表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第三話!~弁当と喧嘩と生徒会長~

『触らないでいただけますかしら!? 私はっきり申し上げましてケモビトは大嫌いですの!』



大成は、帰り道あの少女が言い放った言葉を頭の中で繰り返していた。

後にエルカに聞いたのだが、彼女の名前は神森かもり・G・凌穂しのほと言うそうだ。

ちなみにGとは〝グランライツ〟というミドルネームらしい。


イギリス人と日本人のハーフで、イギリスには大邸宅を構える正真正銘のお嬢様と言うわけだ。

確かに、思い出してみると頬をぶたれたものの、こちらに向かって歩いてくるさまや言葉尻などちょっとそこらへんの庶民とは一線を画するものを感じた。


「……お嬢様ね」

大成は呟くと、まだひり付く頬をさする。

思い切りぶたれたから、恐らく明日も少しヒリヒリする事は確定だろう。

そんな大成に、すぐ横を歩いていた奏音が気の抜けた声で話しかけた。


「にしても、散々な入学初日だったねぇ~、あたしに頭踏みぬかれたり叩かれたり」

「前者は俺の所為じゃないけどな」

「でも、見たのは大成じゃん」

「それは、そうだけど……」

「にしてもさ、あの子……凌穂ちゃんだっけ。相当ケモビトを嫌ってるみたいだったね」

「みたいじゃねぇ、嫌いなんだよ」

「けど、なんでなんだろう?」

「さぁ……エルカも流石にそこは教えてくれなかったからな」



エルカによると、それ以上は個人情報だから言えないとのことだった。

あいつと話していると何処までが個人情報なのかがいまいちわからないんだよな…。

ひょっとして、名前やプロフィールは特に個人情報として扱ってないんじゃないだろうか。

あながちその憶測が当たっていそうで、ちょっと怖い。

彼女の情報網は当てになるだろうが、下手に弱みを握られるのだけは気をつけよう。


「まぁ色々あったけど、総括して今日はどうだった?」

「最低だったな」

「もー、冗談は存在だけにしてよ」

「全てかよ!?」

「確かにぶたれたりはしたけど、大成的には……その……さ。ヒトと一緒にやってけそうなのかなって……」

「あぁ……そう言うことか…」


大成にとってヒトは好きか嫌いかと言われれば、嫌いだ。

顔も見たくないってほどではないがとにかくその二択ならば嫌いである。

理由は、幼いころにあったとある事件だ。


あんな事さえなければ……俺の父さんと母さんは……ッ!


