第32話
さてさて、今日も一日遊びますかねー。
「龍奈ー?龍奈に電話よー?なんか、通訳の伊藤さんっていう人なんだけど、エミル君といえばわかります。って言って来て・・・龍奈ー?降りてきてくれるー?」
エミル君!
「わかった!今降りる!」
「龍奈?どちら様なの?」
「んー。まあ、イギリスのドラゴン事件って検索したら詳細出て来るよ!代わって代わって!」
「んもう、どこに行ってるの!次から外国行ったらお土産買ってきて!」
「わかったわかった!」
まさか、お土産買ってきてと言われるとは思わなかった。お金ないんだけど。
「はい、もしもし。代わりました龍奈です。」
【あ、はじめまして、エミル・マッケンナ様の通訳をやっている伊藤と言います。今からエミル様の話の通訳を・・・え?エミル様なんですか?・・・いや、ですが。・・・・・・わかりました。すみません、エミル様が話たいそうなので、代わりますね。】
「あ、はい。わかりました。」
【・・・リュウナ!おはよう!!あのねあのね!あのゲームかってもらえたの!きょうあそべる??】
「あー。ごめん!今日は知り合いと遊ぶ予定なんだぁ。本当にごめんね?」
【そっかぁ。いつならあそべる?】
「明日ならいいよ!明日遊ぼっ!」
【わかった!あした、あそぼう!それとね?リュウナのおうちにあそびにいきたいんだ。それか、あそびにきてほしいの。】
「どうかしたの?」
【あのね、みんながぼくにリュウナのことおしえておしえてってきいてくるんだ。でも、やくそくしたし、いえないっていったら。ウソつきっていってきて・・・ぼくがウソつきになっちゃったの。リュウナお姉ちゃんなんてそんざいしないんだって、シージーだったんだろって。】
誰だ。可愛いエミル君をウソつき呼ばわりしてんのは!
「遊びに行くのは構わないよ。でも、私だけじゃなくて、ボディーガード?みたいな人もいるけどいい?」
【うん!いいよ!ぼくのいえにもいっぱいボディーガードさんたちいるからだいじょうぶ!きにしないよ!】
いい子や。
「じゃあ、遊びに行くのはまた明日ゲームの世界で決めようか。」
【うん!わかった!じゃあ、またあした!・・・あ、いとうに代わるね!】
「はーい。」
【・・・代わりました。伊藤です。・・・龍奈さんは、エミル様の言葉わかるんですか?】
「はい、わかりますよ。」
【・・・・・・私いるんですかね?】
「まあ、私以外が出たら分からないですからいるにはいると思います。伊藤さんはエミル君の専用通訳さんですか?」
【はい。日本語とフランス語と英語が出来ますので、そのほかは他の専門の方が居ますけど。】
「そうなんですか、じゃ、私はこれで切りますね?」
【はい、ありがとうございました。失礼します。】
ふむ、明日の予定が決まったね。それに、遊びに行く予定も作らないとね。
とりあえず、お母さんに質問責めにされる前にサマエルのところに退散しよう。
「龍奈?!ちょっと話が聞きたいのだけど??・・・・・・って、逃げたわね。」
逃げきった!さて、サマエルお兄ちゃんに会いに行きますか。
「サマエル!来たよー?」
・・・・・・シーン。
あれ?もしかしてまだ起きてないのかな?
あ、ケルン達!
「おはよう!ケルン、ベロス!」
「「キャンキャン!」」
「あれ?少し大きくなった?今日は一緒に異世界に行こうね!それで、サマエル知らない?」
「キャンキャンキャン!!」
館の上の方を向いて吠えるベロス。
「まだ寝てるのか、起こしに行ってくるね。」
「サマエルー?サマエルー。朝だよ?」
寝室のドアを開け、もっこりとした布団を剥がす。
だがあるのは枕のみ・・・
あれ?いな、い?!
「龍奈様ぁつーかまーえた♡ふふふふ。」
つ、捕まった!
ってどこいたの?!上から降って来たってことは、天井?さすが吸血鬼、やりそう。
サマエルは私を天井に隠れてベットの近くに来てから背後から押し倒すように拘束したようだ。
現在、ベットの上でぎゅーってされてます。それと、
「龍奈様ぁ♡スーハースーハー♡至福の時です!これなら、ぐっすり、ねむ、れま、す・・・スースー。」
え?!寝てなかったの?!
