第8話
「こんにちわー!道場破りに来ました〜・・・あ、この場合、たのもー!だっけ?」
私がそんなことを呟いていると。
「なんだね。ん?零夜じゃないか。弱くなったから、ついに弟子入りしに来たのか?」
とガタイの良いおじさん?が出てきた。
「・・・龍奈、ちなみにこいつ俺と同い年だからな?おじさんって呼んであげるなよ?気にしてるから。」
「よくわかったね!私が、この人をおじさんって思ったのに。というか、同い年なの?おっさんだね!」
「・・・(ピキッ)」
1つ青筋を立てた状態になったが、笑顔で私に話しかけてきた。
「・・・嬢ちゃん、誰か知らないが、そこの雑魚が言ってただろ?気にしてんだからおっさんと呼ぶなよ。」
「そんなことどうでも良いんだ!それで本題に入るんだけど、道場破りに来たんだ!もちろんそこの|雑魚(零夜)じゃ無くて、私がやるんだけどね!」
「・・・そんなことどうでも。って・・・はぁ?嬢ちゃんが?やめとけやめとけ、うちの主将に勝てねえと道場破り成功にはならねぇ。お嬢ちゃんだったら俺にも勝てねぇよ。」
ふむ、まあ。普通そうだろうね?
「じゃあ、おじさんに勝てれば主将さんと戦う権利はもらえるの?」
(ビキッ)
おっ!青筋増えた!
「・・・なめられたものだな。良いだろうそのように話をつけてやる。ちょっと待ってろ。・・・嬢ちゃん、名前は?」
「龍奈。」
「逃げるなよ!」
そう言って、奥の方に入っていった。
「さて、零夜、お前はジジイ呼んでこい!証人は多いほうがいい。」
「は、はい!」
「あ、私はどうすれば??」
「世良さんは一緒にいた方が良いよ。零夜と一緒に行ったら課題やらされるよ。」
「あ、そうか。わかった。」
バタバタと走って行った零夜。それを見送った後すぐにおじさんが帰ってきた。
「・・・ついてこい。」
何やらジロジロ見られたが気にせずついていく。
案内されたのは懐かしいと感じる場所。当分来てなかったから当たり前か。
「やはり、君だったか。隆仙爺さんの一番弟子、神白龍奈。」
何やら私の自己紹介を勝手にしてくれた人がいる。
この人は・・・
「誰?」
(ズコー!!!)
おぉー!すごいね、大半が転けたよ!息ぴったり!
「・・・ゴホン!まあ、覚えてないのも無理はないか。小学5年生だったし、挨拶もしてないからな。俺は、零夜の元顧問の石垣だ。そして、君が相手にする主将の名は千堂 恭二だ。」
・・・あれ?千堂?どっかで聞いたような・・・・・・あ。
「ねえねえ、千堂恭二さんだっけ?あなた、弟いる?」
「ん?あぁ。いるがそれがどうした。」
やっぱり、怪力くんのお兄さんか。
・・・まさか、兄も怪力じゃないよね?そんな面白くないオチじゃないよね??
「・・・とにかく、君の望みは、この道場の所有権利を奪うという目的で良いんだね?うちの千堂は異能力の使い手、怪力の持ち主だぞ?覚悟はできてるのかな?」
・・・・・・。なんで、こんなオチにしたの?!はあ、なんか、未来が見える。兄弟揃って同じ能力かい!
「あー。ハイハイ覚悟はできてますよ。私はさっさとここを奪い返して、ここでピクニックするんですから。」
「・・・この道場の中でピクニック?ふざけるな!!本気で潰してやろう!」
何やら殺気立ったよこの人。変なの。
やる気の千堂をみた石垣先生とその他の門下生は壁際に下がる。
「世良さんも、後ろに下がってて。」
「うん、わかった。頑張ってね!」
「うん。」
さて、早く終わらせて、ジジイの説教タイムだ。
5分後・・・
汗だくの千堂と状況が理解できない石垣先生と外野。世良さんは少し興奮してる。
「はぁ、はぁっくっはぁ、はぁ。」
「な、何が起きてる。」
「怪力のくせに弱っ。まだまだ修行不足だね。体力もないし、怪力操れてないし、体の運び方が丸わかり、雑魚か。まあ、零夜よりは雑魚ではないけど。」
「す、凄い!凄い!龍奈ちゃん!」
「・・・何やら騒がしいと思ったら、お前さんか。龍奈。」
「す、すげぇ。」
庭の方を見るとそこにはガリガリの爺さんと零夜がいた。
「隆仙爺、痩せたね。そりゃあ、負けるわ。老化現象?」
「フン!力を使ったらこうなっただけじゃ、飯を食えば治る。」
「あっそ。」
「で?お主がなぜここにおる。お前さんはもうここを卒業してこの道場に用はないはずじゃが?」
「え。なんて言いました?隆仙先生の卒業試験をクリアしてるんですか?!この子!!」
「え、何それ。俺初耳!」
「卒業試験?」
石垣先生は卒業試験について知ってるようだね。零夜には言ってないから当たり前だね。
門下生の人と世良さんは、卒業試験について知らないだろうね。
「懐かしい、卒業試験。あれは辛かった。富士山に登ってその上で、爺さんと組手5時間。その後帰りは、道場まで走り込み。アレはもうしたくない。」
「「うわぁー」」
「そんなことどうでも良いんじゃ。何しに来たんかと聞いとるんじゃ!」
「え。爺さんを締めに来た。こんな可愛い世良さんに変態じみたこと強要しているそうだね?ちなみに、道場は私が欲しいから奪っただけ。爺さんに返すためじゃないからね?」
「フン、誰が誰を締めるだと?そんなことできるわけが・・・」
「それができるんだなー。この後に私の母さんが来ると言っても信じない?」
そう伝えた瞬間。
冷や汗をだらだらと流し始める爺さん。
「・・・か、かかか奏さんが来るじゃとぉぉぉ!に、逃げなくては!零夜!今すぐにわしは旅に出る!探すなよ!」
「どこに行かれるんですか?お爺様?」
凛とした女性の声。それは!
