイムリボルバー』を構える。距離は20m程だろうか。そしてそのまま引き金を引く。


ドオォン


岩がリボルバーから発射された野球ボール程のサイズの炎の塊の衝撃によって破裂する。この炎の弾は銃口よりも大きく、反動は無し。銃というより、言ってみれば魔法の杖に近い感覚だろうか。


「す、凄い威力だ。とりあえずMPの消費は変わらないようで安心だよ」


どうやら元のゲームと武器の仕様は変わらないらしい。ひとまずこの能力については大体分かった。


「とりあえず周辺の探索だな」


まずアイテム一覧から『悪魔呼びの銀鈴』を召喚する。このアイテムは文字通り悪魔を召喚する使い切りの鈴だ。そのアイテムのランクと同じランクの悪魔をランダムで召喚する。『亜人呼びの銀鈴』や『獣呼びの銀鈴』等も見かけた為、おそらく他にも種類があると思う。知らんけど。このアイテムの場合はランク☆☆☆☆☆の悪魔を召喚出来る。

ちなみに『銀鈴』と違い『宝珠』というアイテムの場合は使い切りでは無く、24時間毎に1体召喚する。その代わりランクより低いキャラをランダムに召喚する。

とりあえず『悪魔呼びの銀鈴☆☆☆☆☆』を鳴らしてみる。


「派手な演出だなぁ」


元のゲームではピカッと光って終わりだったのに今は何だか虹色に光ってるよ。これじゃあ人前でおちおち召喚できないな。

光が収まるとそこには美女が立っていた。悪魔と言えば真っ先に思いつく角や羽は生えていないが、尻尾だけは黒く細長いのがお尻から生えている。髪は銀色だが、こうやって見ると違和感が無い。それにソシャゲ女悪魔のテンプレと言うべきか、やはり露出度は高めの赤い衣装を身に付けている。肩やヘソはパックリ開いていて、はちきれんばかりの巨乳がポロリしそうで恐ろしい。肉感のある足にピンクのニーソを履いていて、なるほどマニア受けも良さそうだ。


「ほう、キャラデザはいいなこのゲーム。合格だ」

「なかなか正直ね。嫌いじゃないわ」

「ぬお!?」


キャラクターが喋った?あ、そうか。ここは異世界、ゲームとは違うんだ。ついついゲームをやってる感覚になってしまう。いかんな。


「あ、そういえばなんか言ってたな。確か『ネームド』だったか?」


『ギルティフロンティア』のチュートリアルで言ってたな。ガチャでもイベントでもアイテムでも一定確率でネームドが出るって。虹色の光もその確定演出だって。

ちなみにネームドとは名前の付いたキャラクターの事である。例えばゴブリンをガチャで引いた時、普通なら名前は『ゴブリン』になるのだが、ネームドの場合『ゴブリン 太郎』のように表記がかわる。ネームドの利点は様々だ。まずステータスが通常より高い。次に本来通常キャラはNPCなので無意味な行動が多いが、ネームドは知能が通常種より高い設定なのでプレイヤーのように意味のある行動をする。そして何より極めつけは進化できる事だ。進化とはランクが上がる事だ。ランクとは強さの基準であり、ランクが上がれば戦闘力がグッと上がる。一応通常種でも進化があるが、一段階しか上がらない。だが、ネームドはゲーム中の最高ランクであるランク☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(12)まで進化させる事が出来る。まぁ、条件は厳しいが。とにかくネームドとは強いのだ。


「そうよ、ワタシはネロン。よろしくねスケベくん」


初対面でスケベくんは失礼だろ!

僕もジロジロ見てしまったけどさおっぱいとか太ももとかおっぱいとか。


「その愛称は心外だな。仮にも僕は君の雇用主なのだよ?」

「そうね、ワタシの体が気になって仕方が無いようだったから、つい。ごめんなさいね」

「気になったのは事実だ。僕も謝罪しよう。女性の体を邪な目で見てしまった。失礼。あと今後も増えると思う。いや増える。だからすまない」

「ふふ、素直でかわいいわね。気に入ったわ。そうね、もっと見るといいわスケベくん?ワタシ気にしないから」


やったー。本人からお許しがでたー。わーい。流石異世界。現世じゃこの後お会計があるからな。タダで僕なんかにこんなにオープンにセクシュアルトークしてくれる人なんていないからな。夢みたいだ。


「言質は取ったからな。ところで君はどのくらい戦力になるのかな?」


僕は端末でネロンのステータスを確認する。


キャラクター

名称:デーモン 撃滅のネロン

種族:悪魔

ランク:☆☆☆☆☆

Lv:50/70

HP:800

MP:2000

物理攻撃:120 物理防御:50

魔法攻撃:400 魔法防御:310

素早さ:240

スキル:飛行Lv5、炎魔法Lv10、火炎魔法Lv5、電気魔法Lv10:雷魔法Lv1、闇魔法Lv8、回復魔法Lv4、魅了Lv6、催眠Lv3、使役Lv3、魔力回復Lv4、筋力上昇Lv2、魔力上昇Lv5、物理耐性Lv5、炎耐性Lv30、炎無効、電気耐性Lv8、闇耐性Lv1


