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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

界外の契約者(コール)

蕾を踏んづける男

それは日が西に沈む夕暮れ時だった。




綺麗なオレンジ色に染まる都会に、汚くてドロドロとした感情が集まっていた。





まるで経済で廻る世界が醸し出す『平和』という日常に対して、それがさも『自然』というような風体で。




紅に染まる都会の路地裏は、ビルなどの暗い影で世界が出すそれらを避けるようにかれらはあつまっていた。




「えぇ、これが私たちの技術の結晶といっても良いでしょうね」



赤いスーツ。

胸元に薔薇を指している男はそう言って右手で子供の頭を撫でていた。

子供の容姿は、白一色の服で靴は安物のサンダルを履いていた。

男の子のようだが、極め付けはその顔だ。


子供の顔には、なんの表情もなかった。

口は横一線。

目は焦点があっておらずに、虚ろな瞳を光らせるばかりだ。



「その子供は【異常脳者】の中でも1番価格が安いそうだが、一体どんな【異常脳】を所持しているんだね」



そして、赤いスーツの男と子供に対峙する彼らもまた異常であった。


男達は全員で7名で、全員がガスマスクのようなモノを顔につけていて容姿はわからない。

また、彼らはこの国では持ってはいけないモノを全員装備していた。


銃。


正確にはアサルトライフルという種類の銃種を全員が所持しており、持っている方もバラバラだった。



「この子は『自分の環境に不要なモノが出たら消す』能力の持ち主です。まぁ、制御ができないので最低ですが、使い用によってはいいモノだと保証しますよ」


スーツの男は、影で見えない顔で笑顔にそう言って子供の頭をくしゃくしゃと掻く。


「それは矛盾じゃないかね?君たちは世界中の【異常脳者】を見つけてさらいだして洗脳するのだろ。ならその子の『不要なモノ』に君たちが入ってしまうのではないか?」


「そうですね。最初の頃はウチの職員が30名ほど死んでしまって困っていましたよ」


「ほう、30名も殺したのかい。なら便利な能力じゃないか」


「だからこそ洗脳したんですよ。荒療治に『心の境界線がなにかを探して壊し尽くす』っていう変わった能力の職員のおかげで、これこのように、心を壊してただの道具にしたわけです」



赤いスーツの男はポンポンと子供の頭を叩くが、男の子は何も感心しない。

それどころか、挙動を取ろうともしない。



「ご利用方法はあなた達の自由。この子が目にするモノだったらなんでも消せます。もちろん無機物もです」


「なら我々が今から行う反政府運動の便利なお道具といったところかね」


「007のようなスパイグッズだと思えばいいですよ。使用後は好きに処分しても構いませんよ。どうせ心はもう元には戻れないように

処置してますから」


「本当に非人道的だな貴様らは」



周囲にいるガスマスク達のリーダーで、ある大きな国の反政府組織で過激派の『ジュレイブス』はそう言いながら、ガスマスクの下のレンズからその鋭い瞳で目の前の男を見据える。



「その子供、【異常脳者】は2千ドルで買わせていただくぞ【PDMT】の【オベリスク】さん」


「ありがとうございます。あなた達の行動が、世界をよりいっそう混沌に導くことを期待していますよ『ジュレイブス』さん」









その日、とある国で少数による大規模なテロ事件が起きた。









「あー疲れるね。人身売買するのはさすがにあの方に怒られるかな」





赤いスーツの男、【オベリスク】は呑気そうにそう言いながら、冷凍食品を解凍して熱を通しただけの揚げ物にトマトのケチャップを付けて口に運んでいた。



その対面には三人の白衣の男女が座っていた。


「それにしても【コード4856】はあの後政府軍に殺されたそうですね。私たち【PDMT】の生きた機密の【異常脳】が発覚しなくてよかったですね」



「何言ってんのお前は?」



ホッとしたように言った白衣のメガネ男に、【オベリスク】は冷淡で淡々とした口調で言い放つ。




「殺したのはウチの傭兵に決まってるだろ。つーか、ありゃ世界中の国家に対する威力実験なわけで、元からあの子供は生かす気もなかったんだけど」


「え?」



【オベリスク】の発言にポカンとする白衣。

同時に隣席していた白衣の男女も固まっている。





「さーーて、次はどのガキを犠牲にして世界を破滅に導いてやるかな?」




彼が視線を向ける先には、生気のない瞳の子供がズラリと、大勢並んでいた。





世界はいつだって確変する。



それが本当に良いものか悪いものかは『歴史が決める』



しかし



この男はそんな格言にすら興味も考えも持たず。



歴史という単語



それすらも否定して、ただ邪悪に笑うだけだった。


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