「お母さん!ナイスタイミング!!」
「か、かか奏さん?!お、おおおお久しぶりじゃのぉ。」
「えぇ。お久しぶりです。着いたはいいのだけど、これはどういう状況か教えてくれないかしら、龍奈。」
「んー?なんか、1年前ほどに道場破りされて、取られていた道場を私が今、取り返した感じかな?」
道場破りをされていたことを聞いて、母さんは?
「・・・お爺様は、龍奈が卒業してから弱くなったということですね。そんなに寂しくなったなら卒業した後も来てくれと素直にお願いすればいいのに。」
そう推察するの?えー?違うと思うけど。
「ち、違うわい。わしは別に龍奈を孫のように思っとったなんてそんなことは・・・ハッ!」
しまったという顔で私を見る。
なん、だと?母さんの指摘が当たるとは、嘘でしょう?私は素できょとんとする。
「ち、ちちち違うからの!全然違うんじゃ!来てくれなくて、寂しくて、鍛錬に身が入らんで、こやつらがそんな時に道場破りしに来て龍奈のおらん道場なんかどうでもよくなって、わざと負けて・・・ハッ!」
何やらすごい自爆をしているのですが。
「わ、わざと?!どういうことですか?!じゃあ、本気で相手をしてなかったのですか?!」
「・・・そうじゃよ。貴様らみたいな雑魚のことなんかどうでもいいんじゃ!!龍奈ー。また、道場に通って来んか?のぅー。お前だけなんじゃー儂と殺りあえるのは〜。」
なんか、面倒くさいおじいちゃんがいます。助けを母さんに求めよう!
「龍奈、また、通ってあげたら?週一でもいいんでしょ?お爺様。」
なんということでしょう。お母様に裏切られた!
「もちろんじゃ!週一で儂と組手してくれ!!!」
・・・はあ。まあ、いいか。学校始まるまで暇だし。ゲームすることしか考えてなかったから。
「・・・いいよ。通ってあげる。世良さんに護身術教える約束したし。じゃあ、道場は隆仙爺が持っててね。私と殺り合う場所なんだから次からは守ってねー。」
「勿論じゃとも!!」
うおおおおーとやる気をみなぎらせる爺さん。
そこに、
「待ってくれ!!・・・あの、隆仙先生!もう一度!手合わせを!!」
「だが断る。言っておろう。儂を倒したいなら、龍奈に互角と渡り合えないと無理だと。今の試合で何もわからんとは本当に雑魚か?」
「・・・っ!」
さてさて、こちらも終わりかな?
ん?
「・・・だ。まだ、終わってねぇ!終了の知らせはまだ先生は言ってない!試合を再開するぞ!餓鬼!」
はあ、めんどいなー。
「もうやる気ないんだけど。」
「やる気がないなら儂とやるか?」
「爺さんは黙って引っ込んでろ!!異能力者でもない餓鬼になんで勝てないんだ!!」
「馬鹿もここまでくると・・・はあ。まったくなんもわかっとらんの。龍奈はいつ、異能力者じゃないと言った?」
「・・・ぇ。」
「龍奈は異能力者じゃ。力を使わずにお前を叩きのめすことが必要だと思ったのじゃろうて。それに、龍奈は純粋に格闘技を楽しんでおる。それなのにお前さんは力をふんだんに使って相手をボコボコにすることしか考えておらんじゃろ。そこから全然違うんじゃよ。そこから鍛え直してまた来い!」
「・・・ぁ。」
爺さんが元気に叱っている。変な光景だ。まあ、立場はこれから逆転するが。
しばらくして、先生に連れられ、千堂と他の部員は去っていった。
軽く掃除をして、私は道場に寝っ転がる。
ちなみに、道場の隅では・・・
「お爺様、世良ちゃんにセクハラまがいのことをした件について反省するまで、そうしててくださいね?」
「ひ、髭に火が移る!堪忍じゃぁぁー」
正座して、瓦が何重にも重ねられ、分厚い木に母さんが火をつけて、髭に燃え移りそうで移らないギリギリを数時間言いつけられていた。
・・・平和だー。
『どこがだよ?!』
あ、リル。今日は出番なしかと思ってたよ。
『俺が寝過ごしている間に何やってんの?!・・・まあ、いいや。お前は能力なしでも最強だとわかったし、異能力を封じる能力を望んだ奴がいたが、大丈夫そうだな〜と思ってな。』
へー。異能力を封じる能力かー。・・・それってさ、異能力を封じるんだよね?
『ん?ああ。そう言ってるだろ。』
それって、他の人の場合異能力を封じれば、技登録されたものも使えないだろうけど。私は関係なく使えるんじゃないの?
『・・・・・・ぁ。そうか、お前は、関係ないな。お前の場合封じられても、技だけで抵抗できるしな。・・・最強だな。』
つまり、私の日常を邪魔できる奴はいないということだね!
良いことだー。よし、眠くなってきた。お昼寝しよう。
おやすみ、リル。
『また寝るのかよ・・・。まったく。おやすみ、龍奈。』