マリス(悪意)と人助け
投稿が遅れてすみません!これからは更新ペースをもっと早くできるよう精進します!
モンハンワールド楽しみスギィ!
「阿生~起きて! 起きて!」
阿生の妹、獲真 ミミが阿生を起こす。まるでラノベのような微笑ましい展開はミミの手、いや足によって壊されてしまう。
「起きて! 起きてよ~ ドスッ! ドスッ!」
ミミがなかなか起きない阿生の背中に下段蹴りをかます。阿生の声が次第に唸り声へと変わっていき、何か悪い夢でもみたかのようにパッチリと目を覚ましてそしてあ、起きた!と喜ぶミミの頭をつかみ床に叩きつけた。
「何回人を蹴って起こすなって言ったらわかるんだァァァア!」
銀○風に突っ込んだ阿生の怒りを無視し、痛いなーと呟いたミミに阿生は溜め息を付く。これが獲真家の日常である。
「お腹すいた~ ご飯作って☆」
「は~ ベーコンエッグでいいか?」
あざとく言うミミに阿生は再度、溜め息を付きながら朝食の支度を始めた。
獲真家は今、阿生とミミの二人暮らしである。そしてミミは阿生の妹だが血は繋がっていない。もともとミミは阿生の祖母、文世に養子として三年前、(その頃、ミミは四歳)獲真家の家族になった。ただその一年後、文世は心臓発作で他界し、それからは阿生がミミと暮らしている。家事などはすべて阿生が行い養っているため阿生にとってはミミは妹というより娘に近い存在だ。
「うまいか?」ミミの朝食を作り終わった阿生が忙しく出かける準備をしながらミミに問う。「うまーい!」とミミが元気に返事したのを確認したのと同時に準備が終わった。
「ミミ、今日俺はちょっと出掛けてくるからお前はお留守番な」
私も行く!というミミを何とかあやし、阿生は玄関を出た。
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現在、阿生は歌舞伎町一丁目を歩き回っていた。その理由は一月に阿生が化け蜘蛛に襲われてた時に助けてくれた恩人、仁童 白亜河に会うためである。阿生の恩人、白亜河が勤めているモンキーズ探偵事務所はこの町にあるのだ。ちなみに今は二月でバイトをクビになり、暇ができたので出掛けられている。
阿生が歌舞伎町のアダルトな空気に自分が場違いなことを感じながら暫く地図を見ながら歩いていると、さらにアダルトな空気の裏通りに入っていった。地図を見たら確かにこの通りの中に事務所があるのだ。だがこの辺りを見る限り探偵事務所らしき建物はなく、キャバクラやホテルが建ち並んでいた。そしてまた暫く地図を見ながら十分ほど歩いたところで探していた探偵事務所が見つかった。
その探偵事務所の外見は阿生の予想に反し、この通りのアダルトな雰囲気とはかけ離れた建物でとてもしっかりした事務所だった。そのことに阿生は少し安心し、二階にある事務所に上る階段を上り、事務所の入り口のドアに手をかける。
そして緊張して呼吸が少し荒くなっているのを深呼吸で整えて阿生はドアを開いた。
阿生はドアを閉じた。
普通ならこのドアの開閉の間に自分を助けてくれた恩人との会話が入るはずだった。しかしそれは阿生の見た幻覚?によって無くなってしまったのである。
阿生が見たのは羊のような毛を纏った"犬"の毛を刈り取る少女と後ろでは金髪のチャラそうな男と長髪の神父服を着た真面目そうな外国人の 男が野球拳をしている様子だった。これを幻覚といわずに何と言うだろう。阿生は自分が相当緊張していたと解釈し、今度は頬っぺたを三回程手で叩いてもう一度ドアを開いた。
その目に写ったのはさっきと変わらない光景だった。
俺の安心を帰せ!と叫びそうになったが何とかそれを押し殺し、阿生は近くにいた少女に話しかけた。
「こんにちは ここの事務所に仁童 白亜河って人はいるかな?」
「死ね人間」
「そっかこの事務所に居る、、、ん?」
少女の予想外の返事に一瞬固まってしまった。にこやかな笑顔からあんなSF映画の敵みたいな返しがくると全く思ったからだ。ちなみに阿生とこの少女は初対面であんなことを言われる理由はないはずだ。暫く静寂が入り、その様子を見たチャラ男が阿生に話しかけた。
「悪いな、こいつこういう性格なんだよ 白亜河なら今、出掛けてるぜ」チャラ男が軽いトーンで少女の代わりに返答した。どうやら見た目以外は毒舌?の少女よりまともそうだ。