「サマエル??」
「・・・・・・・。」
不眠症なのかな?それとも変な夢みるとか?逃さないように後ろからホールドされてるので起き上がるのは無理だね。クルッと回ってサマエルの顔が見えるように向き直る。綺麗な寝顔だね。こんなお兄ちゃんいたら楽しいだろうなー。私一人っ子だから兄妹って憧れるんだよね。
「うっぐ・・・いや、だ。暗闇は・・・もう。」
急に顔をしかめ苦しそうになるサマエル。
・・・そっか、サマエルずっと封印されてたもんね。お地蔵さんの中に。あの中は暗闇だったのか。それじゃあ寝るのは怖いよね。
龍奈は無意識に神力を体に纏う。悪魔にとって神力は天敵のようなもので普通は弾き合うが、龍奈の創り出す光は温かく優しい光だった。
「サマエル、大丈夫。私が居るから。私が光として、サマエルのそばにいる。1人じゃないよ。暗闇は私が照らしてあげるから・・・楽しい夢を見て?」
「・・・・・・・?龍奈様?」
「あれ?起きた?まだ寝てていいよ?」
「・・・・・・暗闇の中で龍奈様の声が聞こえました。その、ありがとうございます。」
「ふふふ、どういたしまして。サマエルは甘えん坊さんなお兄ちゃんなところがあるよね。」
「・・・・・・・・・龍奈様、今のもう一回呼んでください。」
「ん?あぁ、お兄ちゃん?」
「ッ♡♡♡!!ハッ!そうです!お兄ちゃんです!いっそのことお兄ちゃんになりましょう!!今度から私のことはお兄ちゃんと呼んでください!」
「ふふふふふ。絶対そうなると思った。じゃあ、私のことは様なしで呼んでね。」
「へ。龍奈様のことを、様なしって・・・龍奈?」
「何?お兄ちゃん♪」
「・・・・・・・・・ちょっと様なしだと理性が効かなくなるので様なしはご勘弁を。」
「むむ、そっか。じゃ、もう少し慣れてからにしよう!まさか、お兄ちゃんが出来るとは、思わなかったよ。」
「そうですね。私も妹が出来るとは思いませんでした。さて、では、兄妹だから出来ることをしましょうか♡」
「へ?」
「私、龍奈様がここに来られるまでずっと天井に張り付いてましたので、汗かいたんですよね。」
そう言いながら、私をお姫様抱っこして寝室を後にするサマエル。
「汗を流しに行きましょうか。一緒に♡」
ということは・・・・・・?!
「ちょっと待って、兄妹でお風呂は小さな頃だけだから!!私もう中学生だから!!」
「駄目です。家は男兄弟ってしかいなかったので妹ができたらしたいことリストのトップなんですから。」
「いや、私一人っ子だからわかる気がするけど!お風呂は駄目だって!」
「・・・・・・さあ、服を脱ぎましょうか♪」
風呂場に着くの早すぎだよ?!
普通にサマエルが服を脱ぎ出したのでバッと後ろを向く。そして、風呂場のドアに手をかけ、扉を開けようとするが。
「な?!なんで開かないの!!」
「そりゃあ、私の異空間ですからね?鍵とか自由自在なのですよ。ほら、龍奈様も脱ぎ脱ぎしましょうね?」
上半身裸のサマエルが
「ちょっ!服を上に上げるな!ひゃんっ、ズボンの中に手入れるなっ!ちょっといい加減に・・・」
ズガン!!!
「うわっ?!」
「ッ?!」
『強制召喚、神白龍奈。』
「へ?・・・あれ?リル??」
「何してるんだ?お前は。」
「いや、遊んで・・・」
「俺以外の男に体を触らせたな?」
「え、いや。サマエルはお兄ちゃんみたいな・・・」
「触らせたな?」
「・・・・・・あ、ハイ。」
「私の妹いじめずに返してくれますか?邪神。」
「誰がお前の妹だ。今すぐ消滅させてやろうかあ”あ”?」
「・・・・・マジギレですか。はあ、嫉妬深い男は嫌われますよ?」
「“黙れ”」
「ッ!!」
「・・・サマエル?・・・・・・何したのリル?」
「こいつはこいつの居るべきところに返す。今すぐ契約を切れ。」
「ーーッ?!ーーー!!」
声が出てないサマエルが何か見えない力に拘束されたままもがく。
「・・・どこに送るの。」
「魔界だ。悪魔王が悪魔を統一している場所だ。」
「ーーッ!!!!ーーー!ーーー!」
全力で嫌がるサマエル。
「サマエルが嫌がってるから嫌だ。」
「強制はさせたくない。もう一度言う、龍奈。切れ!」
「嫌だって言ってるでしょ!誰が!!」
「・・・お前がさせたんだからな。“神白龍奈、吸魔との契約を切れ。”」
「ッ?!な、うぐ。」
「ー!!ーーー!!」
「抵抗しても無駄だ。言霊はそう言う力だからな。逆らえない。」
「んん!け、『契約、破、棄』・・・・・!!サマエル!!」
「龍奈様!!」
「もう2度と龍奈の前に現れるな!!」
黒い沼のようなものがサマエルの足元に作り出され、飲み込まれていく。
「龍奈、お前はこっちに来い。神界で話がある。」
私はリルに捕まり、見えない力に拘束されるその間にもサマエルはどんどん沈んでいき・・・
「サマエル!サマエル!!嫌だ!離せ!!サマエル!!」
「龍、奈、さ、ま・・・・・」
力なき声が響き完全に消えた。
「・・・・・。」
私は拘束された力からもがくことをやめ、呆然とした。
サマエルが消えた。
何も悪いことしてないのに、あんなに嫌がってたのに、魔界に送った。だれが?・・・リルが。
邪神が。何も、してないのに!!