大成はあの事を思い出して思わず顔をしかめた。

それを見て奏音が慌てて言い繕う。


「あぁ、いや…そう言うつもりじゃなかったんだけど……だから……え~っと…」

「大丈夫だって、分かってるから……」

「うん……」


大成は考えを切り替える。

あの学校での学園生活か……。


ヒトと共学する事。

大成にだって分かっていた、凌穂の様なヒトがいるということぐらい。

ヒトを嫌うケモビトがいるのだから、ケモビトを嫌うヒトがいたって何もおかしくはない。

むしろ凌穂は、自分の意見をストレートに出したに過ぎなかった。


実際あの時、誰も凌穂を止めなかった。

友人がまだできていなかったというのもあるだろうが、根底にはあるのはそう言う事だ。

このヒトはケモビトを嫌っているだから〝仕方が無いのだ〟と考えたのだ。

そう、仕方が無いんだ、あの件は。


「……まぁ、なんとかなるだろ。流石に学校なんだしよ」

「そう……だね。それにあたしも色々やりたい事も見つかったし、なんとかなりそう」

「そうか」



奏音がやりたいことはともかくとして、そうだ〝仕方が無いんだ〟


大成は、自分に言い聞かせるように呟く。



山に沈みゆく夕焼けは、まるでこれからどんな学園生活になるのかという二人の不安を映しだすかのようにゆらゆらと陽炎のように揺れていた。










波乱の入学当日から数日。

大成は、色々あったがごく普通の学園生活を送っていた。

チャイムが鳴り、それが昼休みの始まりである事を告げる。

「んん~~~ッ!」

大成は、座りっぱなしで縮こまった筋肉を伸ばす。

すると伸びをした大成の視界に、弁当片手に近寄ってくる正義が目に入る。

加えて、奏音は既に椅子を反対に向け既に大成の机の上に弁当を広げていた。

何もコレは、今に始まった事では無く性格にはあの入学した日の翌日から自然に始まっていた事だった。


「……毎度のことなんだが、一言もないんだなお前ら」

「う~ん……大成、机借りて良い?」

「いや、だからそれを先に言ってほしいってこと」

「別に良いじゃん、減るもんでもなし」

「そりゃそうだけど」

「ん? 何の話してんだ?」


言いながら正義も一言も無く、机に弁当を置く。

……何言っても無駄か。

ようやくその事に大成は気が付いた。




「ふ~ん、寺島のお弁当結構手が込んでるんだね」

「ん?、あぁまぁな。俺姉貴がいてさ。いッツもついでに造ってくれんだよ」


奏音の言うとおり、正義の弁当は綺麗に盛り付けされた二段重ねの立派な弁当だった。

揚げ物、野菜、魚などがバランスよく入れられており、米も普通の白米では無く雑穀のブレンドされたいわゆる〝雑穀米〟と言う物だった。

自分の、ご飯をタッパーに入れただけとは雲泥の差だった。


「何か大成のが凄く惨めに見えるよ」

「なッ!?」

「流石に、タッパーにご飯だっけってのはなぁ」

「め、飯だけじゃねぇぞ、ほら見ろ! 鮭が乗ってる……だろ……」


言ってて、悲しくなってきた。

大成は速やかに弁明をやめて、静かにご飯を口に運ぶ。

あぁ、鮭の塩味がしょっぱいぜ……。


「無くな、大成」

「奏音……俺は泣いてない」



まぁくだらないやり取りは置いておいて。

何度も言うが、見れば見るほどに正義の弁当は凄く丁寧で綺麗だった。


「確かに綺麗だよな。さぞ正義のお姉さんってのは律儀なんだろうな。どっかの誰かみたくトラブルメイカーじゃなくてさ」

「トラブルメイカーってのはともかく……ま、まぁ律儀は律儀だな……うん」

「なんだよ?」

「いや、まぁ何でもねぇよ」

「ん~~、このダシ巻き卵おいし~い♪ ねぇ、今度そのお姉さん紹介してよ」

「あ、あぁ、機会があればな―――って、沢井てめぇ何勝手に食ってやがる!?」


正義の態度に違和感を感じながらも、昼食は場の空気も明るく美味しく食べる事が出来た。

……明日からはとりあえず、野菜も入れる事にしよう。

多分それが問題だったんだろう。



「……大成、それちょっと違うかも」


奏音、お前はヒトの心が読めるのか?

そんな突っ込みをしたくなるほど奏音の意見は的確だった。








「さて、飯も食ったし、これからどうする?」

「あ、あたしはちょっとこれから用事があるんだ」

「用事?」

「うん、ま、そんな大した用事でもないけどね、じゃちょっとばかし行ってくるから」


奏音がそう言い残し教室を後にする。

その場に残されるは犬のケモビト二人だけ。


「……紅一点が消えたな」

「あんなのでも一応女だからなぁ……」


正直、あんまり意識した事はないけど。


「そう言えばよ、お前と沢井ってどんな関係なんだ?」

「どんなって言うと?」

「いや、だから関係だよ。ひょっとしてコレか?」


正義はニヤッと笑うと小指を立てる。

その意味など今更言うまでもないだろう。


「な、ばっばっかじゃねぇの!? んな訳ねぇだろうがッ」

「怪しいな……そんなに慌てるなんて」

「何が怪しいんだよ! 大体こういう質問に対するベタな反応じゃないか」

「自分で言うなよ」

「そりゃそうだけど」

「まぁ、そんな冗談はさておきどんな関係なんだ?」

「……幼馴染だよ」

「へぇ、これまたベタな関係だなぁ」


ベタな関係ってどんな関係だろうか。

しかし実際、幼馴染なのだからしょうがない。


大成と奏音は家が近かった事もあって兄弟同然の様に育ってきた。

幼いころは普通に一緒に風呂に入ったりもしていたし、今でも普通に大成の前で着替えたりもする。

奏音が、大成に『あそこで怒っておかないと、周囲から見たあたしの女の子株が下がりそうだったから』と言ったのは、別に冗談でも何でもなく本当に気にしていなかったのだ。


そう考えると確かに正義にああやってからかわれても仕方がいぐらい仲好く見えるのも仕方のないことなのかもしれない。


「そう言うお前はどうなんだよ」

「俺?」

「正義はいないのか、幼馴染とか」

「俺は、居なかったよ……いやまぁ正確には居たってとこかな」

「どういう意味だ?」


大成が、含みのある言い方をした正義に対して首をかしげる。

どうして過去形なんだ?