「あ、そうだ一応ここにいるメンバーの紹介するな。俺は帝 金座(みかど きんざ)。この毒舌が野々 鈴実(のの すずみ)。んであっちにいる人がオリバー ストーツさんだこの中では最年長だな。」
「で? 白亜河に何の用があるんだ?」
「あ、あぁ 話すと長くなるんで。」
金座が紹介を終え、続けて質問をする。それに阿生はお茶を濁すように答えだ。白亜河に対する用件なんて言える訳がない。自分が化け蜘蛛に襲われてたのを白亜河に助けられたなんて話を誰が信じるだろうかしばらく金座の他愛もない世間話を聞かされていると「ガチャ」と事務所のドアが開く音がした。そしてドアが開くと同時に阿生がこの事務所に来た理由の人物の姿が見えた。
「おぉ! ちょうど帰ってきた!白亜河、お前にお客さんだ。」
「ん? お客さん? 誰? てか金座!服着ろよ!」白亜河と金座が親しげな会話する。阿生は白亜河が帰ってくるのが少し早かった気がしたが金座と話している間に時間がたったのだと解釈し白亜河に話しかけた。
「あの、、、一月に助けられた者なんですけど覚えてますか?今日はそのお礼と聞きたいことがあるんっす。あ、そうだ俺は獲真阿生って言います。」
確かめるように言った阿生に白亜河はやっぱりなと何かを確信したような顔で答えた。
「わざわざありがとう あの蜘蛛についてだね?」
「ここで話して大丈夫っすか?」
阿生が慌てるように問う。化け蜘蛛の話を聞かれないようにするためだ。それに白亜河は「あ、あぁ大丈夫 ここにいるメンバーは全員、あの蜘蛛について知ってるから」と質問の意図を察して答えた。
事務所にある丸く大きなデスクに向かい合って座り、阿生が話を切り出す。
「改めて助けてくれてありがとうございます。それで聞きたいことは白亜河さんがさっき言ったあの蜘蛛のこととどうやってあれを倒したのかっていうことっす。」
「あぁわかった 僕の今言える限りのことを話そう。ただ、何であの蜘蛛を殺した力についてまで知りたいと思ったんだい? 普通、あんな化け物がいると知っていたら蜘蛛のことだけ聞いて関わらないと思うんだ。。」
別に嫌だったら答えなくていいよと言う白亜河に阿生はまっすぐ自分の本心を打ち明けた
「家族を守りたいからです 婆さんと約束したんです。「どんなことがあろうと俺の家族のミミだけは守る」ってだからあいつらを殺せる力のことを知りたいんです。勘だけど他にもあの蜘蛛みたいな化け物がいると思うんです。」
、、、そうかと納得した白亜河が阿生が聞きたかった蜘蛛についての話をしだした。
「君が見たのはマリス(悪意)だ。」
マリス?と首を傾げる阿生に答えるように白亜河は話を続ける。
「悪意という意味だよ あいつらはその名のとおり"人の悪意"から出てきたんだ 怒り、悲しみ、嫉妬や憎しみ等の"悪意"をもってこの世界にいる生物に寄生し、完全に成長するまでその生物の中に居続けるんだ そして完全に成長したら寄生した生物の身体を乗っ取り行動する その乗っ取った後のマリスの身体はもとの寄生した生物の何倍も巨大化し、その生物の身体的特徴が強化されてる 普通の人間じゃ軽く叩かれただけであの世行きだよ」
阿生はごくりと息を飲んで白亜河の話を聞いている。自分が出会った蜘蛛のことを思い出し、額から汗が流れる。あの蜘蛛の鎌を
くらっていたら死んでいたのだと思うと急に背筋に悪寒がはしった。
「だが本当にあいつらが厄介な点が2つある1つは"悪意をばらまく"という点だ マリスは完全体になると身体から黒い玉を生み出すんだ。その玉は数ヶ月たつと新たなマリスの卵になったり、人の中に入って悪意を"増幅"させるんだ。そしてもう1つはマリスを見た大半の人間の記憶がないということだ。これは文字通りマリスに出会ったほとんど人間がその出来事を覚えていないのさ。ただごく稀にその出来事を覚えてる人間がいる。それが君と僕達だなぜ僕達だけが覚えてるいるのかという理由はまだ僕達ですら知らない。」
1つ目の説明に疑問が残り、増幅したらどうなるんっすか?という疑問を投げかけた阿生に答えるため白亜河は話を続ける。
「簡単に言うと殺人、窃盗、自殺等の犯罪行為が増加する。そもそも悪意とは他の"物"に抱く悪い感情や、見方のことだ。それが何の脈絡もなく突然増えるんだ。常人には考えられないほどのストレスで考える力が弱り犯罪行為に至ってしまうんだ。これがマリスの情報だよ。」
「そして次はマリスを殺した力、"ギフト"についてだ」
