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乙女ゲーの傍観者

作者: 平野とまる

 気付けば乙女ゲーの世界に転生していた。

 いや、この言い方は完全に語弊があるだろう。何より俺自身が妄想なのか本当に前世の記憶なのか判別付かないのだから。

 とは言え、高校入学時に何故かそれを思い出し、実際に酷似している故に間違いはないと思う。


 ……ただ、一番の問題は前世の俺も前世の姉がプレイしていたゲームを無理矢理横で見させられてたから知っていると言う、何とも微妙なもので。

 だからだろうか、正直思い出したところで直接的な利点はなかった。だって俺モブキャラの1人だったから。

 代わりにそれなりにイベント覚えていたから傍観して楽しませて貰っているけどな。




「おい、あいつらまたやってるぜ」


 呆れ返って俺に話し掛けてくる友人に頷く。

 お昼の時間に1人の女性に複数の男が群がっていれば話題にならない訳がない。

 しかもだ、その複数の男達が生徒会長やら風紀委員長やらヤンキーやら果ては先生までいるのだから目立たない方が不思議だろう。


「凄いよな。主に女の方が」


 普通ならば女の尻を追い掛け回す方が非難されるだろう、しかし、彼女達の場合は違う。

 逆ハーエンドと言うものまで存在するゲームだったのだけど、その逆ハーエンドを目指しているらしく。つまりどの男にもいい顔を振りまいていると言う訳だ。

 しかも露骨に。

 これでは女性に嫌われるだけじゃなく、彼女を囲っているゲームの時のメインキャラ以外は白い目で見ている状態だ。


「いや、同意はするがそもそもあいつら全員狂ってるぜ。

 確かブチギレた校長から今後続くようなら退任に退学になってもらうって言い渡されている筈だよな。

 恐れ入るわ」


 そうそう、イベントでそんなのもあったよなぁ。

 で、ご都合主義を通り越して爆笑出来るような理由で逆ハールートを無事完遂出来た筈。

 だから彼女も危機感ないし、最早彼女が関わる事には考える事を放棄してるのではないかと思えるような奴らも下手すれば気付いてないのだろう。

 ゲームの時と違って教育委員会もPTAも動いてるぞ。この世界はゲームと違って現実なんだ。たかが校長のヅラがバレたからと見逃してくれるとか、絶対ありえないからな。


「あら、雄星君と林君じゃない。私も混ぜて貰っていい?」


 と、食堂で嘲笑の目を浴びる彼らを周りと同じく話のネタにしていた俺達に話し掛けてきたのは、生徒会長の幼馴染にして副会長の愛実先輩だった。

 そこで気を利かせたつもりか、友人がとんでもない事を口にする。


「ああ、先輩でしたか。僕はもう食べ終わりましたので雄星とどうぞごゆっくり」


 おい、先輩に失礼だろうが。

 と内心思うものの、綺麗な笑顔でありがとうと先輩が言っていたので無言を貫く。


「あれ? 私お邪魔だった?」


「……自分の彼女がお邪魔な訳ないじゃないですか。恥ずかしいだけです。察して下さい」


「ふふふ、相変わらず潔いいのか悪いのか、判断に困るわ」


 楽しそうに笑う先輩。

 これで生徒会長とひと悶着あった時は物凄い大変だったのだ。

 あのゲームのライバルキャラとして憎まれ役だった先輩。現実の世界じゃ幼馴染やらあの馬鹿どもの尻拭いに奔走しまくっていた心根の優しすぎる人。

 ……傍観して楽しんでいたけど、先輩のそんな姿を見てしまったらどうしても助けてあげたくなって……結果何故か俺の彼女になってくれた。

 今でもなんでなってくれたのか全然わかんないし、恐れ多すぎるのだけど幸せ過ぎるから手放せるわけもない。

 まだまだ青い年頃なんだよ、察しろ。


「それにしても、相変わらずみたいねあの子達」


「ええ、先輩のフォローもなくなりましたし。じきに相応の結果を突きつけられると思いますよ」


 呆れると言うよりは心配そうに言った先輩に、逆に心配になってしまう。

 放っておくと今でも何とかしてあげようと動いちゃおうとするからなぁ。そのせいで他の生徒や教師はともかく感謝すべきあいつらに疎まれると言うのに。

 そりゃぁ感謝を求めてなくても酷い事を言われたりされたりすれば、精神がおかしくなっても不思議じゃないだろう。助けようと思ったのが手遅れじゃなくて本当に良かった。ナイス俺。


「なんとか――」


「出来ません。何度も言いますが僕らもまだ子供で自分の事すらままならない事も多いんです。

 相手が受け入れてくれる下地がある、もしくはこちらももっと余裕があるならともかく、絶対無理です。

 と言うか、僕の相手をしてくれないと僕は拗ねますし、先輩は背負い込み過ぎなので僕が心労で倒れます」


 実際先輩は家庭の方で問題もあったりするのだ。心休まる場所がないとか子供じゃなくても壊れかねないと思う。

 俺が介入しまくったお陰で、家族の方の問題もなんとかなりそうだけど。うん、悪いが乙女ゲーを満喫している奴らより先輩の方が大事なんでな。

 彼女の為ならどんな苦労も厭わないが、君らに労力を割ける余裕はないので自力で頑張ってくれ。


 残念そうにしているものの、俺の言葉を聞いてそうよね、先ずは私も幸せにならなきゃと言って腕を絡めてきた。

 で、恥ずかしそうにうつむいている。俺も恥ずかしくて口から心臓が飛び出そうだ。


 ……多分一部の生徒は話のネタを俺らにしている気がしないでもない。

 別に俺はモテたりしないが、先輩は超絶美人だからな。ゲームでも初期は綺麗な人だったし……最後の方は精神的に追い詰められすぎて大変な事になったけど、この人をそんな状態には絶対させない。





 ふと視線を戻せば、何やら代わる代わるあーんをやっている乙女ゲー集団。

 うん、マジで勝手にやってれば良いと思うよ。と言うか、先輩は許しても彼女を追い詰めた罪を俺は許すつもりはサラサラないからな。


 マジで良かったよ、俺のオヤジが県議会議員で。コネとか使いまくってかなり上層部から問題視してくれるように動いてくれてるから、殆ど詰みだしね。

 どうぞどうぞ、今のうちに満喫できるだけ逆ハーを満喫して下さいな。

 俺はハーレムとか要らないから、代わりに一生先輩とイチャイチャさせて貰いますんで。

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― 新着の感想 ―
[一言] マジで良かったよ、俺のオヤジが県会議員で。 県会議員→県議会議員or県議 少し気になったので。
[一言] 傍観脇役転生者×攻略キャラの幼馴染兼ライバル という珍しいCPのお話だな~と思っていましたが、 不憫シリーズと同じ作者さんでしたか。こちらのお話も面白かったです。 相手の彼女は美人ですが、…
[良い点] 主人公がいい感じで前世の知識と今世の地位を利用できている所。 [一言] 初めまして。 とても楽しく拝見させていただきました。 主人公、冷静に観察して語っているけれど、彼女さん関係で相当頭に…
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