気がついたら神界にいた。目の前では、創造神がオロオロしてる。目を向けると、嬉しそうに他のみんなを呼ぶ。
いらない。欲しいのはお前ラじゃない。
「邪神!龍奈ちゃんが気がついたぞ!」
邪神・・・。
ジャシン。こいつが・・・コイツガ!
「龍奈、あの吸魔のことは忘れろ。いいな?龍奈?ッ?!な、なんで!なんでお前から瘴気が!ジジイ!どう言うことだ!」
龍奈は邪神を目の前にして身体から黒い煙のようなものを吐き出し身に纏う。
「し、知らんわ。さっきまで何ともなかったんじゃぞ!?」
「あの吸魔のせいじゃないの?!やっぱり、消しておくべき・・・ガッ?!りゅう、なちゃんっ?」
私の前でサマエルを消す?
ふざけるな!
私は俯いていた顔を上げ戦女神を睨みつけ首を掴み、握りつぶす気で力を込める。
「ッ!!そ、その眼はっ!?な、何で龍奈ちゃんがその眼を持っとる!!どういうことじゃ!!」
「金色の、眼?」
「それは、昔の龍神が持っておった眼じゃ!!どこで手に入れたっ!?・・・・・・いや、ま、まさか。瘴気が効かんのも、そういうことなのか?」
「一体何がどうなってる!!教えろ!ジジイ!」
「・・・とりあえず、拘束するんじゃ!戦女神が死ぬ!」
「ガッ!ぁあぁあぁー!!!」
「戦女神!」
「ケシテオクベキ存在はオマエタチノ方だ。私の家族を返せ!!!」
「くそっ!『監獄、鎖よ、我が力を糧としその者を結びつけよ』!!」
邪神が叫ぶと龍奈の足元に鎖が産み出され手足を拘束するために動き出す。
「クロ、食べなサイ。」
その一言で、能力、滅再のクロが鎖を消し去る。
「んなっ?!」
「・・・すまんのぅ、龍奈ちゃん。痛いが我慢してくれ!『浄化、我が名の下に闇に属するもの達を祓いたまえ』!!」
「シロ、私を覆ッテ。」
いくつもの大きな光の槍が上から降り注ぐが、龍奈はシロを纏ったお陰で無傷。
「な、なんじゃと?!」
「・・・・・。」
私はこんな奴らを相手にしてる場合じゃない。サマエルのところへ行かないと。
そう考えた龍奈は戦女神の首から手を外し、転移を行おうとする。
「ゲホッ・・・ウッア”ァァー!!」
【待つんじゃ、わしの愛しき孫龍奈よ。お前さんの悪魔は無事じゃ。わしの加護をつけてきた。龍奈、大丈夫じゃ。サマエルは龍奈の帰りを待っとる。じゃがその姿じゃ怖がられる。落ち着くんじゃ。】
「・・・・・・龍駕爺?」
突然、現れた龍奈の祖父、神白龍駕。
【おぉ、そうじゃよ。龍奈?『憑依』は特訓してからじゃないと使ってはダメだと昔約束したじゃろ?わしがこれから特訓してあげるから、一度解きなさい。】
「・・・・・・いやだ。サマエルが無事なら、コイツラヲ消さなければナラナイ。サマエルが何もしてないのに、コイツラは。コイツラハワタシノ家族を私から引き離ソウとした。コイツラハ消すべきだ!」
【こいつらにはの、わしがお灸を添えておくから勘弁してやってくれぬかの?】
「・・・本当?・・・・・・・・・ワカッた。一度解く。『解除』・・・・??」
あれ?フラフラする。それにすごく眠い。
【おぉおぉ、大丈夫かの?ほら、眠いのじゃろ?少し眠りなさい。】
「・・・おじいちゃん、起きてもいる?」
【勿論、おるとも。例え、『事実』を変えてでも、龍奈のそばを離れんよ。龍奈がわしの授けた神の力を自由自在に操れるまでそばにあるからの。ほら、安心してお休み。】
「・・・ぅん。おやすみなさい。」
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