「強!!めっちゃ強!!」

「ふふ、ありがとう」


なんだ、このチートさ加減は。ステータス高いし、スキルが多い。普通種はこの半分も無かったぞ?スキルとか3個程だったし。


「とにかく相当な戦力になりそうだな。よし探索は任せた!」

「随分と投げやりね。そういうのいいと思うわ、とりあえず周囲の情報でも集めればいいかしら?」


そう言うとネロンの背中から一対の黒い翼が生えてきた。よくある悪魔の羽根だ。


「ほう、収納出来る羽根か」

「便利でしょ?じゃ、行ってくるわ」


ネロンは空へと飛び立った。ちなみに投げやりでは無い。適材適所だ。


「さて、やることが無いな」


探索はネロンがしてくれている以上、僕が下手に動いてははぐれてしまう。


「建国ポイントは使えない。勿体ないな」


建国ポイントは限られている。今後増える予定が無い以上、迂闊に使えない。まぁ、半分くらいで簡易的な拠点は作れるようだけど今はそんなに拠点確保を急ぐ必要は無い。そういう事も含めてネロンに頼るべきだ。


「となると、ガチャで何か良いものが手に入るのを祈るだけだな」


幸いにして、魔石は50個ある。この魔法が5個あれば1回レアガチャが引けるのだ。ガチャには毎日無料で引ける『デイリー無料単発ガチャ』と、クエストクリア毎に毎回手に入る『クリアポイント』を使って引ける『クリアポイントガチャ』。そして高ランクが手に入りやすく、限定キャラも沢山排出される『レアガチャ』が存在する。全て低ランクは出やすく高ランクは出ずらい。


「とりあえずデイリーから引くか」


僕は『デイリー単発無料ガチャ』を選択する。すると画面の中ではなく、目の前に大きな金色の門と赤い石が出現した。


「なるほど、石を潜らせろと」


ゲーム内のガチャでは赤い石を門に投げ、潜らせるとその石がキャラクターやアイテムやカードに変化していた。

それを知っている僕は石を門へ投げる。飛んでいった石は門を潜ると、手のひらサイズの鎌に変化した。


武具

属性:闇

ランク ☆☆☆☆☆

名称:黒刈鎌シオモッテ カテゴリー:斧

Lv:1/5

物攻+300、魔攻+110

スキル:吸収Lv3、即死Lv2、使用制限『悪魔』

特殊技:楽になれ


解放条件:建国ポイント150



なるほど、なんて都合が良いんだ。これはネロン用の武具だろうな。使用制限『悪魔』とは悪魔族以外に使えないという事だ。ネロンが必要ならプレゼントしよう。なんせ武器の解放にも建国ポイントが必要だからな。ポイントに交換すると通常サイズになるのだ。


「とりあえずハズレでは無いと。ただアイテムが欲しかったな」


アイテムやカードは基本的に建国ポイントは必要無い為、今の僕には必要な要素だ。ちなみにカードはMP消費無しで一瞬で大技を出せる『魔法(マジック)カード』と対象にバフ、デバフやスキルを覚えさせる『付与(エンチャント)カード』がある。


「まぁ、本命の『レアガチャ』を10連すれば何かいいのが出るだろ」


次は『レアガチャ』を選択する。すると再び金色の門と赤い石が出現した。しかし次は石の数が10個程ある。


「何か良いアイテムよ、来るんだ」


手前の赤い石を門へ投げる。するとそれに追従して残りの赤い石が門へと飛んでいく。門を潜った石は次々にアイテムや武器やカードに変身していく。


アイテム

ランク ☆☆

名称:亜人呼びの銀鈴

スキル:ランク☆☆亜人召喚 (使用制限あと1回)


武具

属性:光

ランク ☆☆☆

名称: ホーリーランス カテゴリー:槍

Lv:1/5

物攻+、魔攻+

スキル:投擲Lv2、帰還Lv2

特殊技:なし


解放条件:建国ポイント20


アイテム

ランク ☆☆☆☆☆

名称:ヒールベッド

スキル:回復魔法Lv8 (使用制限なし)


アイテム

ランク ☆

名称:冷蔵庫

スキル:なし(売却用)


キャラクター

名称:マシンナーズエンジェルフレイム

種族:機械、天使

ランク:☆☆☆☆☆

Lv:40/50

HP:300

MP:500

物理攻撃:40 物理防御:40

魔法攻撃:40 魔法防御:40

素早さ:100

スキル:飛行Lv2、炎魔法Lv4、光魔法Lv4


解放条件:建国ポイント300


アイテム

ランク ☆☆

名称:汎用小型軍用車両

スキル:なし(売却用)


キャラクター

名称:レッサーワイバーン

種族:竜種

ランク:☆☆☆

Lv:5/25

HP:50

MP:0

物理攻撃:15 物理防御:15

魔法攻撃:0 魔法防御:5

素早さ:60

スキル:飛行Lv2、ブレス(火)Lv2


解放条件:建国ポイント40


アイテム

ランク ☆☆

名称:不死者呼びの宝珠

スキル:ランク☆不死者召喚 (使用制限なし)


アイテム

ランク ☆☆☆☆

名称:癒水湧きの(かめ)

スキル:回復魔法Lv4 (使用制限なし)



「まずいまずい」


このままじゃ爆死だ。10連で最大ランクの半分も出ないのはなかなか運が悪い。

と思ったら最後の石だけ門をくぐり抜けた後、そのまま空へと昇っていく。そして一枚のカードとなって手元に降りてきた。


魔法(マジック)カード

ランク ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(11)

名称:サイクロン

効果:全域数キロにも及ぶ大竜巻を巻き起こす。その後任意で天候を変更できる。


「ほぉっ!強いカードだな」


☆11のカードだ。コイツは強いぞ。知らんけど。数キロの大竜巻なんておいそれと使えないがな。いざと言う時は使えそうだな。


「まずまずかな、とりあえずは」

「戻ったわ、スケベくん」


ガチャで引いた物とフレイムリボルバーを送還すると背後にネロンが降りてきた。探索からの帰還だ。

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