正義は大成の表情を見て、一瞬どうしようかと視線を泳がせたが一度言ってしまった手前うやむやにするのもと思い、続きを語った。


「居たんだよ、俺にも幼馴染。けど俺、ケモビトだろ? だからさ……」

「あ……」

「そう言う事だ」


要は、その幼馴染の子はヒトだったのだ。

コレは別段珍しい話では無い。

ケモビトとしての能力は、幼いころはそれほど強くはない。

だがそれでも、ケモビトはケモビトだ。

ヒトが持つイメージは幼かろうがなかろうが変わらない。

正義はその幼馴染と、ケモビトだからという理由で引き離されてしまったのだ。


「なんか、悪い事聞いちまったな…」

「いいさ、別に。もうなんとも思ってねぇから」


そう言うものの正義の顔は曇りきっていた。







「い、いじょ……が……えしな……け……い……」

スッパーーーンッ!!

「ふぎゅッ!!」

「声が小さいと、言っているでしょう! 大体どうしてさっきまで通る声で話せていていきなり恥ずかしがるんですか!」

「だからって叩かなくてもいいじゃ」

スッパーン!!

「ふぎゅッ!!」

「口答えは無しです。ほら見てください、藤木先生の声が小さいから生徒達が唖然としています」





いつも通りの狐薊先生の暴走で幕を閉じた今日のHR。

毎度のことながら変わった教師陣だ。




大成は帰り支度を整え席を立とうとする。

するとそれを、正義に止められた。


「ちょっと待てよ」

「なんだ?」

「お前、まさかこのまま帰るとか言うんじゃないよなぁ?」

「……帰る」

「そこは、何でとか聞かねぇ?」


そこはって何処はだろうか。

「聞かないし、それに放課後なんて学校に残ってたってやることないだろ?」

「じゃあ、帰ったらなんかやるのか?」

「ま、それもないけど」


今日は課題も何も出なかった。

今はとくにハマりこんでいるようなゲームもないから家に帰っても確かにやる事はない。

そこを突っ込まれるのは少し痛かった。


「だったら、ちょっと付き合えよ」

「何処に?」

「これこれ~」

「ん?」


正義は手に持っていた、神を大成に見せる。

そこにあったのは、入部届。

入部希望は……柔道部?