【さて、お前さん達覚悟はええかのぅ!】
「ちょっと待て!話が全然わからん誰だあんた!」
「なぜお前さんが生きとる!死んだはずじゃろ!」
「・・・・・・。」
「戦女神の手当てをしないと、瘴気がこんなに中に入り込んでしまってます!!」
【ふむ、まずはそこの女神は助けてやるかの。『送還、我が龍神の名において、闇よ、還るべき場所に還れ』!】
「っウゥ!!はぁっ、はあっ・・・」
ラミナの体を蝕んでいた黒い瘴気が龍駕爺の力によって吸い出され、龍奈の体に戻っていく。
「んぅ?ん〜。」
【これで良いな!では次はそこの若いのじゃ!!よくも面倒なことしてくれたの!神の道にお前さんが誘わなければ、龍奈は神と関わらずに生きていたものを!
まあ、これからはわしが付いとるから余計なことはさせんがの。フン!】
「・・・・・・。」
「で、なぜお前さんが生きとる!!龍神!」
【煩いのぅ。隠居生活を邪魔しおって、このハゲジジイは黙っとれい!お前もお前じゃ!わしの龍奈を自分の孫にしようとしたじゃろ。その神の座また(・・)奪い取るぞゴラァ!】
「フ、フン!奪わさんわい!・・・って話しを逸らすんじゃないわい!どうやった!」
【わしは最初っから死んだらん。派手に死んだように見せただけじゃ。見事じゃったろ!お前さんが放った雷がわしのあったすぐ横のガソリンスタンドに落ち、爆発して死んだやつ!見事な演技力じゃ!うんうん。】
「あれで死ぬわけはないと思っていたが。まさか生きて、地上で子供を持っていたとは思わんわ!」
【確かに子は持ったが、息子と娘にわしの神の力は授からんかったんじゃ。授からんかったのは娘の娘。つまり龍奈じゃ。龍奈はのぅ、赤ん坊の頃から、瘴気を操って遊んでおったからの驚いたわ。じゃが、瘴気というには色が濃いからの。“闇”と呼ぶことにしたんじゃ。その闇は龍奈から生まれ、闇は龍奈の気持ちに反応し動く。一度、わしが若者にぶつかって謝ったんじゃがカツアゲされそうになってのぅ。それを見て一緒にいた5歳の龍奈が過剰反応して、闇を操りその若者を瀕死状態にしてのう。その若者は不治の病になって死んだんじゃ。それを見てこれは封印さんといかんと思ってな、小さな龍奈に“約束”という形で封印してあったんじゃ。ま、お前さん達のせいで解けてしまったがの。】
「・・・そんなことが。それは、わしらが悪かったの。」
【・・・気持ち悪いからやめてくれるか?その反応。鳥肌が立ったわい。】
「わしが素直に謝っとるんじゃろうが!」
ギャーギャー・・・!
「んむぅ?・・・おじいちゃん?」
【おっ!龍奈起きたか。それじゃあそろそろ帰るか。サマエルとやらも心配しておったしの。】
「サマエル!!早くサマエルのところに行かないと!・・・・?」
【ん?どうしたのじゃ?龍奈。】
「おじいちゃん、この人達誰?それにここはどこ?」
【・・・記憶の方に被害が行ったか。まあ、良いわ。こいつらはのわしの知り合いじゃ、気にせんでいい。サマエルのことはわしが養子として引き取った子供として『事実』を書き換えとくから、とりあえず館に帰るぞい。】
「・・・さっきからなんなんじゃ、『事実』がなんとか言っとるが。」
【わしの異能力じゃよ。まさか、わしも覚えれるとは思わんかったがな。詳細は教えんぞ。じゃ、帰るぞ龍奈。】
「はーい。」
【転移】
龍神は、龍奈を抱え、転移する。
その場に残ったのは、絶望に染まった邪神と、創造神、気絶した戦女神とそれを介抱している知の神だった。