ギフト、と阿生が聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟やく。
「ギフトとは人間の身体の中に流れる"ヒート"というエネルギーを消費して発動する力のことだよ。ギフトは使用者によって能力が違い、物によっては使用者自身に危険を及ぼすこともある。
ちなみに何でギフトの能力が人によって違うかを説明するとギフトは発現者のイメージや、頭の中に強く残っているものを具現化させているからなんだよ。
この事務所にいるメンバーは全員、ギフトを持っている。ちなみに君が見た僕のギフトは昆虫弾丸って言って昆虫の能力を取り入れた弾丸を生み出す能力だよ。」
「ギフトを発現させられる人物は限られていて、身体に流れるヒートが多ければ多いほどギフトを発現する確率が高くなるんだ。ちなみにギフトを発現させるきっかけは発現者の強い"意思"だ。例えば足が速くなりたいとか阿生みたいに誰かを守りたいという意思で発現するんだ。んで最後に君に言いたいことがある。」
白亜河の説明が終わり、謎の緊張感が事務所内に流れ息を飲む阿生に更なる事実が告げられる。
「君は近い内にギフトを発現することになるだろう。」
それは阿生にとって驚きと喜びを同時に味わうような一言だった。その理由は阿生の祖母、文世との約束を必ず守るためでもあり、単純に自分の大切な家族を守りたいという思いからくる気持ちである。顔が少し赤くなっている阿生に白亜河が話を続ける。
「初めて阿生君を見たときにもしかしてって思ったんだこの子はギフトを発現させる力があるんじゃないかっていうね。そしてそれが確信に変わったのが阿生君と事務所で会ったときさ。」
「これから阿生君は人間の手には収まりきれないような異常な力を手にすることになると思う僕はその力を阿生君が言った家族を守るために使って欲しい。そして逆にその力を決して憎しみや、怒りに身を任せて使わないないで欲しいんだ。それは君の心と身体を大きく傷つけることになるから。」
その言葉を最後に本当に白亜河の話が終わり、阿生は白亜河にもう一度、蜘蛛の時のお礼を言うと席をたった。
「依頼でも無いのにこんなに長居しちゃってすんませんもう帰ります。」
「いやいや、今日はわざわざ来てお礼何て言ってくれてありがとうまた来なよ僕で良ければ相談に乗るからさ。」
そう言って手を振る白亜河と事務所のメンバーにお辞儀をして阿生は事務所のドアを閉めた。
帰路 ミミへのお土産
「げげっ?!もう昼の12時かよ昼飯作る時間もねーし何か買ってくか~」
事務所を出て手元の時計を見た阿生が仕方無さそうに呟やく。その理由はミミの食事に原因がある。
ミミはフードファイター顔負けの食欲を持っているのだ。だから買うとなるとお金がかかってしまう。
暫く商店街を歩いているとやたらいい匂いのする店があることに気付き、その店に入った。この店はどうやら中華料理店らしい。店の雰囲気的にそんな感じなのだメニューを見るとそこには麻婆豆腐や、油淋鶏、回鍋肉等の中華の定番料理があるどれもこれも旨そうだ。試しに麻婆豆腐を1つ頼んでみる。(480円)
そして10分ぐらいだった頃に来た麻婆豆腐を見て阿生は「でけーぇ!!」という驚きの声をあげた。当然である。阿生の目の前にあるのは見たところ1kgを軽々越しそうなデカさの麻婆豆腐なのだ。
「内の店のモットーは旨くて多くて安いだからな。坊主、若かいんだからもっと食わねえとな」笑顔で店主が言う。なんだかこの店主、めちゃくちゃカッコいい。そしてその麻婆豆腐を食べてみると物凄く旨かった。火を吹くほど辛いのに全然食べるのが止まらないレンゲを見て阿生は唐突に自分の最初の目的を思い出し、店主に問う。
「この店、料理の持ち帰りってできるんっすか?」
「持ち帰りか~悪いな、そういうのはやって無いんだ。でも何で持ち帰りするんだ?」
「家で待ってる妹に食わせてやりたいんですよ。まぁそうっすよねすいません変なこと聞いて。」
「持ってきな」
「え?」
「妹ちゃんに旨い麻婆豆腐食わせてやりな、、、グスッ代金は要らねえ」
店主が涙を流しながら麻婆豆腐の入った大皿を差し出した。阿生は申し訳ない気持ちになり謝ったがそれでも店主は差し出すのをやめない。結局代金だけは払い、麻婆豆腐を持って帰ることになった。
阿生ちょっとした罪悪感を感じながら家に帰った。(その後ミミは麻婆豆腐を食べ大喜びした。)