「お前、部活やるのか」

「まぁな、こう見えてもスポーツ全般は得意なんだ」

「確かにスポーツ得意そうだもんなぁ」

「まぁな」

「…で、どうして俺を引っ張りこむんだ?」

「………場所が分からねぇんだ」

「は? 場所?」


正義によると、この入部届け自体はもう既に狐薊先生に届けてあるそうであとはこれを生徒会長のところまで持って行けばいいらしい。

ただ、持っていこうにもその場所が分からないというのだ。


「そんなもん、職員室の前に案内板があるだろ」

「俺は自慢じゃないが、地図が読めないんだ!」

「見取り図も無理なのか!?」

「あぁッ!!」

「お前それでも犬かッ!?」


いや犬のケモビト以前の問題だ。

見取り図も読めないとは……。


「だたし、一度言ったところの場所は匂いでで覚えてる!」

「あぁ、犬だった」

「だから頼むよ~」

「……はぁ……分かったよ」


ほんと、コイツはトラブルメイカー……。




大成は正義を連れて職員室前の見取り図を見て確認する。

生徒会室はどうやら本館から二棟離れたC棟の三階にあるらしい。


「お前、すげぇなぁ」

「?」

「地図読めるんだもんな」

「アレは地図に入るのか?」


大成は呆れるが、正義は心底感心している風だった。

まぁ確かに、見取り図も場所を調べるという意味では地図の一部なのだろうけど。


「お前、そんなのでよく学園まで来られたな」

「初めは姉貴が連れて来てくれたからな」

「あぁ、なるほど……って、おんなじ学校なのか!?」

「あれ、言ってなかったか?」

「お前、全部が説明不足なんだよ」


なるほど姉弟そろって同じ学校か。

正義のお姉さんに会うのも、そう遠くはないだろうな。

大成はそう考えながらC棟を目指して歩みを進めた。







二人がB棟とC棟の間の中庭に差し掛かった時、大成がピクっと反応する。

「ッ!? おいッ!」

「あ、なんだよ?」

「今の……」

「今?」

「聞こえなかったか?」

「……何がだ?」


大成は他のケモビトに比べて身体能力は並である。

しかしその分感覚は能力を解放しなくとも他のケモビトよりも遥かに優れていた。

特に嗅覚と聴覚は目を見張るものがある。


そして大成のその聴覚が風に乗ってかすかに聞こえた女の子のうめき声を捉えたのだ。

いや…・・うめき声と言うよりもコレは……。

……くそッ、雑音が多い。


「お、おい」

「正義、静かにしろ」

「あ、あぁ……」

「……悪い、ちょっと能力使う」

「お、おう」


大成の真剣な声が冗談では無い事を告げ正義も身をこわばらせる。

大成がフウッと息を吐き、意識を研ぎ澄ませる。

すると光に包まれてピンっと立った柴犬の特徴的な耳とふさふさの尻尾が発現した。


何処だ……確かに聞こえたぞ?


大成は耳を少しずつ動かしながら声の発生源を特定する。

この状態ならば、一定の方向の声を雑音を遮断して聞く事が可能だ。


すると噴水の陰からその声が聞こえてきた。

「……あ……あぁ……」

うめき声じゃない……コレは……。

「なぁ……頼むぜ? 俺達結構良心的だろ?」

「そうそう、平和的に話し合いで解決しましょってよぉ」

「ギャハハッ、しかもお日様の下でな」

「う……うぅ……」


大成は場所を特定し、これが何なのかを瞬時に理解し、次の瞬間には一気に駆けだしていた。

そして、その現場に到着するや否や大きな声で一喝した。


「待てよッ、嫌がってるじゃないか!」

「あぁ?」

「んだコイツ?」

「おい、コイツ新入生だぜ?」


大成に反応するように、女子生徒を囲むように立っていた男子生徒三人がこちらに向き直る。

そして最後に、噴水際で囲まれていた女子生徒が半泣きでこちらを見やった。


「おい、お前一年だな」

「……だったら…」

「口のきき方おかしいんじゃねぇの? 俺ら三年だぜ?」

「もうちっと上級生は敬わねぇとな」

「……それは、すいませんでした。でも上級生だからってそう言う事は許されないでしょう!」


大成は敬語に直しつつも反論する。

三人の上級生達が今度は大成を取り囲んだ。

「お前、その耳ケモビトか」

「そうですけど……」

「ははッ、丁度いいぜ」

「?」

「ケモビトってのは自分の能力に任せて俺達を小馬鹿にしやがるからな……」

「何を言ってるんですか?」

「俺達はそういうケモビトが……」


三人のうちのリーダ格がゆっくりと振りかぶる。

そしてその拳を一気に大成に向けて振り下ろした。


「大嫌ぇなんだよッ!!」

「ッ!?」


ガッ!!


大成はとっさに、目を閉じ両手を前で組んでガードする。

…しかし何時まで経っても、来るはずの衝撃が来ない。


おかしいと思い大成が目をゆっくりと上げると、そこにはリーダー格の拳を右手でしっかりと受け止める正義の姿があった。


「……てめぇ……」

「いくら上級生つったってよ……こんな奴らに敬語使う意味なんてあんのか?」

「んだとぉ!」

「正義……」

「こう言うのは俺に任せときな」

「調子に乗んじゃねぇ!」

「ふんッ」


正義はもう一人が繰り出した拳も左手で受け止める。

そしてそのまま、二人の腕をグルンッと回しねじあげる。


「いででででッ!!」

「お、お前こんな事してッ」

「あぁ、こんな事して……何だってぇッ!!」

「ぎゃぁぁぁッ!!」

「うぐぐぐぅッ!!」


二人の顔が苦痛で歪む。

それを見ていた残りの一人が、木製の箒を片手に正義へ向かう。

いくら木製と言っても、殴られたらへたすりゃ骨だって折れる。


「正義ッ!!」


大成が叫ぶが正義は慌てない。

二人をそのまま地面にたたきつけ戦闘不能にすると、いきなり正義の右腕が光り出す。

「おい、どうせ無駄だからやめとけって」

「な、何をッ!」

「……はぁ……仕方ねぇなぁ」


上級生が正義に向かって、容赦なく箒の柄を振り下ろす。

だが、その柄は正義の右腕に光に包まれながら現れた〝ある物〟によって阻まれ真っ二つに折れた。


「ビ、〝ビースト〟だと!? お前も、ケモビト!!」

「気付くのが遅ぇんだよ」


正義の右腕を覆うように発現したガントレッド状の武器。

形は先端が鋭利な爪状になっていて、色は黒。

ガントレッドを保持しているのは肘の部分までだが、長さは有に正義の腕の長さを大きく超え、肩の部分までをシールドが覆っていた。


これはケモビトが、能力をより安定的にかつ効率的に使うために作られたデバイスで、名前を〝ビースト〟と言う。

ベースとなる動物によって様々な形が存在する。

ちなみに〝ビースト〟とは(BEAST 〝BEasting Abilityopen Structureprogramming Trancefoamdevice)という正式名称で、直訳すると〝ケモビトの能力展開による形態変化するデバイス〟という意味である。


