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狐十夜  作者: 秋ぎつね
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第五夜 あ た し は き つ ね

 あたしは狐。

 狐が何で喋ってるかって?

 狐には2種類あるの。化けられる狐と、化けられない狐。

 化けられない狐はいつまで経ってもただの狐、化けられる狐は早ければ子狐の内から化けられる。

 あたしは今、人間の娘に化けてるの。

 化けるのは大抵人間、それも見目麗しい女に。

 雄の狐も人間の女に化けるのが得意。

 何でかって? 女に化けるといろいろ都合がいいからね。

 人間の雄……男は美人に弱いから、簡単に騙せるんだ。

 じゃあ何で騙すかって?

 一つは生きるため。

 人間の世界でなら女はいろいろと生きるのが楽だからね。馬鹿な男が寄ってくるから。

 そしてもう一つは寂しいから。

 化けられる狐って、不思議とあんまり同族同士の結婚をしたがらないの。

 だから人間の男に近付くんだけど……

……最後まで添い遂げられるのは稀ね。大抵は正体がばれて別れることになっちゃう。

 だけどやっぱり人間が好き。

 でもその所為であたしたち化けられる狐は数が減ってる。

 人間の言葉を借りて言うなら絶滅危惧種、IA類って言った所ね。

 化けられる狐の寿命はとても長いけれど、その分繁殖率が低いの。

 おまけに人間と夫婦になって産んだ子供はまず例外なく人間。

 多少不思議な力が備わっていたり……霊が見えるとか予言が出来るとか……するけど、それも孫の代くらいまで。

 孫の孫になるともうただの人間と変わりない。

 もっと悪いことに、化けられない狐との間に出来た子は化けられない狐になっちゃう。

 大昔はそんなこと知らないで狐どうしで夫婦になったはいいけれど、子供が化けられないので驚いた親もいたそうよ。

 で、化けられる狐の数が少なくなった今は、お互いに出会うこともまずなくなったの。

 多分、みんな人間に化けて人間の世界で人間として生きているんだと思うけど。

 いつか、この地上からあたしたち化けられる狐が一匹もいなくなる、そんな日は遠くない気がする。

 でもあたしは今日も人間の格好をして街に出る。

 生きるために。寂しさを埋めてくれるような伴侶を見つけるために。

 そして出来ることなら仲間と出会うために。

 今夜もあたしは街を彷徨う。

 できますれば、いいひとと巡り会えますように……。

お読みいただきありがとうございます。


明日も午前10時に更新します。

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