「け、けど、〝ビースト〟には安全装置(セーフティ)があるはずじゃ!」


あの上級生が言ったように、〝ビースト〟には誤ってヒトを〝ビースト〟で攻撃してしまわないように安全装置が取り付けられている。

確かに相手はヒト。本来なら正義の〝ビースト〟は元の待機状態に戻らなければならない。

そう、これが正義がヒトを攻撃しているのであれば。


「馬鹿野郎! これのどこが攻撃だよ、ただの防御じゃねぇかッ!」

「く、くっそぉぉぉッ!!」

「これで終わりだッ!」

「グヘッ!!」

正義は〝ビースト〟を待機状態に戻しながら上級生に綺麗なハイキックをお見舞いする。

蹴り飛ばされた上級生は、吹き飛び地面をゴロゴロと転がって意識を手放した。


正義はパンパンッと手を払う。

その音が、試合終了を告げていた。








三人の上級生は、狐薊先生に連行されていった。(担がれていったという言い方が正しい)

聞けば狐薊先生は風紀委員の担当顧問なのだそうだ。

これからみっちりと絞られる事だろう。


「助かりましたー!」

「いや、声が聞こえたので……」

「いやぁあの人達にも困ったものですー」


そして大成たちは、助けた女子生徒に礼を言われている最中だった。

その女子生徒は黒髪のサイドポニーで綺麗な青い瞳を持つかなり小柄な容姿をしている。

そのためかかなり制服もダボ付き、ブレザーの袖に至っては手が出ていない。

ただ見るとリボンの色がシアン。つまり二年生で自分たちよりも一つ上であった。


「困ったものって、ああいうのはこうビシッと言ってやった方が良いっすよ?」

「にゃー、それは分かってるんですけどねぇ」

「にゃ、にゃぁ?」

「あぁ、お気になさらず」


なんか不思議な人だなぁ。


「で、何を言い寄られてたんですか?」

「あの人達は、とある部活の人達なんですが……」

「部活?」

「最近、活動をあまりしていないので部費を絞った所、ああやって言い寄ってくるようになりまして」

「なるほど、ッけ。まともに活動してねぇんだから当たり前の処置じゃねぇかよ」

「まぁな」


と、ふと大成の頭に疑問が浮かぶ

それは彼女は一体何ものなのだろうかと言う事。


部費を絞れるのだから…………ひょっとしてこの人…ッ!



大成がひらめいた時、唐突にこちらに向かって声が聞こえた。


「会長!! 猫丸かいちょ~~う!!」

「ん?」

「あれは?」

「にゃ?」


一同が声に反応しその方向を見やると、そこには同じリボンを付けた女子生徒がこちらに駆けてきていた。


ってか今……。



大成の予想が確証に変わる。

間違いないこの人は。



「はぁはぁ……探しましたよ、会長!」

「にゃぁ、ちょっとまた言い寄られてました」


息も絶え絶えの女生徒がそれを聞くと、バッと顔を上げこちらに詰め寄ってくる。


「ちょっと、あなたたちッ! 部費を絞られたのはあなた達の行いが悪いせいでもあるのよ! いい加減にして――――――」

「あぁ、その人たちは私を助けてくれたんですよ」

「ありがとうございました」


変わり身早ッ!


この女生徒の変わり身に驚きつつ、正義は尋ねる。

「あ、あの、ちょっと良いっすか?」

「何かしら?」

「その、さっきから会長会長って呼ばれてるっすけど……その人って…まさか」

「えぇ、この人の名前は猫屋敷 丸。二年一組所属でこのケモガクの………」




















「生徒会長よ」

「にゃー、よろしくお願いします~」









にゃーと叫びながら両手を上げるその姿に、何故だが大成はめまいを覚えた。


ほんと、この学園には変わり者しかいない。


それが大成のこの時感じた率直な意見であった。



生徒会長も中々良いキャラ。

いよいよ次回は、ケモ研が発足すると思われます。


にしても柴犬って可愛いですよね。

僕はダックスが好きですけど(ぇ



それではまたお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